2012年9月

フォレストガンプ



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風のなか、アササンしていたら、白い花びらのようなものがゆっくりと降りてきた。それが羽毛だと分かったのは、浮遊している時間があまりにも長かったからだ。掌に乗せると重さの感覚がない。鳩の羽だろうか。映画のオープニングシーンを思い出した。フォレストガンプだ。フワフワと降りてきた羽が、無欲の主人公(トム・ハンクス)をさまざまな出会いに導き、思いがけない体験をさせていく演出に使われていた。
人生というものは羽のようなものだと、その映画は伝えたかったのだろうか。どこへ行くのか分からないが、こうして誰かの掌に届いていくものもある。つまり一期一会。羽は手を離れて、神田川を旅していった。



韮の花



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アササンのコースに韮の花が咲いていた。毎年、花をつけているので、野生化しているのだろう。ふと全国歌会の作品集にあった、この歌を思い出した。

「おかえり」と
姉さん被りのを解く
かあさんに
挿してあげた
韮のかんざし

スッと立ち上がった茎の先に、カンザシの飾りを思わせるような白く小さな花。いつ見てもキリッとした清しさを感じる。この花をつけてもらった母さんは、きっと疲れが消えていったことだろう。野の花がもっと身近だった頃、親子の関係も、季節の営みのなかで、今の時代よりももっと心が通い合っていたのかもしれない。


秋へ



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日の出の時間が遅くなったせいか、朝早くの景色にはまだ力がない。川沿いの桜並木の葉が、いつの間にか半分ほどになって見通しが良くなっている。長く咲いていたヤマブキの花が消えて、徒長枝がもの寂しげに揺れている。花が少なくなったなあと思いながら、ムラサキシキブを見ると、随分と赤味が増していた。そうだもう実と種の季節だ。次の世代にバトンタッチしようと、植物は季節よりも早く身支度を始めていた。



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合田草 (ごうだそう)



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北海道では野生化して道端に咲いているらしい


珍獣という言葉があるが、植物の場合は何というのだろうか。珍花?先だって帰郷した際に、菜園作りに熱をあげている弟から、不思議なドライフラワーを見せてもらった。「ナンダコレ!」。「北海道にしかない新種かね」などと言いながら、とりあえず写真を撮って、早速、権師匠にメールすると〜「合田草 (ごうだそう)もしくは大判草」という返事があった。調べてみると、110年ほど前、フランスから種子を持ち帰った合田清さんの名前をとって、合田草と命名したらしい。今では「ルナリア」という素敵な名前がある。ルナは月の意味だろうか。
葉っぱだと思っていた部分は、子房が脹らんだもので、実際の葉はギザギザとしている。まず花が咲き終わると、その付け根にあたる子房の部分が、実として平たく脹らみはじめ、やがてこのカタチになる。その後、種は実から破れ落ち、ドライフラワーが出来上がる。写真をよく見ると、確かに種の有無が分かる。昨年の春にコバンソウを紹介したが、まさか大判草まであるとは思わなかった。



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アブラナ科で4〜5月には、こんな花が咲く


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実は半透明で団扇のような形で育つ


マーラー「巨人」



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始まる前のロビーコンサートの風景



昨日は「世田谷フィル」の定期演奏会だった。正しい名称は「世田谷フィルハーモニー管弦楽団 」。ここのPRの仕事をお手伝いして、もう10年あまりになる。演奏会のプログラムはハイドンとマーラーで、いずれも交響曲だった。前半のハイドンの「時計」は弦楽器中心の軽快な旋律で30分の演奏。休憩後がマーラー。マーラーについては難解な曲のイメージをもっていたので、昨日の「巨人」が意外に明るく若々しい曲だったので、驚いた。どの楽章でもそれぞれの楽器のソロが入るので、各パートの演奏者は緊張したのではないかと思った。第一楽章から全ての楽器が次々に奏でられ、第四楽章に入ると、打楽器が圧巻となる。シンバルの一撃で始まり、ヴァイオリンによる息の長い美しい旋律の後、ティンパニの連打、トランペット、ホルンが高らかに響き、主旋律が繰り返されてフィナーレ。最後は大太鼓も加わり、観衆の声が聞こえてくるような勝利に満ちた演奏となって終結。観客からは、拍手が鳴り止まなかった。


叔母の庭



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リウスをアクセントにしていた


さて北海道編の続き。今回も叔母の庭を見せてもらった。「もうほとんど花が終わってしまい、何もないわよ」と、庭に残っているわずかな花を一緒に眺めながら、一つひとつの花の名前を聞いた。しかし、どうもカタカナの花の名は記憶できない。ほとんどすぐに忘れてしまった。叔母は、「貴方がもう少し庭作りを続けてと言うから、しばらく頑張ることにしたわ」と、うれしいことを言ってくれた。そして玄関前には、シンボルツリーの苗木が1本。これは夏来た時にすすめたのだが、すぐに桜にしようと決めたらしい。
何ごとも行動的な叔母らしい思いが、庭のあちこちに工夫されていて、庭は人柄が出るものなのだと思った。



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クレマチスは花が終わってもその後が良いのよ、と


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漢字なら覚えられる。ハクチョウソウ(白蝶草)


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安藤久三連続講演会



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安藤さんの若さはどこから来ているのだろうか。皺ひとつない表情と話し振りを見ていると、若さや健康はどうも努力だけではなく、小生にはもちあわせのない品格の如く、生まれつき備わっているものではないかと思ってしまう。「安藤久三連続講演会」。昨晩は、101年に渡る波乱に満ちた人生の話を聞く会だった。

生まれたときは未熟児で一キロにも満たなかったが、脱脂綿に含んだヤギの乳を飲み、なんとか育ったと話す。もしかしたらその時に、強い生命力を身につけたのだろうか。
戦前、小林多喜二の講演を聞いている時に、特高に踏み込まれ一緒に連行された話や支那事変(昭和12年)後、徴集されて中国に渡った話など、頑強な心身を持ち合わせていなければ、到底試練を超えられなかったはずの事件をじつに穏やかに話す。まるでつい最近、体験してきたかのように。

そして戦前戦後を通して交流のあった太宰治、天丼をご馳走させられた井伏鱒二、役者にならんかとすすめた小津安二郎など、西荻窪のフォレストガンプは、昭和の時代のエピソードをいきいきと語った。
間近で話を聞いていると、安藤さんのように100才まで生きられるのではないかと思ってしまうのが不思議だ。
さて来月はどんな話が聞けるのだろう。早く山の話が聞きたい。


登別温泉



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「小学校の修学旅行は、登別温泉で男女混浴でした」。この話をすると、だいたいの人は驚く。当時こんなことは当たり前の道産子だったので、あえて問題にしたり、騒ぐような親はいなかった。
修学旅行の頃、大きな旅館は次々に増築していたので、大浴場までは迷路のような廊下をいくつも曲がることになった。浴場に入ると、湯気がもうもうと立っていて、見通しが悪かったが、目を凝らすと恥ずかしがるように歩く6年生がアチコチにいたのを思い出す。皆ドキドキ、キョロキョロ。湯に浸かれば、どちらも出ることができず、お互いに顔を赤くした。
上がるからあっち向いてね、の約束を破って、Aさんのお尻をしっかり見たことを小学校のクラス会で白状したら、「可愛かったでしょ」と笑った。道産子のおおらかさは、今も変わらない。



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地獄谷の奥へ行くと、間欠泉を見ることができる


中島公園



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札幌に着いた夕方、中学時代の仲間が三々五々集まり、ショットバーから始まりジンギスカンがメインのビール園、友人のスナック、〆の鮨屋まで四軒のハシゴをした。翌日の旅行会でゆっくり話ができるというのに・・・。しかし寝る前に水をしっかり飲んだで、アササンの時はスッキリ。
想い出を掘り起こしながら、ホテルの前に広がる中島公園を一時間ほど歩いた。朝の涼しさのなか、まだ弱い光は、芝生のコントラストに秋の訪れを感じさせ、森を贅沢な景色にさせている。
幼い頃、父とサーカスを見にきた。関取になる前の高見山の稽古姿を見た。グループサウンズを友人らと観に来た。高校時代はここで喫煙をして、補導されかかった。デートをした。この近くのホテルでバイトをしていた。アレもコレも、思い出のなかの中島公園である。


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芝生を自由に歩ける中島公園には、いろんなオブジェがある


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白い百日紅



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アササンのいまの楽しみは、白い花の咲く百日紅の下を通過するとき。鼻腔をくすぐる淡く切ない香りは、こちらが意識しなければ分からない僅かなものです。開花が始まってもうすでに一ヶ月以上。歩調を緩めてゆっくり息を吸い込むと、香りが全身に広がるようで気分が和らいできます。花の付き方も矢じりのような赤い百日紅に比べると、サワサワとしていて優雅です。
暑さもこの香りも後10日くらいでしょうか。



明日からふるさと札幌へ4日間の旅です。着いた夕方は、ここで中学時代の友人らとジンギスカン!そして翌日から登別温泉にて同窓会。楽しみです。

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秋雲は砂の如く



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アササンが終わってテレビの天気予報を見ていると、アナウンサーが「夏雲は岩の如く、秋雲は砂の如く」と正岡子規の喩えを出して、雲の話をしていた。なるほど、今朝の雲はまさにそうで、子規は上手い喩えをするな〜と感心した。朝方の小さな雲は、陽が上がるに連れて消えてしまうが、秋はその気配を見せ始めている。あの暑さは一体なんだったのだろうと、思える日が、すぐそこに来ていると信じたい。



●講演会のお話
札幌に住む弟から101才の凄い登山家がいるぞとメールがあったので、調べてみると、いやはや凄い人物。話すときりがないので、チラシと下記のサイトで安藤氏の人生の一端を垣間みてほしい。先月に続き、今月も講演会があります。是非聞きたいという方はご一緒しましょう。

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↓安藤久三さんのパワフル人生




トワイライトクルーズ



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約2時間のトワイライトクルーズコースは、恐竜をイメージした東京ゲートブリッジを左手に見ながら、羽田沖辺りでユーターンをします。羽田に着陸する飛行機が、船のほぼ真上を次々と通過するので歓声が上がります。改めてこの鉄の塊がよく飛ぶもんだなあと、感心する間もなく次の飛行機が・・・。その頻度にも驚きます。東京は凄い都市だ〜。


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日が落ち始めると暑さが和らぎ、船内にいたカップルたちがデッキに上がってきました。結婚式を挙げたばかりの二人が登場すると、ウエディングベルが鳴り、誰彼なく祝福。良い雰囲気です。そして辺りが夕日色になると、流れていく景色をみんな静かに眺めていました。
う〜ん、外国人だと絵になるんだろうなあと思いながらも、パチリ。
今度誰と来ようかな〜。


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海を見守る鉄のキリンたち


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ミッドナイトも良いだろうね



カモメ


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海の上はなぜこんなに気分がいいのだろう。気持ちの良い風を受けながら、変わる景色を見ていると、山屋の癖で富士山を探したり、房総半島や横浜方面を確認して、舟の位置を俯瞰から想像している。


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一羽のカモメがやってきた。餌を求めてきたに違いない。以前松島では、手からエビセンを与えたが、今日は何も持っていない。手だけを差し伸べてカモメを呼ぶが、利口だから一定距離以上は近づかない。

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カモメを追いかけていると、足元がぐらつく。側までやってきて20メートルほど上昇すると、爆撃機が降下するときのように、美しい横滑りのラインを海面に向かって描く。それを何度も繰り返し見ていると、平衡感覚が失なわれていく。浮遊感は脳を痺れさせ、別世界にいることを体感させてくれる。そろそろ追うのを止めた頃、カモメも方向を変えて遠離っていった。



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良いなあ〜恋人同士。羽田に向かう飛行機が真上を横切っていく


旅をする木



きっと
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緑も
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同じ
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時間を
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歩いている


本屋さん



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町からお気に入りのお店が消えて久しい。お茶屋さん、パン屋さん、酒屋さんなど、時間があればいろんな話を楽しめたのだが、駅に大型スーパーが二件進出すると、あっという間になくなってしまった。駅前に二件あった本屋さんもそうで、おかげで隣町まで足を伸ばすようになった。
ところが我が東中野駅にもJRの駅ビル「アトレ」がオープンしたというので、週末に覗いてみると三階に小さな本屋さんが入っていた。本屋大賞や話題の本コーナー、そして新刊の文庫本が揃えられているなど、なんとなく温かい雰囲気だ。そして窓際には喫茶室も併設されているので、お天気の日には西の山々をチラチラ眺めながらを本が読めそうだ。方位が合えばISSもチェックできるこの特等席に座ってみたい。


オレンジコスモス



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とても分かりやすい。オレンジ色だからオレンジコスモス。盛夏の頃から咲き始め、しっかり夏を受け止めている元気なコスモスだ。コスモスのイメージは秋なのだから、夏からこんな風に主張されると、花と季節のバランス感覚がずれてしまいます。はいはい、良い子だから少し静かにしてなさいね、と言いたくなってしまう。
オレンジといえば、懐かしい想い出があります。それは夕張メロン。子供の頃、我が家に夕張メロンが届き、家族の見守るなかで切ると、なんとオレンジ色の果肉。メロン、アジウリは、グリーンだと思っていたので、驚きました。そして口にすると、果汁溢れる強い甘み!衝撃でした。
もうひとつ、巨人軍が北海道遠征に来る度に、選手、コーチ達が大量に買っていくので、なくなってしまうと父が嘆いていたなあ〜。



朝の雲



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朝の雲を見ると、おっ、秋だね、と思うのですが・・・


ここ数日続いている夕立で、少し秋らしくなってきました。風が吹き始め、辺りが暗くなると、足早に雨が下りてきます。こんなことが何日か繰り返されると、だんだん夕立が分かるようになるもので、つい足早に。それでも間に合わなければ雨宿りとなります。事務所の窓から軒を借りている人たち見ると、後どのくらい降るのだろうという顔で雲を追っています。
夕立は江戸の名物だったというので、数日続くとなんとなく嬉しい。



火の車



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消防自動車とかけて、今週の仕事と解く。そのココロは〜、「火の車」。な〜んて、こんなトンチ頭はよく廻るのに、と独り言を言いながら消防博物館を取材してきました。目的は消防に関する写真の手配なのですが、中に入るとうれしくなるような資料が展示されていて、しばし見入ってしまいました。その一番が、江戸から続く各町にあった「組のまとい」。これが颯爽と並んでいて、思わず手に取って回し上げたくなります。そして江戸の大型地図。これは四方から眺められるようになっています。例えば半蔵門からの道は内藤新宿まで続き、途中に知っている町名やお屋敷がいくつもあったり、虎ノ門辺りにはトップクラスの名家がひしめいている。銀座なんかは、海の底・・・など、江戸の歴史に詳しい人が見たら、しばらく動けないんじゃないかなあ〜。
さあ、自分の火を消さなければ・・・。