五郎さん


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コデマリが咲きはじめた


田中邦衛さんが逝去された。富良野は大きな哀しみに包まれているんだろうなあと思いながら、倉本聰さんの愛惜あふれる追悼文を読んで哀しみを深くした。

若大諸シリーズの青大将から北の国からの黒板五郎へ、男の顔はこんなにも変わるものかと、晩年の深いシワと自然体の演技を感心して見ていた。北海道のどこか地方に行けば、きっといそうな優しくてオッチョコチョイで、我慢強い男。そして子どもを愚直なほどに愛してしまう父親。ダイジェスト版を観ていたら、旅立つ息子に向けたこの言葉に、また涙した。

「疲れたらいつでも帰ってこい。息がつまったらいつでも帰ってこい。くにへ帰ることは恥ずかしいことじゃない。お前が帰る部屋はずっとあけとく。布団もいつも使えるようにしとく」

愛するがゆえに、息子とぶつかり、ボタンを掛け違うことを繰り返し、どちらも間違ってなんかいないと、視聴者に云わせて涙させる。倉本さんの真骨頂の脚本だった。

疲れたらいつでも帰ってこい。いつだったか、父に言われたような気もするが、それは黒板五郎だったのかもしれないと、在りし日のあれこれを重ねた。

五郎さん、天国でたくさんの仲間が待ってるね。いってらっしゃい。


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