2020年7月

バランス


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経済か、感染か。バランスを失っている天秤ばかり。秤の左右は「経済」と「コロナ感染」。「経済」の皿に「GO TO キャンペーン」の分銅を加えて、バランスをとろうとしたが、東京都の分銅が抜かれてしまった上、感染者がどんどん増えて、傾がっていく。

バランスをとっている「我慢」の小さな分銅たち。いつまで耐えられるか。何か妙案はないものだろうか。



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ムラサキシキブが蕾をつけはじめた


雨が
空から降れば
思い出は
地面に
しみこむ

このフレーズが好きで、今月は何度も口ずさんだ。
でも空よ、もう雨は、勘弁してほしい。
蝉もとうとう我慢できなくなったぞ。

小室等が歌っていたので、ずっと彼の詩だと思っていたら、作詞は別役実だった。

─雨が空から降れば
─思い出は地面にしみこむ
─雨がしとしと降れば
─思い出はしとしとにじむ

─しょうがない
─雨の日はしょうがない
─公園のベンチでひとり
─お魚を釣れば
─お魚もまた雨の中

童話作家らしく、なんともメルヘンで温かい〜♬


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誕生日


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本日は、恥ずかしながら、誕生日。毎年、これといった自覚も感慨もなく、一日が終わっていく。今日もそうに違いない。

いま何合目にいるのか、分からないけれど、ここまでの道がずいぶん早かったような気がする。導かれるままに、見えない山頂を目指していきたい。


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下駄


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山から下りて、久しぶりに下駄を履いた。桐の下駄だろうか、とても軽い。鼻緒から微妙な圧が加わって心地がいい。子供の頃、夏は下駄と決まっていた。若乃花、栃錦などの横綱名が書かれていて、子どもたちは、いざ履く時に自分の下駄が直ぐに分かった。

10年以上も下駄を履き続けると、親指と人差し指の隙間が大きくなり、どちらの指も逆三角形のカタチになった。新しい下駄の鼻緒に無理矢理、指を差し込んだときの感触を思いだす。最初は馴染めないのだが、いつのまにか指とフィットし、足の裏が吸い付くようになった。

石ころだらけの道を走り回っていると、稀に下駄が割れた。割れ目に肉が食い込み、悲鳴が上がる。紐などで結んで、足を引きずりながら帰ると、父は下駄の裏から添え木を当てて釘を打ち、修復した。歩くとその下駄が重かった。モノを大切にする精神を足の裏も学んでいた。


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前日の山行を思いながら、朝の山を眺めるのは至福の時間


恵那山(2)


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撮ってきた写真をチェックしていると、ガスっていたこともあって恵那山の写真が少ない。前日歩いた麓の池、下りてきてからの宿の周辺ばかりだ。人が少なかったこともあり、Sさんと近景、花や虫たちを多く撮った。


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自分たちのささやかな世界を守りながら生きている花や虫たちを見ていると、こうした小さな命こそが、おおいなる自然を内包しているではないかと思えてくる。


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アサギマダラは、フジバカマ、ヨツバヒヨドリなどの蜜を吸って、体内にアルカロイド系のフェロモンをつくり天敵から補食されないようにしているという。
もうすぐ南へ数千キロの旅を始めるはずだ。


恵那山(2191メートル/日本百名山90座目)


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前泊した萬岳荘は、ログキャビンの清潔な山小屋だ


恵那山の山地図を買ってから五年が過ぎた。眺めてばかりでもしょうがない、そろそろ登ろう。アプローチは長いが、危険の少ない神坂峠からのコース(往復約11時間)を選び、福岡の友人Sさんを誘った。二つ返事があって、計画が進み、梅雨の晴れ間の二日間、久しぶりに手応えのある山行を楽しんだ。


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夕食はちょっとリッチに


出発地点の標高が1600メートルで累積標高差1300メートル。つまり登りと下りで、それぞれ約1900メートルずつ。早寝をして、朝3時半に起床し、簡単な食事をして四時過ぎに出発。


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少し登ったところで素晴らしい朝焼けが始まった。二人でしばらく眺める。朝日は生きていることの実感そのものだ。森と笹尾根の道を辿りながら、6つのピークを越えてゆく。湿度がハンパナイ。水分をいくら補給しても滝のような汗が流れる。五時間程歩いても霧がかかった山はピークをなかなか見せてくれない。いつになったら表示が出るのだ!とストレスが溜ってくる。


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こんなピークを6つ程、越えてゆく

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霧がかかった森は山水を思わせる幽玄の世界


見上げた先にうっすら空が見え、やがて分岐の表示が出た。ここから30分で山頂とある。遂にここまで来た。6時間。よく歩き通した。
Sさんもかなりバテている。帰りは大丈夫だろうか?

山頂を極める前から、二人、帰りの心配をする。また同じ道を下りてゆくのか・・・山頂は、霧の中。樹々に囲まれ眺望もなし。何年もかけた恵那山、こんな感じなの?
しかし、これだけ歩けたことに満足感はあった。Sさんも「自信が持てました」と至極満足げだ。

三時過ぎから雨予報になっている。昼食をササッと済ませ、下山を開始する。もう何も考えない。足元に神経を集中し、無事に二人で下りる。Sさんに声をかけて、気持ちを切らせない。ピークを2つ残したところで雷が鳴り出した。ゆっくりと鈍い音が近づいてくる。


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遠くに中央アルプスから南アルプスまでの山々が見渡せる


突然、ポケットのスマホが鳴った。萬岳荘の管理人Hさんだ。「雷が鳴り出したのでロープウェイが止まりました」。えっ?下りれないじゃん!「車で峠まで迎えに行き、下の宿まで送りますから、用心して下りてきてください」。

なんと親切な〜。前日の夜、共通の山の友人がいることが分かり、多いに気持ちを通わせたからだろうか。ありがたい。ヘトヘト、ビショビショになりながら、彼の車に迎えられ、シートに沈んだ。
Hさん、ありがとうございました。この山で出会えて、本当に良かったです。

宿に着いて、風呂上がり、乾杯のビールの美味かったこと。ク〜と、しばし絶句・・・


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センジョーコースイタイ


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「センジョーコースイタイ?」。初めて聞いたとき、その言葉をかみしめていると「戦場香水隊」なる字が浮かんだ。いやいや違うだろう。「線状降水帯」。不謹慎なこと、この上もないのだが、ときとして違う言葉が浮かんでしまう症候群なのだ。

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Uber Eatsのバッグを背にした若者の自転車が、坂をかけ上がっていくのを見ると「奪〜it」と口にする。現代のピンハネ奴隷制度ではないのか?と思えたりして、つい言葉の不思議世界に入り込んでしまう。

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先月からの晴天率は例年の半分以下だという。太陽の光が恋しくなるくらい、雨の日が続く。雨をうける花たちの写真を整理していると、この雨は花たちには必要なのだと思えてきた。

メロン


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ひょんなことからメロンに牛乳、そしてアイスクリームを入れて食べることになった。

話は半世紀前に遡る。茅ヶ崎の加山雄三の家(正しくは上原謙邸)に遊び来た、高校生の加瀬邦彦(ワイルドワンズ)に、若大将は「お前に上手いものを喰わせてやる」と、高級メロンを二つに切り、種を取って、牛乳を注ぎ「こうやって喰うと美味いんだ」と食べ始めた・・・。

そんなエピソードが収められているYouTubeを静岡の友人Sに転送したところ、しばらくしてメロンが届いた。「我が地はメロンが特産品、君もぜひ試してみたまえ」「牛乳もいいがアイスクリームもいける」と。


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家人は「もったいないこと」と呟いたが「至極の贅沢〜〜」と、まずは大きなスプーンでメロンを削ぎながら、牛乳と一緒に口に含む。「ウ〜ム・・・イメージ通り・・・やや牛乳が勝るか」。続いてアイスクリームメロン。「これは美味い!どちらも美味い!!しかし・・・なぜ混ぜなくてはいけないのか?」。

加瀬邦彦、享年75歳。贅沢なメロンを口にしながら、いつも笑顔だった彼のことを思いだしていた。

お時間のある方は、ぜひどうぞ ↓

生き物の死にざま


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「生き物の死にざま」。このタイトルに惹かれた。ここには29種類の生き物の一生が紹介されている。著者は生物学者なのだが、科学的な解説だけにとどまらず、子孫を残すために懸命に生きる全ての親たちに、哀切の筆運びでその一生を讃えている。

たとえばカゲロウ。成虫になったらわずか数時間のうちに死んでしまう。この間に子孫を残さなければならない。ところが空に水の中に捕食者たちがいる。次の命のバトンのために考えた策は、途方もない数で一斉に孵化し、数時間で子孫を残すという方法だった。

その他にも生まれた幼虫たちに我が身を捧げるハサミムシ、不老不死のベニクラゲ、老化しない奇妙な生き物ハダカデバネズミなど、不思議な生き物たちを紹介している。

死にざまとは、まさに生きざまの裏返し。読み終えて感じたのは、人間もまた命という普遍のプログラムの中を生きているということ。死すべきは死に、生きるべきものは生ききる。私たちはその繰り返しをしていくだけなのだ。


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カナブン
カミキリ
カブトムシ
いくつになっても
甲虫が好き

雨の山


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ビールを呑みながら雨の白馬岳を振りかえる


一面の田んぼはまるで荒海のようだ。見えない魔物たちが緑を漕いでこちらに向ってくる。西からの風は、低い雲を押し流していく。二日間、山の中で雨音ばかり聞いていたら、さすがに心配になってきた。雨を集めた谷筋には滝ができ、凄まじい音を立てていた。山で一番怖いのは、風だと思っていたが、降り過ぎる雨はもっと怖いと知った。


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谷筋にはいくつもの滝が現れた

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犀川、梓川、千曲川は、やがて信濃川に吸い込まれてゆく



尾張藩


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箱根山麓には我々のためにパネルが用意されていた


「吟行・四季の歌会」は35回を迎えた。今回は新宿区内にある戸山公園と箱根山。コロナ感染者が一気に増えたこともあって、キャンセルが参加者より多くなってしまったが、参加者はガイドさんの話に聴き入った。

戸山公園は江戸時代、尾張徳川家の下屋敷のあった地で、広さは東京ドームの約10倍。明治に入ってからは陸軍用地として戸山学校が置かれた後、戦後はGHQが支配し、返還後は公園と住宅用地となり、今は公園を囲むようにして区の高層住宅が並んでいる。

ガイドさんの説明によると、当時屋敷内には御町屋(おんまちや)という小田原宿を模した通りがあって、鍛冶屋、米屋など37軒の店が並んでいたという。営業は、お偉い方が来た時のみで、尾張藩の侍が町人に扮してお相手をした。小田原まで行けない将軍家のためにそんな町屋まで尾張藩は造ったのだ。それだけではなく大きな池や滝、そして橋、馬場、茶屋、さらに富士山を遠望するための小高い山(いまは箱根山)まで造成した。

なんという尾張の財力と贅沢。もしかしたらこの下屋敷は、徳川家への忠誠を伝えるためのテーマパークだったのではないかと思った。


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歩いたのは広い公園の一部


鉄人


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雨にも痛みにも負けず・・・キヌガサソウ


鉄のように強靱な肉体や精神を持った人を「鉄人」に喩えられる。この花を見ていたら、球界の鉄人、衣笠祥雄を思いだした。キヌガサソウ。大きな葉に包まれるようにして、一輪の白い花がスッと首を伸ばして咲いている。こころなしか、茎が太い。これも鉄人っぽい。


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三週間前、北高尾の山で滑落した。昨年の北アルプスに続いて二度目の打撲。今回の方が衝撃と痛みは大きかった。首を強く打ってしまい、一瞬気道が閉じて息が吸えず焦った。ゆっくり手足の指を動かすと、問題なく動いたのでホッとした。

二週間続いた背中の痛みはようやく引いて、思った。
我がカラダは、鉄人ではない。


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花はやがてピンク色になっていく


サンカヨウ


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儚げ。こんな言葉が似合う花だ。雨をうけてサンカヨウの白い花びらは、見る見るうちに透明になり、ガラス細工のようになっていく。

ところが、水分を含んでしまった花びらは、脆い。風に煽られ、雨に何度か当たるとその一片はほろりと落ちる。花の命はわずか一週間くらい。だから、この花に逢うために、山にやって来る人たちがいる。



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木編に母と書いて栂(つが)と読む。標高二千メートル、雨をうけて栂の葉先が、ほんのり桃色に染まって丸く膨らんでいる。どんな花が咲くのだろうと、つい想像してしまう。

だが、ここから吹き出るのは、新芽。つまり新緑。蕾のようなカタチからは若葉が生まれていく。この時期、山に降る雨は、花ばかりではなく、樹々にも命の潤いを与える。


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降りんピック


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空しい横断幕が雨風に揺れている中野駅近く。先日、都知事選候補者四人によるオンライン討論会で、オリンピック開催の賛否が問われていた。
◯と×がそれぞれ二人。

いま口にしてはいけないようなオリンピック開催の是非。選手らを思うと、大きな声で「非」とは言えないが、出来るとは思えない状況だ。コロナ禍のなか、TOKYOへ世界の若者たちはやって来るのだろうか。

もしかしたら「出来ない・しない」のロジックを、関係者たちはもう練っているのかもしれない。ワクチン開発の動向を睨みながら・・・。


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家呑みが続き、ほぼ呑みつくしてしまった


裏返し


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知らなかった・・・。靴下は裏返しにしたまま洗濯をすると、臭いが落ちやすくなるだけでなく、靴下の傷みを抑えて長持ちするということ。説明書きには「洗う時はうらがえしにしてください」と表記されているらしい。裏返しに脱いでも問題なしという、じつに便利でありがたいお話。


変化の色


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アガパンサス、ムクゲが咲き始めた。そろそろ紫陽花は終わりだろうか。
この紫陽花、遠くから眺めていたら、白山山頂に咲いていたクロユリを思いだした。なにか侘び寂びの趣きがある。こんな種類なのか、それとも最後の変化の色なのだろうか。


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