生き物の死にざま


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「生き物の死にざま」。このタイトルに惹かれた。ここには29種類の生き物の一生が紹介されている。著者は生物学者なのだが、科学的な解説だけにとどまらず、子孫を残すために懸命に生きる全ての親たちに、哀切の筆運びでその一生を讃えている。

たとえばカゲロウ。成虫になったらわずか数時間のうちに死んでしまう。この間に子孫を残さなければならない。ところが空に水の中に捕食者たちがいる。次の命のバトンのために考えた策は、途方もない数で一斉に孵化し、数時間で子孫を残すという方法だった。

その他にも生まれた幼虫たちに我が身を捧げるハサミムシ、不老不死のベニクラゲ、老化しない奇妙な生き物ハダカデバネズミなど、不思議な生き物たちを紹介している。

死にざまとは、まさに生きざまの裏返し。読み終えて感じたのは、人間もまた命という普遍のプログラムの中を生きているということ。死すべきは死に、生きるべきものは生ききる。私たちはその繰り返しをしていくだけなのだ。


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カナブン
カミキリ
カブトムシ
いくつになっても
甲虫が好き

雨の山


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ビールを呑みながら雨の白馬岳を振りかえる


一面の田んぼはまるで荒海のようだ。見えない魔物たちが緑を漕いでこちらに向ってくる。西からの風は、低い雲を押し流していく。二日間、山の中で雨音ばかり聞いていたら、さすがに心配になってきた。雨を集めた谷筋には滝ができ、凄まじい音を立てていた。山で一番怖いのは、風だと思っていたが、降り過ぎる雨はもっと怖いと知った。


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谷筋にはいくつもの滝が現れた

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犀川、梓川、千曲川は、やがて信濃川に吸い込まれてゆく



尾張藩


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箱根山麓には我々のためにパネルが用意されていた


「吟行・四季の歌会」は35回を迎えた。今回は新宿区内にある戸山公園と箱根山。コロナ感染者が一気に増えたこともあって、キャンセルが参加者より多くなってしまったが、参加者はガイドさんの話に聴き入った。

戸山公園は江戸時代、尾張徳川家の下屋敷のあった地で、広さは東京ドームの約10倍。明治に入ってからは陸軍用地として戸山学校が置かれた後、戦後はGHQが支配し、返還後は公園と住宅用地となり、今は公園を囲むようにして区の高層住宅が並んでいる。

ガイドさんの説明によると、当時屋敷内には御町屋(おんまちや)という小田原宿を模した通りがあって、鍛冶屋、米屋など37軒の店が並んでいたという。営業は、お偉い方が来た時のみで、尾張藩の侍が町人に扮してお相手をした。小田原まで行けない将軍家のためにそんな町屋まで尾張藩は造ったのだ。それだけではなく大きな池や滝、そして橋、馬場、茶屋、さらに富士山を遠望するための小高い山(いまは箱根山)まで造成した。

なんという尾張の財力と贅沢。もしかしたらこの下屋敷は、徳川家への忠誠を伝えるためのテーマパークだったのではないかと思った。


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歩いたのは広い公園の一部