2017年10月

定山渓温泉


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吊り橋に立つと、たくさんの落ち葉が川へ舞っていくのが見える。風が吹くと寒さが凍みて、落ち葉の気分だ。気温は5度を切っているかもしれない。中学時代の仲間といつもの定山渓温泉にやってきた。市内からわずか一時間で、旧交と身体を温められるので重宝している。風呂に入る前に、ちょいと裏手の山間を歩いてみると、大半の樹々は紅葉が終わっていた。

最近は温泉好きの外国人が増えていて、温泉街に外国語が飛び交っている。それに合わせるかのように、常宿も夕食がバイキングになっていた。ドンと座ったら動きたくない方なので、食べたいものを探して歩き回るのがとても辛い。とくに酒が入るとなおさらだ。なんでも喰うから出してくれ〜。


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風呂を選んだ二人を置いて、二見吊橋の前で


故郷の秋


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札幌の市街はいま紅葉が美しい。こんな華やかな秋を感じることなく18年を過ごしていたんだねえ・・・ため息。銀杏はやや赤味のあるピュアな黄色を纏って空に伸び、ドウダンツツジは、血をかけられたような鮮烈な赤色。秋の陽射しの中、樹々たちはそれぞれ色を思いっきり主張していた。

唐松のある山の広い傾斜地に、ときどき天使の階段と思わせるような光が射して、森の起伏を際立たせた。森はただの木の集まりではないのだ。故郷なのに外国に来ているような感覚が生まれ始めた。


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シャインマスカット


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我が家にデリシャスなブドウが届いた。なんでも「シャインマスカット」という高級品種だという。どなたから?と聞けば、娘がお付き合いをしている男からだという。何で突然マスカットだけが、ここにやって来るわけ?
えっ?たくさん貰ってしまい、行き先がなくなって・・・ふむふむ

でも、それって、どうなの? 
と、皮ごと一つ口に放り込むと、じつに甘くてフレッシュ。

マッ スカットしないけど、いっか・・・


稲の花


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この時期、新米も新蕎麦も美味い。口に含むだけで、幸せが広がっていく。先日、ある古民家の壁にこんな「!?」が貼られていた。稲の花の命はわずか一二時間だという。ナニ?わずか一時間ほどで受粉して、日本人を支えるお米となる・・・そうとは知らず、失礼の数々・・・

実るほど頭を垂れる稲穂かな・・・ますます、お米には頭が上がらない。


ホトトギス


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ときどきこの花の名が出てこないときがある。たしか鳥の名前・・・と言いながら出ない。しばらくしてから「そうだ、ホトトギス」「ヤマホトトギス」と歩を止める。花の名を二つ覚えて、人の名二人忘れる。そんな歌を誰かが詠んでいた。
会話が、ほとんど指示代名詞で交わされている。「あれよね、あれ」「そうそう、あれあれ」。
想像力を鍛えあっているような会話だから、つい言葉が多くなる。

関西の
お喋りなおばちゃんみたい
ヤマホトトギス
豹柄模様の花と蕊
噴水のごとし

増上寺

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知らなかった。東照宮とは徳川家康公のことだったとは・・・。
週末の吟行歌会は雨。歴史研究家の山口さんの案内で、芝の増上寺を吟行した。最初の説明にあったのが冒頭の下り。家康は自分を神格化させるために東照宮を名乗った。東を照らす宮ねえ・・・。どこかの首相にも似てるねえと、皮肉の一つも言いたくなった。西を煽って、東には尻尾を振る。

増上寺の敷地は広く、戦前の寺所有の領地は25万坪。今の15倍以上にも及んだ。大門の上から南方を眺めれば東海道、その向こうは遠浅の海が続いていたという。話を聞きながら、ぼんやりと景色を想像した。長閑である。

戦前の写真を見せてもらった。例えば本殿に入る中門と霊廟の造りは実に手の込んだもので、壁に天井に開き戸など、すべてに美しい彫り込みと彩色が施されていた。これが戦火で失われたのかと思うと、勿体ない話だと溜息の一つも出てしまう。


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かつては交差点付近にあった徳川家専用の参詣門の御成門

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京都のお寺との違いは、江戸の寺は解放されていたことだ。市が立ち、縁日やお祭りなど、多くの人で賑わい、今でいうアミューズメントパークだった。そんな話に茶々を入れながら、山口さんの面白話を聞いてこんな歌を詠んだ。


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め組の火消しの大喧嘩に
煽った半鐘が悪い の
大岡裁き
なるほど上手いねと
めぐみの雨を受けながら

吟行ならではの歌。なんとこれが一席になった。
みなさんの歌を紹介する。


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花も 蝶も
葵御門に
ひれふして雨
三代の黒門くぐり
徳川へ「お邪魔します」   Kさん


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徳川家の
御威光を
見おろして
東京タワーは
霧の中                 Sさん

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花嫁御寮は
雨に濡れ
芝大明神に
願かけて
夢はおぼろか          Fさん

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権勢の象徴
小雨にけむる
芝東照宮
何を想う
訪れる異人達は         Kさん


次の吟行は、もう来年の一月。谷中辺りを歩こうかな。


道迷い


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川を渡った先に見える道が、じつは間違い


忘れないうちにちょっと書いておこう。雨飾山でのエピソード。Sさんと荒管沢という結構急な沢へ下りていく時、スラッとした女性が追い抜いていった。なかなかの美人でしたねえとSさんとニヤリ。スイスイ下りていくその女性を見送る。

せっかく登ったのに200メートルほど下って、ふたたび登り返すという、もっともイヤなパターンだ。沢向こうに見えるルートを確認しながら、小さな川を渡る。
ところが、細い沢が山道だと思ったら、少し離れた場所に赤いペンキで登りのルートが標されていた。これは、間違えやすい・・・。

それから三時間経っただろうか。雨飾山を制覇して荒管沢へ下っている時に、その女性が息を切らして登ってきた。
「あれ、先ほどお会いした方ですよね、どうしたんですか」
「じつは道を間違えて沢を登り続けて、遭難しそうになったんです」という。あの沢道を登ってしまったのだ。やはり・・・あそこは間違えやすい。単独行だからなおさらだ。そんな話をして「あなたの脚力であれば、いまからでも山頂往復は大丈夫でしょう」と励まし、もう一度見送った。信じて進むと、ときどき騙されることがある・・・。

道を誤らないように注意しよう。



正岡子規記念球場


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子規がグランドを駆け回るイメージを重ねた


上野を歩いていたら、おやっという表記が目に入った。「正岡子規記念球場」。子規が野球好きだったことは知っていた。しかし冠になった野球場があったなんて、それも上野公園の中に。子規は日本に野球が導入された頃、熱心な選手でポジションは捕手。喀血して伏せるまで続けていたらしい。

一時期は自身の幼名である「升(のぼる)」にちなんで、「野球(のぼーる)」という雅号を用いた。このユーモアは、彼のイメージをとても明るくしてくれる。倒れるまでは快活な青年だったのだ。

のぼーる・・・これで「野球」の命名者は子規、と云われるようになったのかもしれない。文学を通じて野球の普及に貢献したとして、2002年野球殿堂入りをした。

九つの人九つの場をしめてベースボールの始まらんとす


文楽初体験


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Pさんからのお誘いがあって、昨晩上野の森で文楽を楽しんだ。野外での公演と聞き、雨による中止を心配したが、会場に着いた夕方には雲が上がって、銀鼠の空が上野の森を包んだ。ぐるり見渡せば風ひとつなく、小屋に覆い被さるような上野の森が不気味なほど静かだ。


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この企画「にっぽん文楽」は、分かりやすい解説、人形との撮影会、公演中の飲食が自由など、初めての人でも楽しめるように工夫されていて、とても庶民的だ。お弁当とお酒をいただきながら、闇のなかで繰り広げられる人形劇に引き込まれいった。

文楽は人形浄瑠璃を受け継いだ日本の伝統的な人形劇で、太夫・三味線・人形遣いの三者で成り立つ三位一体の演芸だ。太夫による語りやセリフの合間に、津軽三味線というかエレキギターを思わせるような、三味線が鳴り響く。使い手は驚くほどに自由に弾く。ある時は琵琶のように、またあるときロックギターを思わせるようなバチさばきで・・・。

初めの頃は三人の人形使いが気になったが、物語が流れはじめるといつのまにか黒子らの姿が視界から消えた。人形があたかも生きているように見えてくるのは、ひとつひとつの所作がじつに丁寧で美しいからだ。それは歌舞伎役者と変わらない。これは、はまってしまった・・・。

終演後、冷えてしまった体に気がつき、お仲間十人と熱燗コースとなり、文楽談義から始まって、落語、講談と話が広がっていった。


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人形遣いの青年が人形のように美しかった


「平」


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この像を見ていたらふと思い出した。ある歌会の詠題の「平」である。頭に浮かんだのは「平和」。いつのまにか課題が頭に擦り込まれていて、ふとした時に浮かび上がってくる。職業病の一種みたいなもので、鳩を飛ばす家族の像を見ていたら、こんな歌が・・・。

平和を守り抜くとは
云うけれど
憲法を守り抜くとは
云わない
アブナイカク

これを出してしまったら、もう出せない、ガ〜〜ン。

クサックサッ イタッイタッ


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秋の雨と風が、木の実を落とす
銀杏 クサックサッ  団栗 イタッイタッ


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雨飾山(4)


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リンドウの一つくらいあるだろうと、ゼイゼイ息を切らして1700m辺りを登っていた。すると一株、発見。ここ数年、山でのリンドウとの出会いは雨のなかだ。一緒に登っていたSさんに聞いてみる。「リンドウの花言葉、ご存知ですか」・・・「知りません」・・・「あなたの哀しみに寄り添いたい、です」。


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下山のとき、今度はSさんが「これはもしかしたら」・・・「そうです、トリカブトです」。「効き目のあるところは根です」。花の多い季節は、心が浮き立つので疲れは気にならないが、雨で急坂の多い雨飾山では、体力と余裕がなくなった。


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雨飾山(3)


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ちゃんめろ〜♬


「ちゃんめろ」。これを聞いて、分かる人は通だ。勝手な解釈をすると「ちゃんがメロメロになるくらい美味しい」。おやきの一つで、なかにフキ味噌が入っていた。

登山前日、雨飾山の麓をハイキングしていると、森の中に小さな店があった。そば、キノコ汁、山の果実酒、その他不思議な食べ物がある。Sさんが、キノコ汁とおやきを注文した。では同じもので「ちゃんめろ」をひとつ。
出されたおやきを口にすると、お〜美味さ爆発!フキ味噌が、ドカーンと広がった。想像以上のインパクト。大きなナメコが入ったキノコ汁も量があってウンマイ〜。ちゃんはメロメロだ〜。

調べてみると違っていた。白馬地方ではフキノトウを「ちゃんめろ」と呼ぶらしい。語源は「ちゃん」が雪を割る。「めろ」は一番先に食べられるという意味。誰がつけたのか、方言は面白い。


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カボチャ、野菜、あずき、そしてちゃんめろ・・・


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鎌池は一周できる

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麓でまず赤くなるのは、ツル、ハゼ、ウルシだ


雨飾山(2)


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雨飾山は、濃い自然が残っていた。木道沿いの小川を覗くとイワナが泳いでいる。わずか20センチ位の深さに30センチ強のイワナが何匹も。ホントかよ〜と目を疑う。カエルも蝸牛もでかい。
そして実りの秋だなあ〜の山葡萄、アケビ、そしてサルナシの実。サルナシはマスカットのような甘さ。ドングリやブナの実、そしてキノコの種類も方だ。きっと動物だってたくさんいるに違いない。
山に抱かれ、いで湯に温まり、旬の肴と地酒に酔う・・・これぞ、秋!


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たわわの山葡萄。採って帰りたかった〜

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アケビとサルナシ

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天然なめこの大きなこと〜

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露天の湯で小雨に打たれながら

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イワナの刺身には、自分で摺り下ろす生わさびで

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この地酒で至福のなかへ


雨飾山(1963メートル/日本百名山86座目)


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紅葉の下を雲が流れてゆく


その考え方こそが、アブナイカクだろう。と洒落をかましながら、事務所の反対側で演説をしている菅なんとかという輩の話を聞いていた。「国難は、アブナイカクの存在そのものだ」・・・ブツブツ・・・

さて、雨飾山(あまかざりやま)だ。名は体を現すの諺どおり、まさに雨に打たれての86座目登山となった。雨飾山は想像以上にキツかった。お天気もさることながら、山一つを登ると一気に200メートルほど沢に下ろされ、そこからようやく雨飾山の急登に入るというコースだった。途中、梯子とロープが繰り返され、高度を稼いでいく。遠くに近くに、紅葉している樹々が美しい。空気も格段に美味い。昨晩呑んだ酒が、汗となって浄化されてゆく。

笹平から一気に山頂へ。お天気であれば360度の眺望が楽しめ、日本海も遠くに見えるはずなのだが、いかんせんガスってて風が強い。
仕方がないと、タッチ&ゴーの下山を決める。帰りのバス時間にも迫られていたので、約8時間、休憩と食事なしの歩きっぱなしで下山という、ハードな体験をしてしまったのだった。


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雨飾山は、この山を越えた向こう。右奥に小さく見える

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やったぜい〜!


曼珠沙華


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曼珠沙華の花を見ると「葉知らず花知らず」の言葉を思い出す。花の咲くときに葉はなく、葉が出るときには花がない。短歌にもそんなことが詠まれていたけれど、どんな歌だったかは忘れた。なにかすれ違いの人生みたいで、ちょっと切ない。花はもうそろそろ終わりだろうか。


秋刀魚


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秋の食卓をにぎわす秋刀魚がとてもスリムだ。脂もいまひとつ乗っていなくて、寄り添う酢橘と大根おろしもなんだか元気がない。今年三回目の秋刀魚定食を静岡県の港町のとある食堂で頼んだ。出てきてビックリ〜。あら、君はサヨリ!?
またまたはずれ・・・秋刀魚に愚痴っても仕方がない。秋刀魚だって好きでスリムになったんじゃない。哀れな秋刀魚よ。歌が閃いた。

愚痴りたいのは
秋刀魚の方かもね
好きで
こんなに
痩せたんじゃない

昔、美味しくいただいた秋刀魚には、こんな歌を送っていた。

秋刀魚の骨
一匹
美しく残り
泳いでいきそう
ダリの絵のなかを


みょうが枝豆


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みょうが枝豆、命名も自慢したい

誰かに聞いたか、このレシピを覚えていて、週末に一つ作ってみた。材料は枝豆と茗荷だけ。粒がすっかり大きくなった枝豆を熱湯に投入する。塩は入れずに、ただ茹でる。柔らかさはお好みで。枝豆を湯から取り出し、アチアチといいながら、豆の薄皮もスルッと丁寧に剥がす。
茗荷は薄く細く切ってから枝豆に加え、酢醤油であえる。これだけだ。

食べるときは、二つをバランスを考えながら一緒に食す。絶妙な比率を見つけていく楽しみがある。ポイントは、茗荷の切り方だろうか。細く切ることで、よりデリケートな味わいが広がる。お試しあれ〜。


日本酒の日


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写真はイメージです


昨日、コンサートの帰り、友人らと入った居酒屋での開口一番の言葉は「今日は何の日か、ご存知ですか」だった。皆さん知る由もない。「今日10月1日は日本酒の日です」。メンバーは日本酒好きがズラリ。早々に乾杯の小ジョッキをカラにして、純米酒に突入した。

ここしばらく日本酒を呑んでいなかったからか「日本酒の日」の酒は、いつもよりググッと沁みる。旨いなあ〜と至福に酔いしれながら、今年通り過ぎていった酒たちに想いを寄せる。