2021年8月

北斎づくし


DSC_2443.jpg

葛飾北斎といえば、富嶽三十六景。江戸のスーパースター浮世絵師のイメージを持っていたが、この「北斎づくし」を見たら、それどころではないと知った。

卓越した描写力は、森羅万象、この世に存在するもの全て、いや存在しないものまで、描くに描いたり、その数三万余点。前半生の「北斎漫画」で画家としての地位を築き、その後のシリーズは江戸っ子をとりこにし、絵画ブームを巻き起こした。

自然への畏敬、ユーモア精神、人生の讃歌、あらゆる全てを描きたかったのかもしれない。
改号すること30回、転居すること93回。90歳の最後まで描き続けて、「後五年生きられたら、本当の絵描きになれたことだろう」と云ったとか。

どの作品にも魅了されて、足も目もショボショボ。気がついたら二時間半が経っていた。今後これほどの規模で北斎を観ることはできないかもしれない。おススメです。

・〜9/17まで。六本木ミッドタウン・ホールで


P8280020.JPG
DSC_2420.JPG
DSC_2430.JPG
DSC_2436.jpg
「富嶽百景」シリーズでは、富士山が意外なところに隠されている

自助


P8240090.jpg

巡り合わせというか、偶然というのか。国立競技場の観客席のカラーリングは、オリパラの無観客を予測してデザインされたわけではない。しかしながら、賑わいを感じさせる客席の色使いに見いってしまう。

あちこちで賞賛されるたびに隈健吾氏は、苦笑いをしているのではないか。

この人の言葉も巡り合わせというか、偶然というか、この禍を予測をしていたかのように、輝きだした。

「自助・共助・公助」。

災害発生時からの避難者のあり方を語ったはずが、この言葉で、この人は勢いは失った。意外に冷たい人なのではと思われ、その後の読みも戦略も、ことごとく外れてしまったが・・・

ところがである。コロナの感染状況が悪化し、脆弱な医療体制が露呈してから、この人の「自助」が、皮肉にもフォーカスされる。言い当ててしまったこの言葉が、憤りとともに沁みてくる。

地域にも、そして国にも、守ってもらえないの「自助」。


暑い・・・


P8240022.JPG
ハグロトンボの雌


今週は暑くなると聞いていたが、まあ暑いこと。しかし世界を見ると、45度以上の地域がいくつかあって驚いてしまう。そんな暑さに耐えられるのだろうか。ニュースでは、ギリシャやトルコの森林火災が、なかなか終息しないと伝えていた。そして日本近海でも海水温も上がり、大雨が長く続いているし・・・。

すすむ温暖化、土地の荒廃は、農地にダメージを与えている。世界の農地では地下水が枯渇し、食糧危機はゆっくりと始まっている。NHKスペシャル「2030年未来の分岐点」では、10年後の日本もその影響を受けるだろうと予測していた。

今のうちに枝豆でも沢山食べておこうかな〜。

書き順


P8240056.JPG

長く書き順を間違えていた漢字がいくつかあって、それを正してみると、意外にも上手く書けることに気づく。たとえば「飛」の字。みんな間違いなく書けるのだろうか。

まるで迷路のようで、一度では覚えられないが、正しい書き方を覚えるとイキイキした字に仕上がって、一人悦に入る。

ところが、この字の書き順だけは、どうしても納得がいかない。

「必」。

この字を間違いなく書ける人は、少ないのではないか。まさかの書き順に驚愕すること必至だ。お試しあれ。



DSC_2259.JPG

いま一番の贅沢は、マスク無しで風を浴びることではないか。沢から吹き上げてくる風を吸い込み、汗したカラダを晒す。ヒンヤリと抜けていく風が、カラダを浄化いく。

コロナ禍になる前から、幸せの一つは「風の中にいる」と決めているから、山頂での風は格別だ。心身が開放されていく。

おもいっきり欠伸をする、クシャミをする、口を開けて笑いあう、そんな当たり前の光景はいつ来るのだろう。

キャラメル


P8220006.JPG

コンビニの小さな棚に「北海道コーナー」を見つけ、故郷のお菓子をつい衝動買いした。

この中でも懐かしいのが千秋庵の山親爺。これを齧りながらお茶しようと思い、自慢しながら家人に渡すと

「まあ、このに暑いときに、キャラメルばかりを沢山買って・・・」。

・・・・。

まあそう言わずに、この富良野メロンキャラメルをお一つ、どうぞ。


慣れ


IMG_20210821_150929.jpg

「病院でなんか死にたくない、我が家で、畳の上で死にたい」。昔、そんな話があったのを覚えている。ところがコロナ禍にあって、それが叶ってしまう現実となった。

ギリギリまで耐えて自宅で待つ、もしくは乗り超えるよう当局からのお達しが出て、感染者も非感染者もドキドキの状況だ。これは静かな医療崩壊ではないか。

いずれマスコミが「本日のコロナ感染者・自宅死亡者数」を報道する・・・。

でも人は、その数字にも慣れてしまうのだろう。

親バカ


汐美2.png

美しい人


P8190002.JPG

朝刊に「茨城のり子」の短い詩が紹介されていた。これは詩だろうか、愚痴だろうか。

言葉が多すぎる
というより
言葉らしきものが多すぎる
というより
言葉と言えるほどのものが無い

そしてつぶやく。

さびしいなあ
うるさいなあ
顔がひんまがる

と。

今の日本を見据えていたようなメッセージではないか。正直にこんなことを言える人は、そうはいない。もし身近にいたら、きっと好きになってしまうだろう。

言葉をきちっと扱える人は美しく、聡明に見える。そうではない人が、あまりにも多い世の中だから。

国のトップは、堂々と自分の言葉で、語ってほしい。言葉の深い意味を勉強をせずに国政に上がってきた人が、あまりにも自信無げに言葉を扱っている。



シルバー文庫


P8170152.JPG

突然のスコールがあった。新宿通りを見下ろすと景色は灰色になり、向かいのコンビニの前では、雨宿りの人たちが数人、車道を見つめていた。
雨は直ぐに止んで、何もなかったかのように、日が注ぎ始めた。昔はこんな夕立がよくあったことを思い出す。

届いていたスマートレターを開くと、太宰治の「走れメロス」の文庫本一冊とキーホルダーが出てきた。すっかり忘れていた。歌友が「シルバー文庫」なる出版を始めたというので、クラウドから応援させてもらっていたのだった。

目次には「走れメロス」「駆込み訴え」「富嶽百景」「親友交歓」。どれも高校時代に読んでいた小説ばかり。懐かしい。

大きな活字の「シルバー文庫」。一ページには、たったの9行。凄いインパクトだなあと読みすすめると、童話のようにスイスイとページが進む。小さな文字が苦手の人たちは、どんな印象をもつだろう、などと思いながら「走れメロス」を一気に読み終えてしまった。

世の中の多くの人たちに、この文庫が知られると良いなと思う。
志を持って前を進もうとする人を応援したい。その思いは変わらない。

トマト


P8140147.JPG

こんなにいらないよ〜。畑を趣味にしている札幌の弟からトマト、ピーマンなどがごっそりと届いた。すでに完熟しているミニトマトを選別し、湯剝きして蜂蜜漬けに。

リタイアしたら、やりたいことの一つが畑。弟は、仕事を持ちながらも、庭で野菜を20種類ほど作っていて、今年は成長が早く、採っても追いついていかないよ〜とこぼす。命あるものとの暮らしは、羨ましい。

サラダ、オムレツ、肉と煮たり、カレーにしたりとしばらくは、トマト健康生活。
ありがたい。

競歩


P7250516.JPG

炎天、燃ゆるばかり。こんな暑い中を、なぜ人は50キロも歩かねばならないのか。朝、六時過ぎにテレビを付けたら、もう男子競歩50キロレースが始まっていた。

急げ急げ急げ・・・と歩くフォームは独特だ。どちらかの足が地面についていること、そして着地時には膝を曲げてはいけないという、二つの約束を選手は強いられる。

2キロごとに許される給水場では、どの選手も頭から水を浴びていた。我々が走るスピードよりも速く、50キロを四時間を切るスピードで歩き抜ける。だれが考案したのか、定かではないらしい。

目が慣れてくると、札幌の懐かしい景色が見えてきた。三越のマーク、大通り公園、テレビ塔、狸小路、路面電車の線路・・・故郷の風景は、なんだかよその街のように見えた。
この街を飛び出してからすでに半世紀が過ぎたのだ・・・。

独走!?していたポーランドの選手が、国旗を掲げて、ゴールに向っていた時、開高健の言葉、「悠々として急げ」を、ふと思い出した。

IMG_1383.JPG

タトゥー派


IMG_20210725_175445-1.jpg
佐久間象山や与謝野晶子も入ったという熊の湯


オリンピック競技を見ていて気づくのは、タトゥーを入れた選手の多いこと。ほとんどの競技で彼らを見かける。そのなかでもよく見かけるのが五輪マーク。出場の記念に、あるいはメダルを目標にと、手首や足、肩、そして腕に彫ったのだろう。

タトゥーはオシャレという感覚から取り残されている世代なので、どうしても違和感はぬぐえない。いまやそれは、少数派からタトゥー派にならんとしている。

本心


P8020004.JPG

平野啓一郎の最新長篇作「本心」を読了した。
2040年代を生きる、母を亡くした一人の青年の物語だ。AIによって再現された「母」によって、その悲しみと孤独の慰めを得ようとする。母の情報を学習したヴァーチャル・フィギュア(VF)が、「自由死」を願い続けた母の「本心」を語ることを、恐れつつ期待しながら、やがて母の死後、初めて知ったその人間関係が、青年の心に大きな変化をもたらしてゆく。

「本心」とは何なのか?私たちは一体、何を感じ、考えながら生きてゆくのか?「本心」について考えることは、社会全体について考えることかもしれない。
格差とは、バーチャルを求めて生きる意義とは、・・・。

途中、亡き母の姿が何度も立ち上がった。もはや叶わぬことだが、もっともっと話すことで、ともにいまを生きることができたのかもしれないと、後悔も生まれた。

モウセンゴケ


P7250452.JPG

雨上がりの湿地、こんなに沢山のモウセンゴケを見たのは、初めてだった。キラキラして見えるのは、葉先からでている粘液だろうか。

毛氈を敷きつめているように見えることから命名されたが、じつはモウセンゴケ、苔ではなく種子植物。

葉の表面に線毛が生えていて、その先から甘い香りの粘液を分泌し、小さな虫を捕まえ、溶かして消化吸収してしまう食虫植物。

栄養分が少ない湿地だからこそ、こんな適応の仕方があるんだ〜としばし、そのファンタスティックな姿に見とれた。


P7240365.JPG
指で突つきたくなるほど、妖しく魅力的なオレンジ色の線毛