2018年8月

月山(3)



雨にあたらなくてよかった〜と月山を後にして、日本海側にある湯野浜温泉を目指した。運がよければ夕焼けを眺めながらの露天風呂が待っている。

ずいぶん昔、湯殿山を登った後に、鶴岡駅の案内所で宿を紹介してもらい、湯田川温泉に泊まったことがあった。条件は一万円以下。案内所の女性は、穏やかな庄内弁で宿の方と折衝してくれた。「なんでも藤沢周平さんのファンだそうで、山から下りてきた人です」「あ、そうですか、ありがとうございます」

藤沢周平のファンというのは嘘ではなかったが、その頃は二三冊くらいしか読んでいなかった。泊まりたかった所は、藤沢周平が教師時代に教えていたという元生徒の宿。駅前からバスに揺られて宿に着き、恰幅のいい女将に感謝を述べた。部屋に通されて、驚いた。最上級の部屋だった。まずかったかなあ〜。

夕食は懐石のコースで、女将が食事の間、ずっと藤沢周平の話をしてくれた。その日は、お客がほとんどいなかったはずだ。なにかばつが悪くて、かしこまって聞いて、食べて、少し呑んだ・・・

そんなことを思いだしながら、潮騒の音を聞きながら湯に浸かった。あの旅館はまだあるのだろうか。女将はお元気だろうか。山形の人には、いつもお世話になりっぱなしだ。



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月山(2)


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シシウドの花にコエゾゼミ。背中をよく見ると「山」の文字、なんだか可笑しい


月山にはさまざまな肩書がある。日本百名山、花の百名山、山麓は月山山麓湧水群として名水百選に、そして水源の森百選にも選定されていて、懐が深いというか、温厚で包容力のある山なのだろう。

というわけで、もう少し早ければ花が綺麗だったかな・・・となる。登り口にはシシウドの花が群生していた。この花のスケール感は、気持ちがいい。山を誇っているかのようで、山の稜線と重ねて合わせて見ると、その対比はいろんな想像を喚起させてくれる。


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チングルマの綿毛は食虫植物のようだ


中腹はクサモミジが始まっていた。風が吹くと茶褐色がうねる。秋をしみじみ感じる色合いだ。高度を上げていくと、霧に濡れているチングルマの綿毛が、風のままの美しいオブジェをつくっていた。なんだか宇宙と交信しているようにも見える。


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湿地によく見られるイワイチョウ

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雨に濡れたのか、今ごろまでニリンソウが咲いていた

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梅の花に似たウメバチソウ

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ウサギが食べるのだろうか?ウサギギク

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日本海側の亜高山の湿原に咲く花、イワショウブ

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演歌タイトルのような名前、ハクサンチドリ、下から萎んでいた

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木道脇でアキノキリンソウが散りかけていた

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コバイケイソウの葉が秋色に

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オニアザミだけはこれから咲き始める

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そして秋といえばリンドウ、君の哀しみに寄り添いたい、となる

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この霧の向こうにもいろんな花があるのかも


月山(1984メートル/日本百名山87座目)


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東北の山を一つ忘れていた。山形県の中央に鎮座している名峰、月山。修験者の山岳信仰の山として知られている。途中までは一度登っていたが、今回は山頂まで極めようと、南側の姥沢口からアタック開始。山域は磐梯朝日国立公園の特別区域に指定されているだけに、もし晴れていれば絶景が見渡せたに違いない。雨は朝方には上がったが、ガスがかかってその懐の広さをつかめない。


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山がたばこを吸っているのだろうか?細い雲が次々に流れていく


お天気がイマイチでも、ポジティブに考える。雨が上がってよかった。曇空のお陰で、山の緑の深さ豊かさが美しい。そして流れる雲の見事なこと。人も少なく、静かな山行が楽しめる・・・。
途中、修験者の一団とすれ違う。先頭の山伏は真っ白な髪とヒゲの男で、眼光鋭く、一瞬、ニホンカモシカではないかと思った。迫力あるなあ〜。
しばらく登っていくと、あの山伏の吹くホラ貝の音か、雲の下から霊験あらたかな響きが聞こえてきた。


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最後の急登は堪えた。久々の山だったこともあり、息が上がり、何度も山頂を見上げては、ため息をついた。しかし歩をすすめれば、やがて終わりは来る。月山神社が見えてきた。風が強いなか、やっとこさ、山頂。神主さんにお祓いを受けて、無事に月山を登りきった。


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ときおり雲が切れて、景色が広がる、オオ〜                                                                                

愛酒の日


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今日8月24日は「愛酒の日」らしい。酒が好きだった若山牧水の誕生日だから。牧水は、こんな歌を詠んでいる。

白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしづかに 飲むべかりけり

ゆっくり、じっくり、楽しめる、スッキリの秋の夜は、いつ来るのだろうか。そんなことを思いながら、喉を通り過ぎていった酒たちを振り返る。


P6104835.JPG三段重ねがうれしい

私を泳がせる


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今月の五行歌本誌8月号から、これいいなあと思った二首です。

寄せる青と
たゆたう白と
私が
いない日の
海を想う


勝負は引き分け
私は
命を失うが
地球も
私を失う


夏が過ぎた頃、海を眺めてみたくなるような歌。
涼しい木蔭で、好い歌を読みながら、ビールを呑みたいなあ〜


五平餅


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あれはマコトちゃんか!?



どこかで観たな〜と、赤白のボーダー柄の家を眺めていたら、思いだした。NHK朝の連続テレビ小説「半分、青い。」の「センキチカフェ」のユニホーム。鈴愛(すずめ)が着ている同じ赤のストライプだ。

ここは梅図かずおの「まことちゃんハウス」。出来上がったとき、派手な外観に近隣住民から「景観を損なう」と訴えられて、大騒ぎになった家だが、植物が大きく育って、その全貌が分からなくなっていた。
いまも彼はボーダー柄のシャツを着て、住んでいるのかな。

中村雅俊爺ちゃんの五平餅は、じつに美味そう。秋風羽織も娘のかんちゃんも大好物。といっても観ていない人には分からないか・・・。



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樹木ですっかり被われていた



昆虫食


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今年は暑さのせいか蝉の鳴き声が少ないなと思っていたら、思いがけないニュースをネットで発見。「食用でセミの幼虫捕らないで」。
なんじゃそれっ。埼玉県川口市の青木町公園総合運動場にこんな文言の看板が設置されていたのだ。

市では、「青木町公園でセミの幼虫を大量に捕っている人がいる」という情報が複数寄せられたため、看板を設置したという。それも3カ国語。
昆虫食が話題になっているが、もう食べ始めている人がいるんだ・・・
幼虫はどんな味がするのだろう・・・一瞬想像した。


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うかうかしていられないぞ〜


花の名前


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何度覚えても忘れてしまう花がある。この花もそう。ルドベキア。以前、北海道のあちらこちらに沢山咲いていた。関東周辺でもよく見かけるから、野生化しているのかもしれない。忘れては、ふとある時に思いだす。どうして記憶しようか・・・

先日の山で、思いだせなかった花がホトトギス。たしか鳥の名前と同じだったはずと、一つひとつ潰していくと「はいはいホトトギスね」、こんな風に覚えておくと思いだすとき楽しくなる。

他には、メチャせこいわ⇒メタセコイア、舌のようにベロペロ⇒ベロペロネ、などシャレや特性で覚えておくと意外に整理しやすい。しかし花ばかりに思いを寄せると・・・

花の名前
三つ
覚えて
人の名前
二人 忘れる


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三年前の今ごろ、美瑛で名前を覚えた


尾畠さん


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あのプロボランティアの尾畠さんは、この向日葵ではないかと思った。高い、大きい、鮮やか、そして照らす。無欲の人の心は美しいと、尾畠さんから強く感じた。


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この蜂は、見つかった少年のようだ


ロックガーデン


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少年Aが捕まえた沢蟹を見せてくれた


お盆に一度くらい、山に登っておかなければいけないだろう、出来れば涼しいところ・・・ふと浮かんだのは、御岳山ロックガーデン。川沿いを歩いて、最後は滝を見上げる。余裕があったら大岳山を回って、御岳の宿坊に寄って汗を流し、ビールを呑んで帰る。これで行こう!そして、ほぼその通りになった。
違ったのは、ビールで終わらず冷酒までいってしまったこと。


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山道にはランプのようなレンゲショウマが咲いてます


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滝があって

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涼しげな宿坊には、ビールどころか冷酒まであって・・・


松浦武四郎


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母の四十九日で札幌に帰っていた。半日時間があったので、初めて野幌(のっぽろ)なる地に足を延ばし、北海道博物館で開催されていた松浦武四郎特別展を観た。

松浦武四郎は、元祖日本の「歩キ眼デス」かもしれない。第一章の入口に彼を現す言葉があった。「好奇心、探究心、情熱、行動力」。いきなりノックアウト〜。

江戸時代末期(幕末)から明治にかけての探検家で、「北海道」の名付け親。今の三重県松坂市の庄屋の家に生まれ、16歳の時にはすでに日本国内の諸国を巡っていた。そして20代後半には蝦夷地から択捉島、樺太までを調査し赴いた地の詳細をまとめたことが評判となり、江戸幕府から蝦夷御用御雇に抜擢される。

この会場では、探索した地の風景や人々の暮らし(アイヌ文化や風習)、自然と生産物、北海道・北方領土・カムチャッカの大地図など、絵と文章で克明に綴った記録を数多く展示していた。調査記録書は150冊に及び、虐げられていたアイヌの人たちの状況も幕府に報告していた。

晩年は、奈良県大台ケ原に登り始め、自費で登山道の整備や小屋の建設などを行ったとあったので、ますます武四郎への興味と愛着をもつのだった。




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常設展のスケールも凄い、次回はこちらを中心に観よう

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北海道百年記念塔


クモの巣


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!?なにこれ・・・変わったカタチのクモの巣だ・・・新種だろうか。もしかしたら大捕り物騒ぎの後、上手く繕ったのか。感心して見ていると、蜘蛛がいることに気がついた。隠れているのか、猛暑から避けるためなのか、左右対称の美しさにしばし見とれた。


雨風強し


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いま、歌会が中止になった。雨風が強くなってきた。歌でもつくって大人しくしていよう。


寒天工房


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神田川沿いの遊歩道を歩いていくと、寒天工房の玄関がお洒落になっていた。こんな鮮やかな暖簾のブルー、見たことがない。よくこの色に決めたなあ〜と感心した。そして道行く人たちが休めるようにと細長いベンチを配している。優しいよなあ。盆栽と苔玉が置かれていて、とても落ち着く。
少し涼しくなったらここで寒天を食べよう〜!


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愛されました・・・


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被害者も加害者も分からない。錆び色に変化したのはなぜだろう。
ポツンと五センチの不思議が落ちていた。


夕焼け


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暑さへの罪滅ぼしか、神様は時々、夕焼けをプレゼントしてくれる。天空を染めるような日本海側の夕焼けにはかなわないが、茜色に変わっていく空を眺めるのは幸せだ。この日は、日曜日だった。外に飛びだして、西の空が広く見える神田川にかかる橋の上でシャッターを切った。いいねいいねと夢中になっていると、蚊もホントホントと首筋に足に手にやって来た。


真っ赤に燃える


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去年も暑かったが、今年はさらにヒートアップ。息絶え絶えで新宿通りを歩いている。歩くスピードは老化とは別に、間違いなくこの熱さでトボトボと遅くなっている。写真は、昨日の午前10時40分頃、気候変動観測衛星「しきさい」が観測した地表面温度の画像だ。関東平野が真っ赤に燃えている。都心の道路は、50℃を超えているのではないか。

ふいに美空ひばりの歌が聴こえてきた・・・
真っ赤に燃える〜 関東平野〜 真夏の道は〜 超えて気絶なの〜♬