手紙


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先月、不死身の人と思っていた伯母が亡くなった。98歳。五世代同居家族の長として幸せな人生を歩いてきたと思う。北海道の漁師に嫁ぎ、三十代で夫を海難事故で亡くした。浜の仕事を続けて、残された四人の子ども達を無事に育て上げた。

長男は中学校を出ると漁師になった。無口で無骨で笑顔の優しい、母親想いの従兄弟だ。長く漁業組合長を努めあげ、いまも浜では信頼されている。葬儀に出られない旨の手紙を書いた後に、残された叔母を思いだして、ペンを取った。

後日、その叔母から感謝の手紙がきた。「手紙を読んで涙が止まりませんでした。こんないい甥っ子をもって幸せです」と。末っ子の叔母ももう高齢だ。大家族のなかで育ち、今は独りぽっち、その心境はいかばかりか。

コロナ自粛の間に、途切れていた人たちに手紙を書いた。
喧噪から離れた静かな時間だった。


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