2018年5月

燕岳(3)


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稜線歩きは楽しい。西からの風が強く吹くと肌を刺すが、360度の景色は贅沢なご馳走だ。西に目をやると手前にはハイマツが鬱蒼と茂って、凹みには雪が残り、白い枝珊瑚のようなダケカンバの樹々が谷に向って伸びている。そこから一気に千メートルほど切れ落ちて、谷には急峻な沢からの雪融け水が注ぎ込む。そして遥か向こうから雄大な北アルプスの連なりが現れる。


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そうです、イルカ岩。奥に槍ヶ岳

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これは、めがね岩


人気のある燕岳には、面白いカタチをした岩が多い。いわゆるインスタ映え〜という人気の奇岩だ。燕岳は、登りやすく撮影ポイントが多いこともあって、山渓(山の雑誌)の人気投票では第二位。一位は当然のように槍だ。

眺めて思うことは、槍も富士山同様、その山容を遠くから眺めて、ため息をするためにある山かもしれないと・・・。


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そして、槍ともお別れ。また会おう

燕岳(2)


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雪山が好きだ。といっても厳寒期の山は命に関わるので、この時期の雪山を楽しんでいる。雪を辿ってくる湿った風には、春の独特のニオイがある。解けた雪の匂いというか、芽吹きに向う樹々の命の匂いというか、山が少しずつ目覚めていくような、そんなエネルギーの気配を感じる。

山が賑わう前に、ひっそりとこの景色を独占していると、なんだか申し訳ないような気持ちになる。
柿の種を齧りながらビールを呑み、目の前のアルプスの景色を眺めていると、山は止められんなあ〜という思いが深まるのだった・・・


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大天井岳への道を辿りながら燕山荘を振り返る

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雪上テント泊組のリュックの重量は30キロくらい。持てない、支えられない・・・

燕岳


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無事に還ってきました。梅雨が来る前に一つ三千メートル級を登っておこうと北アルプスの燕岳へ。当初は、ピッケル、アイゼン必携だったが、雪融けがすすみアイゼンとストックだけで何とか山頂へ。しかし体が鈍っているというか、老化が進んでいるというか、キツかった・・・

こんなにキツかっただろうかと、休憩の度に地図を見る。しかしこの地図がいかんせん古い。1997年版だから、もう20年前のものだ。表示されている歩行時間が驚くほど短い。昔の人は体力があったのか。結局、雪道ということもあって、地図時間の1.5倍かかってしまった。


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雪に囲まれた合戦小屋を超えてしばらく上がると、槍の穂先が見える。恋人にあったようにワクワクする。どうして槍はアルピニストを駆り立てるのか。呼吸が荒くなろうと、ガツガツと上がる。穂高が見えて、笠ガ岳も現れる。そして北アルプスの心臓部となる山々が顔を出し始めると、ファンファーレがひときわ高鳴る。


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燕山頂は雪がないが寒い。風が強まると体温が奪われる

松本楼


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建物が全焼しても大銀杏は生き残った


久しぶりに日比谷公園の松本楼で食事をした。森の中に佇むこの建物を見つけると、つい入りたくなってしまう。ここの歴史は古く、創業は明治36年だという。昔はモボやモガたちが松本楼でカレーを食べてコーヒーを飲むのが、最高のお洒落だったという。ある時期は、10円カレーのチャリティセールもやっていたが、今もやっているのだろうか。
大銀杏の下で、ビールを呑む幸せ。誰にも教えたくないけどここは別天地。


三頭山(2)


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こんな碑が立っていた。何度登っても三頭山。

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どうしたらこんなカタチになるのだ

三頭山(1524m)


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三頭山山頂までは、都民の森の入口からゆっくり約二時間登ると到着する。針葉樹と広葉樹の森に囲まれた「大滝の路」を進んでいくと、落差35メートルの三頭大滝が現れる。吊り橋からの眺めは絶景なのだが、吊り橋は揺れやすいので高所恐怖症には辛い。目を細めて、滝を眺めて引き返す。

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水の流れにそって登っていくと、せせらぎと鳥の声が聴こえてくる。水の中を眺めると、緑陰が揺れて、ファンタジックな世界をつくっている。
五月、今だけの世界がここにある。歌が生まれる。

木陰をはおり
風のそよぎをうけて
五月を歩く
いまを
いまだけをと歩く

都民の森


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山頂から富士山がバッチリ!


五月を代表するような爽やかな昨日、久しぶりに奥多摩のさらに奥にある三頭山(1531m)を登った。山頂からは富士山がクッキリと見え、思いがけないプレゼントをもらった。三頭山は、裾野に広がる都民の森のもっとも高い位置にある。

この森がこんなにもみごとに育ったんだ・・・とあの頃を思いだした。ここには、驚くほどの巨木が何本もあって、森をいっそう森らしくしている。


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巨木第二位はカツラ(胴回り5.7m)

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第一位はトチノキ(胴回り6.7m)


四半世紀も前の話。奥多摩に都民の森を造るというので、東京都のデザインコンペに参加したところ一席を貰った。オリエンテーションの時に、閃いたキャッチが効いたのだと、そのとき思った。

キャッチは「森は先生」。人はもっと自然に謙虚でなければいけない。次世代の子供たちに自然の素晴らしさを伝えたい。この二つのコンセプトを「森は先生」に込めた。

ポスターを始めとしたメインビジュアルは、イラストの森のなかでブナの切り株の上に立つ女の子。まだ高校生だった高橋由美子さん(いまなにかと話題の人になっている)だった。頼まれもしないのに「都民の森」のロゴタイプをつくったら、今もそのまま使用されていた。


森は先生.png左のパンフはプレゼンターションの作品

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左がロゴがそのまま使われている今のパンフレット
右は五つの森が開いて見られる当時のパンフレット


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木材工芸センターやレストランなどがある


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この森を歩きた〜いと、しみじみ思うムシムシの日である



あちい〜〜と、言いながら外から帰ってきた。湿度がいきなり上がるとキツい。次の打ち合せまで時間があることが分かったので、京橋で友人の個展、知人の個展の二つを観た。

じつに不思議。二つの画廊の距離はけっこう離れているのに、オーナー同士は知り合いであることを、二人のオーナーから聞いた。つまり、オーナーとのお喋りを楽しんでいるうちに、そのことが分かったのだ。さらに画廊に置かれていたチラシのヴァイオリニストも共通の友人だったりして、世間は狭いですね〜となった。どうも昨日から縁がキーワードらしい。


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上/「やすらぎひと」儘田能光作品展 5月14日〜19日 会場:京橋 T-BOX
下/「1/1という表現」さとうしのぶ版画展 5月14〜23日 会場:京橋 アートスペース 繭(まゆ)




池澤夏樹さん


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アマゾンでチェックしたら3万円を超えていた。どこかにあるはず・・


昨日、池澤夏樹さんに初めてお会いした。なんて言うと格好いいが、じつは彼のミニ講演会に行ってきたのだ。講演のテーマは「須賀敦子を語る」。新聞の小さな囲み記事を見つけて、申し込んだ。会場に着くと、すでに二百名くらいの老若男女が静かに着席していた。

時間になって池澤さんが紹介されると、やや俯き加減で登壇された。白っぽい麻のジャケットに、ふんわりとしたパンツ、無精髭、イメージ通りの姿だった。池澤さんまでの距離は、約15メートル。

亡くなられて既に20年経つ須賀さんのことを懐かしく語りはじめた。朴訥だけれど、言葉を選びながらの語りは、知性的で、ゆっくりと丁寧に生きている人のように映った。須賀さんの魅力を、共通のシニカルな世界観、文学者としての感性や表現力、イタリア人ぽい頑固なところなどと、少年のような眼差しで語られていた。


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縁は不思議だ。写真家星野道夫に惹かれてからいろんな人に出会う。新聞のあるコラムから、児童文学の田中裕子さんを知って画家の堀文子さんを紹介される。星野道夫さんの本の書評を書いた池澤夏樹さんや生物学者の福岡伸一さんのコラムから、須賀敦子さんの作品と出会う。好きになっていく人から新しい世界を教えてもらえることは、幸せなことだと思う。

ウツギ


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マルバウツギ


ウツギの花が咲くと雨の季節が近いと思ってしまうのは、この花が半日影の場所を好むからかもしれない。初夏、やや日陰の森や山道で見かけ、白い花は遠くからも目につく。

ヤマブキの花が散ってからは、白い花が山道を彩る。マルバウツギ、コゴメウツギ、ガクウツギ、フタリシズカ・・・涼しげで沢の音とよく合う。


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コゴメウツギ

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ガクウツギ

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色素が抜けているような珍しい花、ギンリョウソウ


好きということ


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好きなテレビ番組がある。NHKのプロフェッショナル。昨日はサッカーの本田圭佑だった。好きなサッカーを追いかけ、世界のトップチームへの入団を果たし、ビッグマウスと呼ばれている男。今年のワールドカップ出場に全てをかけている姿が映しだされていた。

番組最後の質問「プロフェッショナルとは?」にしばらくの間をおいて、こう答えた。「ケイスケホンダ」。驚いたというか、呆れて、笑った。「今後、ケイスケホンダにしてしまえばいいんです」。プロフェッショナル=ケイスケホンダ・・・「自分への豊富を込めてこの答にします」と結んだ。

今朝の新聞のコラムに書いてあったが、好きであるというのは才能らしい。
本田もそうだが、辞めない安倍さんも総理職が好きで好きでたまらないのかもしれない。


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こちらは滑らかな人


けやき


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裏高尾のいろはの森の入口に幹廻り4〜5メートルのケヤキ
巨木のある森は、護られているような安心感がある


ケヤキ並木のある街が好きだ。私の街の自慢はケヤキですと、阿佐ヶ谷の中杉通りを教えてもらったのは、もうずいぶん昔のこと。新緑が美しいトンネルをつくって、街の喧噪を鎮めていた。けやきの黒い幹と緑のバランンスは、じつに涼しげな景観をつくる。

ところがケヤキは枝を自在に伸ばし、葉をたくさんつけるために、驚くほどに剪定されてしまうことがある。見上げてガックリ。なんと哀れな姿・・・昨今の庭師というか、剪定する作業者の技術は、愛情がないというか、低くなったような気がしてならない。


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花の香り(3)


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フラワーアーティストのお二人もバラを喜んでくれた


花の香りといえば・・・・バラのかお〜りが、く〜る〜し〜くて〜え〜♬
ブルーコメッツのあの名曲「ブルーシャトー」が聴こえてくる。いつの時代もバラは想いを伝える花、女性が喜ぶ花、と信じている。

「取材で女性を訪ねるときは花を携えて」、広告代理店のある先輩が教えてくれた。「花を貰ってうれしくない女性はいません」。言われた通り、取材する前に花屋の店員さんと相談し、決まってバラを選んだ。バラには、深い色合いのあるものやパステルトーンの明るい種類など多くある。選んでもらったバラを贈ると、どなたもが喜んでくれた。
「あら、男性から花を貰うのは久しぶりだわ」と言う方もいて、取材はスムースに運んだ。

星野道夫写真展を後にしてから、ひょいと公園に入ると奥にバラ園があった。香りのあるバラには、プレートがつけられていた。懐かしいような、恥ずかしいような名前がいくつもあって、それはそれでバラに相応しいのかもしれないと思った。


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P5050774.JPGブルームーン

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ダイアナ  プリンセス  オブ  ウェールズ

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ホワイトクリスマス

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花の香り(2)


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GWの最終日、千葉県市川市にある庭の美しいギャラリーで開催されていた「星野道夫の旅」写真展を訪ね、星野直子さんのギャラリートークを聞いた。亡くなった星野さんの奥さんで、初めての対面。すぐ側にいらっしゃったこともあって、なぜかドキドキしながら、アラスカの話を聞いた。

清楚な話し方をする方で、アラスカの自然やそこに暮らす人々の話を聞いていると、星野が生きたその時代を今も受け継いで生きているように感じた。彼が亡くなってもう22年が経つ。でも彼女の心には星野道夫が生きている。生年月日が近いこともあって、振り返る都度、自分だけもうこんなに長生きをしていると思う。

彼の写真を見ていると、この一瞬のために、どれだけここで待っていたのだろうと想像し、その時間をしばし共有している。何十万頭のトナカイの大移動、空を染めるオーロラ、安心して戯れるシロクマの親子・・・待つという時間の在り方を幸せを私たちは、すっかり忘れてしまっているのではないか。

待つという時間の濃密な甘さ、そして安心感。待つという幸福な時間が、まだ私たちにあったあの頃・・・写真はそんなことを教えてくれる。星野直子さんにはいつか会えると思っていただけに、希望が一つ叶えてうれしかった。

ギャラリーを出るとき、上から降ってくるような甘い香りに気づいた。懐かしいニセアカシアの木に白い花がいくつかあった。
ここはいいギャラリーだなと思った。


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姿は良くないけれど初夏の甘い香りで存在をアッピール

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ピラカンサの白い花

花の香り


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今時期のアササンの楽しみの一つに花の香りがある。大きな石の上にエゴノキの落花を見つけた。見上げるともう僅かしかなくて、それでも柔らかで涼しげな香りを放っていた。このくらいの香りが好いなと思った。


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上京前夜


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アオスジアゲハ、両方青い


そうか、上京の前夜は家族と特上のスキヤキ。皆の笑顔に包まれて、心配されて旅立っていく。そうなんだ・・・と今朝の朝ドラ「半分青い」を見ていた。半世紀近く前、そんな羨ましい旅立ちではなかった。

選んだ道を父は猛反対していた。男は喰えなければいけない。それが父の持論だった。そんなこともあって高校生活最後の一年、父との会話がほとんどなかった。旅立ちの朝、父の背中に向って挨拶をした。
父は、振り向くこともなく「おう、気をつけてな」と小さく言った。
こんな別れも昔はあった。

山口師匠が、またまた快挙〜!こんどは一席〜♬


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鯉物語


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鯉が泳いでいるのを見ると爽快な気分になる。ここには男の子がいるんだな、と昔はよくそう思って見上げていた。ところが最近は、子どもが家を出ていってしまい、余っている鯉のぼりを自治体に寄贈しているケースが多いらしい。つまりたくさんの鯉が河の上を泳いでいるという地区は、過疎化が進んでいる!?・・・ちょっと寂しい鯉の物語があるのだ。


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人間関係


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近づくとすぐ逃げるニホンカワトンボ


家人から、それは気象病ではないかと言われた。ここ数日、気怠くて何をするにも集中できない。ググッてみると、該当する症状があった。気圧の変化によって音が聞こえ難くなる、腰痛が始まるなど。不定期的定期の腰痛は気圧の変化だったのか(発見)・・・おまけに風邪の症状・・・
あ〜どこかへ逃げ出したいなあ〜と思っていたら、「人間関係が辛くて逃げ出した」の新聞記事を目にした。

パワハラが騒がられている昨今、弱者へのいじめが記事になることが多い。刑務所は見えない空間であるだけに、もしやの想像も広がって、脱走くんへの同情が生まれてきた。

人間関係  俺も逃げ出したいような  (朝日川柳)



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三連休の中日に風邪の症状がでた。腰痛も重なってしまい、哀れなおっさんとなる。咳をすると腰周辺が激しく痛むので、グッと我慢をする。しかし咳はワガママ、大人しくしてはくれない。仕方がないから「コホコホ」と芝居がかった咳をすれば、それが誘い水となり、我慢の限界が一気にやってくる。
ままよ〜!痛みは慣れだ、と、おもいっきり咳をする。と、痛みが脳天に突き抜ける。
そんな一日を過ごして、体力をかなり消耗した。