黒部五郎岳(2,840m/日本百名山89座目)


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黒部五郎岳の山頂直下で雷鳥の番いを発見、これは雄


黒部五郎岳を登頂した翌日、槍ヶ岳までのルートで、後半、気を失いかけるほど体力を消耗した。朝3時に黒部五郎小舎を出発し、槍ヶ岳山荘に到着したのは17時。14時間くらい歩いていた。酸素をいくら送り込んでも10メートルほどしか進まなくなってしまい、最後は気力を絞った。気力だけで1時間くらいは進むことを去年体験済み。

小屋になんとか到着して直ぐに慈恵医大の医師がいる医務室に向う。
「すいません、点滴をお願いします」と看護士に伝える。しかしすでに二人が点滴中。待っている間に、頭を打ったことを伝え、診てもらう。
「これ重症ですよ。パックリと肉が裂けている」。スマホで写真を撮り、切り口を確認。「直ぐに縫いますから、麻酔打ちますよ」医師二人、看護士二人に囲まれ、掴まれ、オペの始まり。

午前中、三俣蓮華岳の手前で派手に転倒し、岩に打ちつけられた頭部から嫌な音が聞こえた。後ろを歩いていた三人のパーティに助け起こされ、出血を伝えられた。岩に座り、全身をゆっくりと動かす。手足の四五カ所が痛んだが、骨は折れていなかった。帽子、パーカーがダメージを抑えたのかもしれない。頭からの血はしばらくして止まった。

「はい、縫い終わりましたよ」。ユーモアのある中年の男性医師が、ポツリ。「運がよかったですね。今日は外科医の当番だったから」「頭の打ち所が悪かったら、ヘリを呼んでいたかもしれない」。

槍には、いい医者がいると知っていましたので、気力でここまで来ました。
「嬉しいことを言ってくれますね」。二人で笑った。
礼をいい、医務室を出たとき、ヤバかった・・・と、震え上がった。


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こちらは雌、優しげだ


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