2013年1月

根気力


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後楽園ドームでキルト展を観てきた。毎年感じることだが、どの作品からもとてつもないエネルギーが伝わってくる。多くが縦横2メートル以上の作品ばかり。様々な色や柄の布に、糸が細かく無数に無尽に走っている。この根気はどこから来るのだろう。大作の前では、そのスケールと細やかな手仕事に打ちのめされ、ため息が出て、頭が下がる。


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とくにこの作品のコメントを読んで驚いた。「70才を機に、思い出の多い故郷の風物を作品にした」とある。もうキルトは生き方そのもの、作家の魂もキッチリと縫い付けられているのだ。根気は日本人が育んできた心の一つ、そう思った。
それに比べて「アベノミクス」のなんとお手軽な経済政策なこと。余り布を活かして時間をかけ縫い付けてきた先人の技を思うとき、二世ボンボン政治家たちの目先に走った「いまがよけりゃ策」に危うさを感じてならない。


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グランプリの作品


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その一部!ビルのラインは全て糸だ


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葉っぱ一つひとつへの優しさ・・・虫喰いもあるぞ



茨木のり子


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図書館である本を探していたら、詩歌の本棚で「茨木のり子の家」という一冊を見つけた。隣には以前二度ほど借りた「倚りかからず」があるのだから、きっと長く留守をしていたのだろう。心をときめかせて本を手に取る。想っていた人が突然現れた時のような空気がフワッと包む。シンプルな表紙。じっくり眺めてから、最初の一ページを開く。彼女が使っていた眼鏡の写真が絵画を思わせるような色調で飛び込んでくる。前半は写真集。彼女の家はやはりこんなだったのかと思わせる、モダンな室内と趣味の良い家具や食器の数々、そして自筆の原稿・・・。この家からあの凛とした詩のいくつもが生まれたのだ。亡くなる前に書かれていた詩「遺書」に目を通せば、先月に亡くなられた歌会の先輩Iさんと重なり、胸が痛んだ。



「遺書」

このたび私'06年2月17日クモ膜下出血にて この世におさらばすることになりました。

これは生前に書き置くものです。

私の意志で、葬儀・お別れ会は何もいたしません。

この家も当分の間、無人となりますゆえ、

弔慰の品はお花を含め、一切お送り下さいませんように。

返送の無礼を重ねるだけと存じますので。

「あの人も逝ったか」と一瞬、

たったの一瞬思い出して下さればそれで十分でございます。

あなたさまから頂いた長年にわたるあたたかなおつきあいは、

見えざる宝石のように、私の胸にしまわれ、

光芒を放ち、私の人生をどれほど豊かにして下さいましたことか...。

深い感謝を捧げつつ、お別れの言葉に代えさせて頂きます。

ありがとうございました。




*2月19日に訪ねてきた親戚が、死亡しているのを発見した。


冬のアベリア


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おお〜もう花が咲いている。と思ってよく見ると、雄しべ雌しべがない。何だろうと思っていたら・・・待てよ・・・ついこの前まで、これに白い花が咲いていたではないか。もしかしたら、これはガク!? そうだ、アベリアだ。
花が落ちて、この淡紅色のガクだけが残っているのだ。開花期間が半年以上もあって、その後もこんな色で楽しませてくれる。まさに生け垣の王者!。乾燥に強く、虫がつかず、汚染に強くて肥料なしでも良く育つ。
あ〜こんな相棒が欲しい。


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花が咲いていると、こんな


それ好いカモ


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どんなひそひそ話をしているのか。「まだまだ寒くなるのカモ」「なら、雪見ながら温泉が良いカモ」「トーゼン熱燗カモ〜」なんて言っているのだろうかと、カモを見ながら雪の景色と旨い日本酒を想う。JRの車内誌に載っていたハタハタ鍋のグツグツ写真が時折、頭をよぎる。カモも好いがハタハタのホクホクが舌の上で踊る。


陽気に誘われて


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沈丁花の蕾がもうこんなだ。いったい寒いのか温かいのか、分からなくなる。日が当たってスイッチが入ってしまうと、一気に開花がすすむのだろうか。まだ椿の蕾を見かけるというのに、何となく不思議だ。こちらも陽気に誘われて、思わず手にしたのがこれ。どんな味を想像しますか?



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居るだけで、食べるだけで・・・


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「男は喰いもののことでガタガタ言うな」と作家伊集院静が言っていた。なるほどと思い、ブログにもほとんど料理のエピソードなど書いてこなかったのだが、好い店を見つけた時は自慢したくなる。野菜のおいしさを引き出す料理を好むようになってから、最近薬膳系のランチをときどき楽しんでいる。そして偶然見つけたのが、渋谷駅に近いこの店。隠れ家のようにビル街の一角にポツンとあって、デッキで食事する人にはストーブとブランケットのサービスがついている。選んだ料理は10種類ほどの野菜を蒸しただけのシンプルなもの。
旨い!
お店の名前は「daylight kitchen」。店主は音楽家でピアニストで・・・・。
よろしければ訪ねてみてください。今年一番の嬉しいお店の発見でした。


小石川後楽園−3/枝垂桜


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この枝垂桜が満開になると、どんなだろうと想像した。福島県三春の滝桜や京都祇園の枝垂桜ほどの賑わいはないだろうけど、花が流れ落ちるような様はさぞかし見事だろう。なぜ桜は人を魅了させるのだろう。多くの日本画家たちを引きつけ、花びらの一枚一枚まで丹念に描き上げさせた桜たちを思い浮かべた。



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小石川後楽園は、梅、桜、藤、そしてカキツバタ、菖蒲と初夏までの間に花が次々に咲き誇る。こんな食事処から枝垂桜を楽しめます。

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小石川後楽園−2


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園内には、ロウバイ、ヤブツバキ、冬牡丹などがひっそり咲いていた。ロウバイは梅林の奥にあるのでちょっと分かりにくい。多くの人が梅林の道を選んで通り過ぎていく。もったいない。このロウバイたち、雪を被って咲いていたのだろう。どの花も直射を避けるように下向きに咲いている。ほんのり甘い香りが、柔らかい日差しとよくあって、至福の時間をつくる。


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庭園は愛でる愉しみを優先して造られているので、生態が優先される植物園と比べると、伝わってくるものが違う。東大の小石川植物園の木々はどれものびのび。こちらは木々の手入れも常に目線。梅も当然、目の高さで花を楽しめる。咲き始めは二月に入ってからだ。


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日当りの良い場所に冬牡丹が咲いていた



小石川後楽園


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氷が融け、雪を挟んでの映り込みが、冬ならではの景色をつくっていた


小石川後楽園を訪れるのは、35年ぶりくらいだろうか。周辺をひと回りしてみると、記憶に残っているのは日中友好会館だけで、それさえも大きなビルに変わっている。昔は低層の建物が並ぶなかに、ひっそりとこの公園はあった。当時この近くに印刷所があって、試し刷りが上がるまでの待ち時間を使い、園内をぶらつきよく本を読んでいた。たしか入園料は無料だったはずだ(と思う)。歌会の先輩Sさんが、最近ここを褒めていたことを思い出し、大寒の昨日、暖かくして訪れた。


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こんな茶屋がいくつか立っている


江戸の初期1629年水戸徳川家の中屋敷として造られた庭園で、二代藩主である光圀の代で完成した。中国の庭園様式を取り入れ、園名も「岳陽樓記」という書にある「天下の楽しみに後(おく)れて楽しむ」からつけられた。国の特別史跡と特別名称という指定を受けている。


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ボランティアガイドが分かりやすい説明していた


入ってその広さに驚いた。あの頃ちゃんと歩いたのだろうか。お隣の東京ドームの約三倍の敷地面積だというのも初めて知った。総ての道を歩いたわけではないが、撮影をしたりバードウォッチングしていたら、なんと園内を約二時間も歩いていたことになる。
景色を見て感心したことが一つあった。金沢の兼六園と同じように雪の降ることを計算し、主だった木への配慮が、冬の景観をさらに美しくさせていたことだ。それは、命が眠りにつく冬の厳しさと静けさを、上手に受けいれようとする先人たちの知恵なのだろう。人の少ない冬の公園歩きはなかなか楽しい。


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どうしても周辺のビルが池に映りこんでしまう


入園料は大人300円。65才以上は150円とリーズナブル。席亭「美都屋」の松花堂弁当は、18種類のお惣菜が入って、お値段がなんと630円。窓辺で景色を見ながらのお味も素晴らしく、おすすめ。


山茶花


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タイミングがずれてしまい、お蔵入りしそうな写真を救済しました。山茶花です。さて椿との違いはどこなのか。見るたびに思います。まずは開花時期が違う。山茶花が終わって椿。そしてパラパラ散るのが山茶花で、ポトリが椿。ここまでは誰もが知っている。
大胆な違いとしてこんな識別法があった。原則として山茶花は白花で、椿が紅花。本当かね〜。まあ原則としてだから、良いのかな。山茶花が散り始め、固かった椿の蕾も少しほころんできました。寒さが遠のく頃、一気に開花しそうです。




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さてこの年賀状ですが、もなかの使用のお礼を添えて、森八の女将にこれを送っていたところ、一昨日に返事がありました。「今年もなか良く お願いします」。この蛇玉マークは森八のロゴマークにもなっていて、388年の歴史があるそうです。



コブクザクラ(子福桜)


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白い八重の桜を見つけた。表示に目をやるとコブクザクラ。花びらの真ん中に切れ込みがあるのが特長で、この桜も冬と春に二回咲くとあります。なんでこんなハッピーな名前がついたかというと、一つの花から二つ以上の実ができる(子宝に恵まれる)そうで、そういえば雌しべが二つある(ように見える)。


「文展から日展へ」


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山種美術館で奥田元宋と高山辰雄二人の生誕100年を記念する作品を観てきた。雪の到来があったので一日遅れの報告になってしまったが、味わいの深い日本画展だった。この二人の画家にはいくつかの共通点がある。日展ではお互いがライバル同志、そして90歳を超えてもなお描き続けた情熱。もう一つは、描くことの思いを伝える言葉の素晴らしさだった。対象を見つめ、とらえていこうとする心は、そのまま歌作りと重なる。
髙山は「命あるものの、何をしたいのかを、絵の上に探している」と語り、奥田は「対象をありのまま描写するのではなく、心でとらえた姿を描く」と絵への思いを表現している。
そして嬉しくなる奥田の言葉を見つけた。「旅にあって、雨に遇えば、それもまた良し」。また雨かと愚痴っている山男には、珠玉のような助言として、沁みた。


雪の日


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ここからの景色を追ってみます


今日の空は、降り積もった雪の光を受けて、いつもより青く見えます。昨日は成人の日だというのに、まあよく降りました。この雪で喜んでいるのは、たぶん子供たちと歌人たちだろうなあ〜と思いながら、降り続く雪を眺めていました。皆さん良い歌が出来ましたでしょうか。
昨年は、定点観測に迎賓館前を写してきましたが、今年は桜の名所である神田川のこのポイントを選びます。ここはときどきテレビのロケにも選ばれる場所で、にっくき三浦百和(ももかず)と市毛良枝さんのワンシーンのために、アササンのコースを変えられてしまった曰く付きの橋です。一年間、楽しみましょう。



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山茶花に水分の多い雪が・・・


モダンアート


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このトリミングだから良いんだろうなあ。もしこの柄を、壁紙にすると圧迫されるだろうなあと思いながら、仰向けになって大腿四頭筋の筋力アップ運動をしていた。これはプラタナスの樹皮。ときどき顔を寄せては、この不思議な色合いと柄のカタチに感心する。ちょっと斜めにするだけで、雰囲気が変わるでしょ。プリントしてピシッと額裝すれば、お洒落なモダンアートになるかも。


十月桜


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十月桜がまだ咲いていると思ったら、この花も開花期間が長い。3分の1の蕾が10月頃から咲き始め、残りの3分の2は春に咲く。つまり一年に2回楽しめる。花は春に咲くほうが少し大きいらしい。秋から冬にかけて「季節はずれに桜が咲いてるな」というときは、この十月桜であることが多い。
ただこの寒々しい時期に桜の花を見ると、健気さを感じてならない。



ミツマタ(三椏、三枝、三又)


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新宿御苑で見つけました


珍しい花を見つけた。ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木「ミツマタ」。花というより木なのかな。「コウゾ、ミツマタ」のあれです。調べると「中国中南部、ヒマラヤ地方原産。皮は和紙の原料として用いられる」とある。名前の由来は、枝が必ず三つに分かれるところからつけられ、三枝、三又とも書く。たしかに枝が三つに分かれている。
この花も春を待ち切れないように、蕾が膨らんでいる。一斉に咲く姿を万葉歌人は「サキサク」とよんだとか・・・。


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花が咲くとこんなです


枇杷の花


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寒さのなか、枇杷わの花が咲いていた。植物にはあえて厳しい環境で生育することで、競争相手や天敵を減らし、生存率を高めようとするものがいる。枇杷もそうなのだろうか。
枇杷の花は、11月くらいから咲き始めて、3か月から4か月と極めて長い期間ゆっくりと咲き続ける。寒波が襲っても、生育が揃っていなければ、蕾や花や幼果を混在させることができる上、その被害を最小限に抑えることができる。マンボウやウミガメの生育率はかなり低いが、枇杷も実をつけるのはわずか3%だ。虫のいない寒くなる時期をなぜ選んで咲くのか。詳しい解明はされていないようだ。


明けましておめでとうございます



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々木の国立オリンピック記念青少年総合センター


いつもと変わらぬ夜明け。なのに、私たちは願いを込めて新たな始まりを期待する。人生という旅路の茶屋で一区切りをつけたら、次の旅にスタートだ。
どんな出会いがこの先に待っているのだろうか。今年もお付き合いください。