2011年10月

読書の秋


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いま日本人はどの世代も迷っているらしい。久々に入った本屋で、平積みされている書籍のタイトルを見てそう思った。書籍はタイトルが勝負!それは知っていたが、こうもたくさん数字の入っているタイトルを眺めてしまうと、唸ってしまう。「40代を後悔しない50のリスト」「20代で使っていはいけな100の言葉」「30歳から伸びる女 30歳から止まる女」・・・ざっと十冊ほど並んでいる。もしかしたらベストセラーになった「100歳までボケない101の方法」や「百歳」という二冊が導火線になったのかもしれない。社会全体は不安な問題をいくつも抱えているし、個人においてもスキルや生き方のレベルアップを促す環境があるのだろう。ページを開くと「ごもっとも」という小見出しがいくつも並んでいる・・・・。ふと目を横にやると「働かないアリに意義がある」という面白いタイトルの本があった。手に取って読み始めると、これが滅法面白い。7割のアリは働いていないのだという。なるほど!!編集者もたいしたものだが、店員の機転の良い並べ方に思わず拍手を贈った。


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ビルの谷間の木立も色づき始めた


私を通り過ぎていった花たち(1)

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ちょっと良いタイトルでしょ。罪深く、アンニュイで人恋しい秋に相応しいかなと、ひとり悦に入っています。さて罪深いのは花ではなく、こちらの事情です。ゆっくり手を差し伸べる時間がなかったり、鑑賞させてもらったのに、名前を聞けなかったりと、日陰者にさせてしまった花たちへの記憶です。
さて最初はツルニンジン(蔓人参)。調べても名前が分からず、権師匠から教えを乞いました。秋の細い山道で、片側の斜面から零れ落ちるように咲いていました。茎は細い蔓状なので、5、6センチもある花は、どうしても下を向いてしまうようです。こんな大きな花が秋の山に咲いていたなんて知りませんでした。牛の首につけられた鈴を想像したので、歌を作ってみたのですが、まだ未完成。もう一度チャレンジしなくては。朝鮮では山菜らしく、根をキムチの材料にするようです。


サザンカ(山茶花)

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山茶花が咲き始めています。南側を向いている垣根は早いんですね。五つほどの蕾が大きく広がり始めていました。といってもこの写真は1週間前のものだから、もうかなり賑やかになっているのかもしれません。秋が終わる前に次々に咲き始める。人も花も、みんな早生。そんなに先に進んで、どうするのでしょう・・・。


鰯雲


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昨日の空は、秋らしい雲が広がった。白い小さな雲が、魚のうろこのように群がり、空をキャンバスにしていた。昔、この雲が出るとイワシの大漁があると漁師たちは喜んだらしい。なぜこんな形状の雲ができるのか、じつに不思議だ。どこか空の一点から、ポッポッと吐き出されているのではないかと思ってしまう。さて行くかと顔を下ろしたら、すぐ隣で若い男性もシャメしていた。



ヤマイモ


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そこにあることが分かっていても確かめられない。掘り進めていけば、必ずあるはずなのに。そんな思いを持ちながら、通り過ぎる場所にヤマイモの蔓がある。それは散歩道であったり山道であったりするのだが、とりあえず蔓をたぐり寄せては、根元だけを確認する。掘っていけばどれほどのヤマイモがあるのか、あるいはないのか。あ〜確かめたいと思いつつ、むかごを摘んで根元付近を見つめている。


一筆書き


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一枚の葉に迷路のような模様が描かれている。誰がこんな悪戯をしたのだろうか?とパチリと撮っておいたら、なんとAさんのブログのコメントに答があった。「エカキムシ」。「絵描き虫」!?。なんだなんだと調べると「ハナモグリバエ」の幼虫が犯人で、葉肉の部分だけを食べるとあった。食べていった跡が、落書きのような道となり、不思議な模様を作っている。線の太さには強弱があって、ときどき食が細くなるのが面白い。


シモバシラ(霜柱)


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やっとこの花の名前を調べあげた。「シモバシラ」。「なぜ?」そして「なるほど!」だった。この植物は多年草。つまり茎が枯れたあとも、地中の根は活動し続けている。シモバシラは、とくに水分を吸い上げる力が強く、冬でも茎に水を送り続ける。割れている茎部分から溢れ出た水は、氷点下になると凍結してしまう。その様子からこの名前がついたようだ。妹のブログにもユキムシが飛び始めたとあったが、そろそろ野山に秋が終わろうとしている。


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これを見たら納得!別名、雪寄草(ゆきよせそう)


夕焼け

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昨日の夕焼けは雄大で美しかった。見えるかぎりの空が、刻々と変わっていった。雲が低く垂れ込めていたからだろうか、光が拡散して、ビル西側の壁面をピンク色に染めた。バラ色のグラデーションは、ゆっくり西へ流れ、やがて終了した。消えていくものは、儚く美しい・・・。



このコラムも消えていく運命だったので、クリッピングした。母と同じ年齢の方だ。文章がじつに細やかで穏やかで美しい。言葉は美しくなるのだ。



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アケビ(通草、木通)


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新宿区役所玄関前の歩道に、瑞々しい緑の棚を見つけた。葉っぱを見てもなんの種類が分からない。下に入って見上げると、なんとアケビの実がいくつもぶら下がっている。お〜、先日山で見かけたものに比べると、色白でいかにも都会的だが、半分くらいはもう実が割れて中の白い果肉を見せている。枝と緑と実が、日の光を浴びて、なんか涼しげな抽象画みたいだ。



さて、権師匠からニャンコ情報が入りました。
またまたニャンコのお目出度です。それも今度は三つ子!ココロ優しき権師匠は、染五郎をオンブし、姫を抱っこしながら成長を見守っていくようです。
お〜い、染め姫や!食べてばかりいないで、弟妹を可愛がるんだゾ〜。

権師匠の家にやって来た親子の話は、いずれ権師匠がお話ししてくれると思いますが、おせつファミリーの夕べの様子です。

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どうも『おせつ』のコニャンコの一匹が怪我をしているようだ。
どうにしたら獣医に連れて行けるか只今思案中?
近所のウワサでは、隠れ住んでいた物置小屋の家主に見つかりやられたとの事・・・
捕まって目の前の川に放り込まれるよりはマシかなとは思うが、放ってはおけない。


今様子を見て来たが、やはりかなりヒドイね。
(夜中の3時にこんな事をしている私も、かなりイってマ〜ス!)
やっと落ち着いたのか、コニャンコ達は物置の下から出て来ておせつと布団で寝ていたが。


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こんなにデッカくなってしまった!
レイの『麻の葉』座布団からはみ出してます。


ヒノキの実


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東京近郊の山々にはスギの人工林が多く、まっことつまらない風景をつくっている。とくに手入れがされていないスギ林は、この世で最も醜悪なものだ。やせ細った横枝が幾本も重なって伸びると、日が下まで届かず、林の中を薄気味悪くさせる。そうすると根元には草一本も生えない。やがて地面には小石が浮き出し、保水力が一気に弱まっていく。そんななかを歩くのは実に憂鬱な気分だ。ところがスギそっくりのヒノキの林に入ると気分は一転する。ヒノキの実を拾って、爪を入れるとあの新緑のような独特な匂いが広がるからだ。何個かをそうしてから胸のポケットに収めて歩くと、気分が変わる。入浴しながら歩いているようだ。そういえば誰だったか、ヒノキの実を知らないと言っていたのを思い出した。


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これは、まだ青い頃



多摩川夕景

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友人が住む多摩川からいま帰ってきました。夕方の風景をこんなに美しく感じるのは、高い建物がほとんど見えないからでしょうか。川の近く住む彼は、日に三度くらい川を見に堤防に上がると話していましたが、気持ちが分かるなあ。秋の風吹くなか、西日を浴びながらウォーキングやサイクリングをする若者達が、気持ち良さそうに走り抜けていきました。


山里の道


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最近、高尾山への登山客が恐ろしく増えているので、山頂には寄らず小仏峠への巻道を選んで歩き、下りは日影沢というやや薄暗い道を下る。この道は不人気らしく、人に会うことが少ない。長い沢道を一時間半ほど下っていくとキャンプ場、そして辺りが一気に明るくなって日影、裏高尾のバス停に出る。普段ならここからバスに乗って帰るのだが、道沿いに秋の花が溢れんばかりに咲いているので、しばらく歩くことにした。家の庭、生け垣、石垣の花を見ながら歩いて行くと、摺差(するさし)というバス停に着いた。ここにはグルメ御用達の「峰尾豆腐店」がある。いつもならバスの中から眺めるだけだが、今日はよく歩いた自分のご褒美に、大好きな厚揚げを買ってバスに乗った。


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ちょっと珍しいシロシキブを見つけた


秋の山


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秋の山は、良い匂いで溢れている。夏の草いきれはすっかり消えて、ちょっとすえたような心休まるような匂いだ。草原では、さまざまなアザミが鋭いトゲをアチコチに張り出して、大威張りで咲き誇っている。低くなった陽射しは、ススキの花穂や森の木々を美しく映し出して、秋を演出していた。


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アザミを見ていたら、大きなカメラを抱えた女性がアザミの説明を始めた。これがシロアザミ、ノハラアザミ・・・。ウ〜ム、どれもみんな同じに見えるんですけど。

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ハナタデ、ユウガギクに交じってミゾソバがぴょんぴょんしています。


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蟹と戯る


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高尾山の不人気コース日陰沢というやや薄暗い山道を下りていくと、前を横切る怪しい生き物!?目を凝らすと、なんとサワガニ君ではないか。沢筋ではたまに見かけることもあるが、林から沢へ向かうとは珍しい。挨拶もなしに走り去ろうとするので、指で軽く声をかけると、背筋を伸ばして攻撃の構え。こちら側が見えるらしくハサミを広げ威嚇してくる。お前は怖いもの知らずなんだね〜。ほれ、どのくらいの力があるの!?と小枝を伸ばすと、しっかりと掴み、持ち上げても離さない。産卵するために川に向かうのかなと思ったが、卵はないようだ。しばし遊んでもらい、別れを告げてしばらく下りていくと、また出現。そんなにいるの!?ムムム・・・、サワガニの唐揚げ!?


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オレと戦うのカニ!


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お前と遊んでいる暇はないのだ〜


爪痕

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上の写真をよく見てください。ちょっと悪戯しています。もともとは90度左回転させた、下の写真です。一昨日高尾山を訪れると、先日の台風の爪痕がアチコチに残っていました。サクラやスギといった高尾山を代表する樹木が無惨に倒れ、そのままの状態で登山道を塞いでいるものもあります。直径1メートル以上のサクラの巨木が根っこから倒れているのを見ると、恐ろしい風の力が加えられていたことが分かり、あの日の台風を思い出してしまいました。山頂に近い琵琶滝コースが倒木のため閉鎖。残された道に登山者が集中したうえに、倒木のため登山道はいつになく大渋滞。しかし登山者は、声をかけあい上り下りを譲りあって進みます。大自然の力や山のルールを学び、登山者が増えていくことは、日本の自然が守られていくこと。ミシュランの三ツ星に指定された高尾山。きっとすぐに登山道も整備されるでしょう。



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スギも

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サクラも

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でも声かけあって




タデ(蓼)


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タデといえば「タデ食う虫も好きずき」の諺が出てきます。タデのような苦みのあるものを好んで食べる虫がいるように、人の好みはさまざま、ということらしく、あまり良い例えには、使わないようです。この蓼の葉っぱをチェックすると、ありました。小さな虫の食った跡が・・・それを見ていて思ったのです。クサヤ・ハタハタ寿司・鮒寿司といった支持率の低い「クサイ系なれ鮨派」を嗜好する私にも、この諺が当てはまっているのではないかと。



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でも、こんな可愛い花が咲くのです


ハギ(萩)


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ハギが風に揺れているのを見ていると、晩年はこんな人生がいいかなあ〜と思う。無理や年波をこうして軽く受け流す・・・。ムム、この思い。これも歳のせいだろうか。
さてハギというのは「おや、こんなところに」と思うところに咲いている。目立たないのかも知れないが、これがハギらしいところだろうか。ススキやオミナエシ・・・秋の花はどれも風をひろって、よく揺れること。


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キンモクセイ(金木犀)


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この辺で紹介しておかなければ、香りが失せてしまいそう。というわけで金木犀の登場です。先週末、帰宅途中の車輛が人身事故に遭い、大幅に遅れるというので、仕方なく新宿から歩くことにしました。その途中、薄暗い路地を歩いていると、闇の先から金木犀の香りが・・・もうそんな時期!?
いつもこの香りで気がつく、季節の移ろい。姿が見えず香りに包まれていると、さまざまな想像がはたらいてしまいます。


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金木犀の開花は早く、小さな花の蕾がほんの少し開いた頃から、香りはじめます。枝の節々についたオレンジ色の蕾が開花すると、オシャレな帽子が並んでいるようでちょっと面白い。食いしん坊には「香りのお団子」にも見えるかもしれない。


メマツヨイグサ(雌待宵草)


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マツヨイグサ(待宵草)といえば、ツキミソウ(月見草)の仲間。ツキミソウといば、夕方頃に開花して夜の間咲き続け、翌朝には萎んでしまう花。この花のはかなさが、一夜の恋を象徴しているのか、あるいは実らぬ恋を喩えたくなるのか、太宰や夢二が好んで歌にした。
姿形はオオマツヨイグサとよく似ているが、オオマツヨイグサよりも花の大きさが小さいことから、メマツヨイグサの名前が付いた。
花言葉は「ほのかな恋」「移り気」「静かな恋」。


ミゾソバ(溝蕎麦)

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この花の名前を探していたら、こんな短歌に出会った。

       溝蕎麦の風うつくしき日暮かな  (山口みちこ)

ミゾソバの名は、溝に生える蕎麦に似た花という意味らしいのだが、作者はこの可愛い花が風に揺れている様子を詠っている。先日登った武尊山の登り口で見つけたもので、しばらく名前が分からずデスクトップの隅っこで、小さな花を咲かせていた。いまの時期、注意深く探せば、草原や道の脇などで見られる。若葉は天ぷらやゴマ味噌和えになるらしい。