2021年4月

四月尽


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モッコウバラが、四月を連れて散っていく。バラに被われると、散歩道の景色が変わった。ゆっくり通り過ぎて、今日、春とお別れ。


頭痛


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ここに至るまでの画像を見たい


頭痛 肩凝り 樋口一葉・・・頭が痛い。もう二週間ほど悩まされていて、音も聞こえにくくなるときがある。かかとを勢いよく着けると、痛みが後頭部を突き抜ける。

これは季節の変わり目によく起きる現象らしい。昨年の今ごろもそうだった(かもしれない)。若い頃は、精神的なことで頭を悩まし、歳をとると体の痛みばかり。面白いと思うが、こう長く続くと心配にもなってくる。


Forget me not


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怖いお話。家人から、LINEが入った。「爪切り、見つかったのね」・・・「!?」。「引き出しの中にあるよ」・・・「なぜ !?」。

爪切りが忽然と小さな引き出しから消えて、約一週間。引き出しの中は勿論、テーブル、ソファの周辺など、何度も探したが見つからなかった。仕方がないので、予備の爪切りを使って、引き出しの中に戻した。

すると、探していた爪切りと並んで入っているという。そんな馬鹿なことはないだろう。誰かが戻したのか?「以前から、室内に人の気配を感じることがある」と家人は云う。それも怖い話だが、二人のどちらかが、忘れているのではないかというのも怖い。
爪切りを眺めながら、お互いを静かに疑っている。



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青い空に雲が出始めたので、夕方散歩に出た。心地よい風は、雲のカタチを変えていく。そして陽が傾きはじめると、今度は色を変えていく。
風と雲があるだけで、こんな幸せな気分になれるというのが嬉しい。


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モウ〜勘弁


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Don't touch 撫でてもご利益なし


三たびの緊急事態宣言の発令。コロナウィルスは変異を続け、そろそろ終わり〜と自ら判断を下すまで、終息しないのではないか。
その間、人間はモルモットの如く、その培養のお手伝いをしているように思う。そしてワクチンで早く鎮めようと分かれば、「なんじゃなんじゃ」とさらに強い変異種が現れるのではないかと心配する。


薫風


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いい風が吹いている。山の雪はどんどん解けているだろう。大雪山、鳥海山、そして北アルプス、かつて登った山々に心が飛ぶ。雪融け水は音をたてて、残雪の下を流れ、川をつくって、やがて田畑を潤していく。いつもと変わらない春の風景が広がる。
こんな風の中を歩きたいという想いを、今年も叶えられない・・・のか。


水鏡


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写真を整理していたら、景信茶屋で撮った二枚の写真の不思議に気がついた。
水に浮かんが花びらと、桜の木のピントが、それぞれ違う。オートで撮るかぎり、二つのピントは合うことはない。

当たり前のことかもしれないが、水鏡は空間をも映してだしている。水瓶の深さはないのに、奥行きがあるように感じてしまう。


ライラック


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好い香りだと思ったら、ライラック。車道を背に、面白いカタチをして咲いていた。初夏、札幌の街はライラックの甘い香りに包まれる。桜が終わり、朝晩の寒暖差が残って、なかなか温かくならないその季節を市民は「リラ冷え」と言っていた。

「花冷え」ではなく「リラ冷え」。文学的な香りのするこの表現が今でも好きで、札幌の大通公園辺りを思い浮かべる。


古民家カフェ


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NHKの番組「はるさんの休日」で、ここのカフェが紹介されていた。店は、築70年以上の民家を改築したもので、レトロな空間が人気を呼んでいるのだろうか、絶え間なく人がくる。この前を流れていた桃園川は、いま暗渠となり区民の憩いの散歩道としてその面影を留めている。

光が強い日は、とくにこんな店に入りたくなるらしい。生け垣の向うから室内を覗く人が多い。椅子やランプシェードの種類が全て違う、食器も可笑しく古いものが多い。なのに違和感をあまり感じないのは、包みこむ木造の温かさなのだろう。

チーズケーキとカモミールティ、外のキツい光、そよいでくる風、緑の庭木、そして静かに流れているジャズ、五感が弛緩していく。
ドライカレーのような匂いも漂ってきた・・・。



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ポツンと光が当たっている花を見つけると、足を止める。この季節、競い合う花たちに目を奪われがちだけど、ひっそりと咲く一輪に愛おしさを覚える。


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告白


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試合前からの雨、声の出せない球場は、なにか寂しく、そして寒い


告白します。半世紀以上に渡って陰ながら応援しているチームがあります。横浜ベイスターズ(その昔は大洋ホエールズ)。名将と言われた三原監督が巨人、西鉄と渡り歩いて大洋ホエールズに就任し、1960年に弱小チームを優勝させた。父が三原監督の不遇と才能を幼少の私に聞かせたのだろう。以後、圧倒的な巨人ファンの友人たちにバカにされながらも頑に大洋(ベイスターズ)を遠くから応援してきた。

1998年の権藤監督時代に、歓喜の美酒を呑ませてもらったが、それ以降、戦績は芳しくない。もう贔屓は止めようと思うのだが、ついスポーツ欄の戦績を眺めている。

体に染みついたDNAを哀れんでいたら、昨年、I君が「私もベイスターズファンです」と名乗りを上げた。おう!では観戦しようではないか、となった。
ときはコロナ禍、観戦よりも感染ということで席の確保がままならず、今年ようやく応援が実現した。

三塁側の最高の内野席を確保したが、生憎の雨、震えながらの応援となった。3回裏、逆転されたところで雨で中断。点を取ってもらった直後、エラーと四球、そして長打を浴びると云ういつもの負けパターン。体は冷えるし、心も冷えるしで、撤退を決めた。

弱きチームを擁護する親心、そしてため息のような歌だけが生まれて、二人、雨の神宮を後にした。


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写真を眺めていたら、昭和18年、雨の神宮外苑・出陣学徒壮行会を思い出した。
今は幸せな時代なのだ。


あけび


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ついアケミと云ってしまう。思い出しても「アケミ」の顔は浮かばないし、らしき店にも出入りした記憶はない。口を開ける様子を「開け実」、または色から「朱実」という説があって、それが色濃く残っているのだろう。

昔、キューピーマヨネーズの広告で「ただ鑑賞のために咲く花より、実を結ぶために咲く花を、私たちは美しいと思います」というコピーがあった。

当時としては珍しい胡瓜や茄子、ジャガイモの花が紹介されていた。アケビの花を見ていたら、そんなことを思い出した。

都会では、アケビの花は珍しい。新芽は茹でて食べられるという。


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こちらは、ミツバアケビか?

クルナ ウィルス


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散歩の途中、ここで川を覗く。緩やかなカーブが、せせらぎの音をつくる。眺めもよく、ここにいると、世の中で起きている不幸や災いをしばし忘れてしまう。

大阪のコロナ君、遂に千人切り!というニュースが飛び込んできた。今ごろコロナの御旗を立てて、江戸を目指し、ひたひたと東海道を東上しているのかもしれない。

攻めることもできず、ただ静かに守るしかない現状。共存していける術、知恵を見つけられないものだろうか。


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コロナ菌の天敵は花。花がコロナを不活化させると分かれば、どの国も花だらけになるだろう。あるいは、二酸化炭素が感染を広げているのであれば、温暖化対策は一気にすすむ。
こんな上手い具合にはいかないものだろうか。


春の吟行歌会


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樋口一葉が住んでいた家が今もある


先週末は、春の吟行歌会。着物姿がすっかりお似合いの山口師匠の案内で、参加者九名は湯島〜本郷界隈を散策し自由詠と題詠「作家」の二首を詠んだ。

東京の真ん中に、まだこんな家屋が残っているんだと感心しながら、宮沢賢治の旧宅、一葉の住んでいた家、啄木が通っていた質店など、名所旧跡を訪ね歩いた。当時の作家たちの生活とそれぞれの作品を重ねあわせ、タイムスリップしながらの路地歩きは、歌づくりのヒントを掘り起こしてくれた。

ランチは、東大生が通う創業120年の「食堂もり川」。一部屋を借りて、各々好きな定食を食べながら、思索の世界に入り込んでいった。


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赤門は閉鎖中なり

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八重桜が新緑と重なり美しい

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百花繚乱


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我も我もと百花繚乱の春。色だったり、八重だったり、そして香りでも呼びかけてくるので、花に目を奪われている間は、コロナを忘れている。

雨の季節がやって来るまでの間、美女たちに囲まれて〜浮き世の春を楽しみたい。


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ヤマブキ

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白いヤマブキ

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ベニマンサク

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ツルバラの種類

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ミヤマキケマン

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サンシュユ

もう


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お蕊〜だよ


ウスベニニリンソウ


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花びらの裏がピンク、そして雄しべが踊っているよう


いくつかのニリンソウが赤っぽいので、手にして見ると花びらの裏が淡いピンク。帰ってから調べるとウスベニニリンソウ(薄紅二輪草)とあった。八重だったり、緑色だったり、そしてあらたにこんな種類まで。
こんな変異種なら、大歓迎〜!と言いたくなる今日この頃です。


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雄しべが楽しそうだね〜♬


早生


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高尾山のスミレは約50種類。覚えられない〜

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ニリンソウが咲きはじめた


体がすっかり鈍っている。歩かねばと、週末選んだコースは、陣馬高原下から登って尾根道に入り、堂所山を経由して景信山までのコース。とりあえずそこで遅い昼飯を喰おうと決めた。
登り始めてすぐにスミレに混じってニリンソウの群生に気がつく。今年は、街の桜だけでなく山の花々の開花も早い。


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中腹に入ると、ミツバツツジも花をつけていた。ということは・・・山桜も満開どころか・・・散りはじめて・・・いた。ソメイヨシノと開花時期が変わらないではないか!
早過ぎる。昔はGWに散っていたこともあったのにと、なんでも早生になっていくのを心配する。温暖化がすすんでるなあ。


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景信茶屋のシンボルツリーの山桜は、もう蕊で紅く見える

地図にもナメコ汁にも花びらが絶え間なく落ちる

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山桜は葉といっしょに開花する

五郎さん


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コデマリが咲きはじめた


田中邦衛さんが逝去された。富良野は大きな哀しみに包まれているんだろうなあと思いながら、倉本聰さんの愛惜あふれる追悼文を読んで哀しみを深くした。

若大諸シリーズの青大将から北の国からの黒板五郎へ、男の顔はこんなにも変わるものかと、晩年の深いシワと自然体の演技を感心して見ていた。北海道のどこか地方に行けば、きっといそうな優しくてオッチョコチョイで、我慢強い男。そして子どもを愚直なほどに愛してしまう父親。ダイジェスト版を観ていたら、旅立つ息子に向けたこの言葉に、また涙した。

「疲れたらいつでも帰ってこい。息がつまったらいつでも帰ってこい。くにへ帰ることは恥ずかしいことじゃない。お前が帰る部屋はずっとあけとく。布団もいつも使えるようにしとく」

愛するがゆえに、息子とぶつかり、ボタンを掛け違うことを繰り返し、どちらも間違ってなんかいないと、視聴者に云わせて涙させる。倉本さんの真骨頂の脚本だった。

疲れたらいつでも帰ってこい。いつだったか、父に言われたような気もするが、それは黒板五郎だったのかもしれないと、在りし日のあれこれを重ねた。

五郎さん、天国でたくさんの仲間が待ってるね。いってらっしゃい。


ほろほろと散る



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水面に吸い寄せられるがごとく

今週末で、東京の桜はおおかた散ってしまうのだろう。花や鳥はいつものとおり、人間界の騒ぎなんて知る由もない。散るべきときに散り、花筏の中を鳥たちが泳いでいく。

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4月の魚の日


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フグではなくカワハギが、冬の魚の一番である


「あなた知ってる?4月1日は、フランスで『4月の魚の日』というんだよ」。
友人のSが、コーヒーの香りを嗅ぎながら、ポツリと云った。フランスでしばらく暮らしていたSは、ときどきこんな話をする。

かつてフランスでは、冬の魚の漁が4月1日までとされていて、可哀相な漁師をからかい、そして慰めるたびに『Poisson d'Avril(4月の魚)』といったらしい。フランスでは今日、魚のカタチをしたお菓子や酒を買って楽しみ、「Poisson d'Avril」と書かれた紙を背中に貼りつけるいたずらをするらしい。