2020年6月

短冊


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労働の手からこんな美しい字が生まれるんだ・・・


妹から五月に亡くなった伯母の短冊が送られてきた。享年98歳。これを詠んだのはいつ頃だろうか。耳は遠かったが、足腰は丈夫で、日高の浜で長男と孫の船を待ち、上がって来た魚を組合へ運ぶ、加工するなど、浜の仕事を長く手伝っていた。

若くして海で夫を亡くし、四人の子どもを育てなければならない時代があった。そんななかにあっても長女として母たち兄妹らへの気遣いを忘れなかったそうだ。おおらかで肝の座った人だった。

この歌は晩年の作だが、短歌は辛い時代の伯母を支え続けていたのではないかと思う。いつかゆっくり伯母の歌を読みに日高を訪ねてみたい。


女帝


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友人にすすめられて購読を決意したのだが、書店で手にとった時の重みに、一瞬、読めるだろうかの不安が生まれた。420ページ超の分厚さである。しかし、読み始めたら止まらない。著者の石井妙子さんの時間をかけた調査、取材、資料のまとめに裏打ちされた明晰な文章は、最後までページを開く手を止めさせなかった。

結論は、ぜひ読んでいただきたい一冊である。とくに都民の方には、投票前の必読の書だ。
どうして、この人の描く世界が完成してきたのか、関心、興味はその一点である。これ以上を今書いてしまうと、お楽しみが消えてしまう。後日に、また書いてみたい。


ツバメ


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大人になると口の回りの白色は消える


産毛が抜け始めているので、ヒナたちの巣立ちは間近かもしれない。四羽のヒナに両親は代わる代わるエサを運んでいた。末っ子らしき一羽だけ、ひと回り小さかった。


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フンガイせずに巣の下にはボードが設置されていた


八重咲き


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八重咲きの花を見つけると、四葉のクローバーを見つけた時のようなシアワセ感が生まれる。春のニリンソウ、この時期のムクゲ、そしてこのドクダミもそうだ。


野良の矜持


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ときどき無言のにらめっこをする神田川沿いに暮らす野良。群れず、媚びずに生きているキミはいつも堂々としている。その睨みにも敬意をはらっていますよ。


ロングトレイル


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北高尾は登山者が少なく、静かな山行を楽しめる


これで四週連続山登り。そろそろきつめの山登りをと思い、数年前から考えていた北高尾のロングトレイルコースに挑戦した。一気に急斜面を登った後は、アップダウンの繰り返し。徐々に息は上がり、後半はいささかバテた。ただ荒い呼吸をしながらも登りの斜面に馴染んでいくと、酸素と血液と筋肉が共鳴しあって痺れのような感覚が生まれ、思わずうれしくなってくる。

いい歳をして、こんなことをする歓び、分かってもらえないだろう。


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トラノオの花が咲き始めていた


コロナ維新


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地方の人から見ると、どうやら東京はコロナの危険地域として映っているようだ。地方の友人、知人らが上京をためらっていて、もう少し落ち着いてからにしますと云う。たしかに感染者ゼロの数字はなかなか出てこない。一桁の日が少しでも続けば、そろそろ大丈夫なのかなと安堵してしまうのは、大都市住人の麻痺した感覚ゆえか。

「コロナ維新」の入り口に立ったばかり。これからどんなことが起きていくのかと想像すれば、いよいよこれからが正念場かもしれないと思う。

淘汰と進化。人も仕事も社会もこの二つに向かっていくのだろう。嫌でも始めていかなければならない新しい生活とやら。何が消えて、何が生まれていくのか。コロナは様々な社会の歪みを露呈させた。多くの犠牲をはらいながらも意外とあるべき未来になっていくような気もする。

それを望むと望まざるに拘わらず・・・。


甲虫に夢虫


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甲虫の生態と前羽の独特な美しさに魅了されて、早?十年。浮き世をしばし忘れ、夢虫の世界へ。


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Oさん


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この時期、標高千メートルくらいの山々では、ハルゼミが鳴き始める。その鳴き声は、カエルのような声にも聞こえる。決して涼やかというのではないのだが、樹々の中から聞こえてくると、春が終わりを告げ、季節が初夏に向っていることを教えてくれる。

亡くなったOさんは、面白かった。森の中を歩いていると「この声はカエルですか」と聞くので、蝉なんですよ。ハルゼミですと答える。しばらく歩いていると「この声はカエルでしたか?」と聞いてくる。それを数回繰り返して、思ったのだ。

Oさんは決してからかっているのではなく、真剣にその鳴き声に魅了されているうちに、どちらだったのか分からなくなってしまうのではないかと。このハルゼミの鳴き声を聴いていると、Oさんの質問を想いだす。


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Oさんの古い友人Iさんの手にしばらく止まっていた


初夏・入笠山(2)


P6120190.JPGのサムネール画像
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雨上がり、カラマツに絡みついているのは、着生植物サルオガセ。待っていましたとばかりに、雨をいっぱいに吸い込んでいるように見える。雨の後でなければ、見られない目映い光景に出会った。

サルオガセは、霧のかかる森の樹々に着生して垂れ下がっている。宿り木のように他の樹々から栄養分を摂取することなく、水分と光合成だけで成長する不思議な植物だ。


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初夏・入笠山


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これから入笠湿原ではスズランが見頃を迎える


雨が上がり、スズランが輝きを増した。南アルプスの北端に位置する二千メートル峰、入笠山。山頂付近は、さまざまな初夏の花が咲き誇っていた。そのなかでも一際こころ惹かれたのはキバナアツモリソウ。菅笠を被った天使が草の中ではしゃいでいるようで、思わず微笑んでしまった。

眺望はいま一つだったが、山の空気は美味かった。ステイホームと言われれば、山に帰ってきたくなる。


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菅笠を被った天使のようなキバナアツモリソウ

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絶滅が心配されるホテイアツモリソウ

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こちらも絶滅危惧種のクマガイソウ


木蔭


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ここのベンチにはいつも誰かが座っている。アーチができた当初は、まだスケスケだったのに、いつのまにかノウゼンカズラが制圧した。五月から咲き始めて九月くらいまで、ポツポツと咲き続けていく。


クラフトコーラ


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アササンコースの神田川沿いにまた新たな名所ができた。世界初のクラフトコーラですって。若い人は、チャレンジ精神に溢れて素晴らしいな。若い人たちが並んでいて買えなかったけど、次はなんとか・・・。

近くには創業百年を誇るお団子やさん、自宅を改装したカフェなど、京都の銀閣寺に続く哲学の道のように、好い散歩道になっていくのかもしれない。


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伊良(いよし)コーラ


紫陽花を愛でて


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紫陽花を眺めていたら「照れワーク」の期間中、韓流ドラマ「愛の不時着」にハマっていたことを思いだしました。

この紫陽花、お隣では・・・

ハナビノスミダ。


給付金は手切れ金!?


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日本のこれからが心配になる話がいくつか入ってきた。皆さんこれでなんとか頑張ってくださいと配られている給付金は、じつは手切れ金なのではないのか。

取り敢えずは、今、なのだろうけど、原資をどんどん使い果たし、この先大丈夫なのだろうかと不安になる。税収の落ち込みに加え失業者・中小企業へのさらなる支援、毎年繰り返される災害への準備など、視野に入っているのだろうか。

この国の舵取りにはいつも不安を感じてきたが、お手上げ状態になったら「日本人は民度が高いから心配はない」とあの人は、また言うのだろうか。


萎縮生活


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テーマとは関係ありません。怖かった・・・


新型コロナウイルス関連の専門用語と赤のアラート光でバリアされている(ような気がする)。そして自粛を促されているうちに、いつのまにか萎縮していることに気付く。

新しい生活が求められ、当たり前だった日々は直ぐに戻らないかもしれない。まずは一年だろうか。

下宿人であるはずのウィルスが、大家の我らに目を光らせているという違和感が常にある。


手紙


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先月、不死身の人と思っていた伯母が亡くなった。98歳。五世代同居家族の長として幸せな人生を歩いてきたと思う。北海道の漁師に嫁ぎ、三十代で夫を海難事故で亡くした。浜の仕事を続けて、残された四人の子ども達を無事に育て上げた。

長男は中学校を出ると漁師になった。無口で無骨で笑顔の優しい、母親想いの従兄弟だ。長く漁業組合長を努めあげ、いまも浜では信頼されている。葬儀に出られない旨の手紙を書いた後に、残された叔母を思いだして、ペンを取った。

後日、その叔母から感謝の手紙がきた。「手紙を読んで涙が止まりませんでした。こんないい甥っ子をもって幸せです」と。末っ子の叔母ももう高齢だ。大家族のなかで育ち、今は独りぽっち、その心境はいかばかりか。

コロナ自粛の間に、途切れていた人たちに手紙を書いた。
喧噪から離れた静かな時間だった。


花時間


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花弁がクルクルッと巻きあがるウリノキ


ORMACのメンバーには植物に詳しいHさんがいる。毎回植物図鑑を持参してくれるので、だいたいの種類がそこで分かる。受粉の仕方、雄花・雌花の役割、近似種の見分け方など、フムフムと楽しい解説を聞いていると、生徒の気分になってくる。

今回は、ウリノキとタツナミソウを教えてもらった。どちらも初めて目にする花だ。ウリノキ(瓜の木)は開花すると花弁がクルクルッと巻きあがり長い蕊を垂らす。

タツナミソウ(立浪草)は字の如く「浪立つかのような花のカタチ」。花の姿を横から見ると北斎の冨嶽三十六景の中でも人気の高い「神奈川沖浪裏」を思いださせる。

たまには、あくせく登るだけでなく、花時間を楽しむのもいい。


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浪が立つかのよう〜いいネーミングのタツナミソウ



右手の人差し指の先がチクリと痛んだ。よく見ると少し腫れている。なんだろう、トンと記憶がない。目を凝らすと小さな点がある。棘?。そうか、週末の高尾山だ。山仲間にモミジイチゴを食べてもらおうと、薮の傾斜を上がり、採集している時にチクッとしたことを思いだした。小さな痛みを抱えるのも悪くないと思い、クスリを塗るだけにした。

タイピング時に手が止まり、この小さな一点に目がいく。触れるとズキンとする小惑星、なにかメッセージを送ってきているような気がする。


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野苺のなかでもモミジイチゴは美味い。口に放り込めば、爽やかな甘味が口に広がる。葉っぱの下に隠れているので、気がつかない場合が多い。

ハナイカダ


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自粛自主解除で登った一週間前の高尾山、すれ違ったのは一人だけだったが、先週末はかなり増えていた。日本人の多くはマスク姿だが、外国人はノーマスク。お国柄だろうか。
すれ違う時の挨拶「こんにちは」は、口だけを動かし、笑顔だけにした。分かってくれる人が多く、もしかしたら、流行るかもしれない。

緑のなかでの深呼吸の美味しさ。こんな当たり前の幸せを噛みしめた。自由に発言できる、息ができる。そして美味い酒が呑める。やっと山の会にも笑顔が戻ってきた。

コースの途中でハナイカダを見つけた。もう実になっている。誰が命名したのか、ハナイカダとはいい名前だ。雌花だけが実となり、黒く熟すると野鳥たちのエサとなる。


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下から見てもよく分かるが、実が野鳥に食べられると普通の木!?