2023年5月

アジアンタム


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新宿御苑の側に「玉川上水・内藤新宿分水散歩道」がある。そこに沿って流れている小川は、玉川上水を経由してきた水と思っていたら、どうやら今は地下水らしく、その流れは大木戸辺りで暗渠の中に消えていく。

そこにアジアンタムが、水を求めるように群生し、育っていた。上京してすぐの頃、部屋があまりにも寂しいので、小さな鉢のアジアンタムを買った。

窓辺において欠かさず水を上げていたのだが、いつしか枯れてしまった。水の上げ過ぎだったのかもしれない。枯れても、捨てられずにそのままの姿を眺めていた。

それから月日が流れ、本屋である表紙に目を止めた。小説「アジアンタムブルー(大崎善生著)」。タイトルに心惹かれ、買って読んでみると、哀しく切ない恋愛小説だった。
この植物には、そんな想い出がある。

銀座百点


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珍しい小冊子を貰った。銀座百点。歴史のあるタウン誌で、創刊は1955年(昭和30年)。この表紙を見てすぐに思い浮かべたのは、向田邦子さんだった。脚本家、作歌として活躍される前、この冊子に書いていた「父の詫び状」が、後に出版され、テレビドラマとなった。

その後、池波正太郎の「銀座日記」、和田誠「銀座界隈ドキドキの日々」など、ベストセラーがたくさん生まれた。いまならSNSが発表の場となり、作歌としてデビューしていくのだろうか。

実力さえあれば、いずれ人の目に止まるわけだが、連載小説を小さなタウン誌で読めるという幸せな時代があったのだ。現在も100社以上の店舗と全国4000人以上の愛読者が、この小さな冊子を支えている。

寝違える


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二度寝したのが、悪かったのか。寝違えてしまい、首が上手く回らない(トホホ)。横を向くにも、見上げるにもカラダの支点を使わなければならない。情けなや〜。それをあざ笑うかのように強い風が、新緑を揺るがして美しい光を放っている。


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春のリンドウって珍しい。フデリンドウ、わずか1センチくらいなので、見つけにくい花。蕾が筆の穂先のように見えるので、その名がついたのだと思う。


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バイカオウレンに似ている。でも葉っぱが違う、詳しくは分からない。

甘利山


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週末、山の会ORMACのメンバーらと山梨県の甘利山、奥甘利山を登った。中腹まで車で上がることができ、富士山の眺望も良いということで人気のある山だ。

気温18度、快晴、微風という最高のコンディションのなか、ハルゼミの声を聴きながら、ミツバツツジと白樺を眺め、山裾から上がってくる涼風を浴びて、全員登頂を果たした。

登山口近くで、草履履き姿の女性が下りてきた。なんと93才だという。一同ビックリ。「疲れたとか、あそこが痛いなんて云ってられないね」と、強靭なその足腰にただ驚くばかり。スーパーなおばあちゃんだ。

先日の95才のベーシストに続いての鉄人。続けていくことが大切だと知った。


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いまカラマツの新緑が美しい

紙くずとならなかった紙くず


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チリチリの紙くずをボーゼンと見つめ、浮かんできた言葉が、酒上綾街(さけのうえのあやまち)。狂歌を嗜む友人の雅号である。

歌会の後の二次会が終わり、Kさんから受けとった横浜ベイスターズ戦のチケット(19日)をヒョイと胸のポケットに仕舞い込んだまま、気づかずに洗濯をしてしまったのだ。

紙幣とは違い、再生紙なので繊維も脆く触るだけで粉々、印刷インクの痕も残っていない。

再発行はできないということなので、透明人間が観にいくことになるかなと、案じていたら、雨が降り始めて中止となった。つまり紙くずとならなかった「紙くず」というわけだ。

これも一つの酒上綾街(さけのうえのあやまち)。気を付けよう・・・。

言葉


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ふと目を止めた。しばらく眺めて、いい広告だなと思った。なんだろう、石川さんの笑顔と左上のコピーのフィット感が、とても温かい。

そして右下の二行、選手とさん、今までとこれから、人と人の繋がりはこうでありたい。コピーを読んでいたら、目頭がちょっと熱くなった。

石川さん、いいスポンサーに応援してもらって良かったね。全農さん、いい選手を見つけ、応援してきた甲斐があったね。

先日紹介した、怪しい神宮外苑の広告とは、天と地ほどの違い。言葉は、どこで温かくなるのだろう。

発信〜


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と、掲載されるはずだった・・・


一昨日、朝日新聞の「かたえくぼ」に投稿しました。
神宮外苑の再開発のことが、頭から離れません。なにが「都民ファースト」だ!あれこれとモーソーが脹らみ、こんな風に採用されるはずと信じて送ったのですが、どうやらボツ。


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これは今日の「かたえくぼ」。るーちゃんに負けてしまいました。ヒネリが足りなかったのか、笑いを取らねばいけないのか。「モリは簡単に切れないだろう」、こうきたか・・・でも、捻り過ぎではないのか。
いずれにしても、これに懲りずに、発信をしていこう。

真夏日


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さわやかな風〜なんて思っていたら、今日はいきなりの真夏日。早くも体験してしまった。これから、どれだけ暑くなるのかと思うと、憂鬱になる。

四谷の土手からグルリと眺めると、年を追うごとに、東京の街がビルの森になっていく。海からの風は、ビル群に遮断され、東京の気温は上がっていくばかり。

「ヒートアイランドシティー東京」。この街の首長が好きな横文字、これからは、これを自虐的に掲げるといいのではないか?

100年後のビルより、100年後の森でしょう。
電気を消費し、CO2を多く排出し、世界の流れと逆行していく街・・・分からない。

オトシブミ(落し文)


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春の終わり頃、山道で不思議な葉っぱを見つける。葉っぱの半分がクルクルと巻かれた状態の不思議なカタチは、オトシブミという甲虫がつくった代物。

この葉っぱのなかに卵が産みつけられて、孵化した幼虫は、葉っぱを食べて成長する。つまり命のゆりかご。いろんな子育てがあるものだ。

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95歳のベーシスト


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土曜日、新宿JAZZ祭に出かけて、最年長の友人、秋山さんに久しぶりにお会いした。現役ベーシスト、95歳。てっきり90を過ぎたくらいかなと思っていたら、随分と時間が流れていたのだ。

テニスコートで知りあったのは、もう40年も前。それからコートで約20年、週末に数えきれないほどの試合を重ねた。お一人でサーブの練習をされている姿、ドロップショットやポーチなど歳を重ねても積極的なプレーをしては、廻りを驚かせて、思い出は尽きない。

郊外のコート、泊まりでのコート、終わってからのカラオケ(英語)、そしてビリヤードなど、昔の話を聞きながら、その人柄、センスに魅了された。何をしても超一流なのだ。

ジャズは、戦後間もない頃、サッチモとセッションをしたり、世界的なピアニスト秋吉敏子と駐留軍で一緒に演奏をしていたという。ビリヤードでは、大きな大会で優勝を重ねて、お洒落でもの知りで、とにかくカッコいい。

演奏が終わってから、挨拶をして、ハグをして、ジーンと温かくなった。こんな奇跡の人になるなんて、テニスコートでは、想像もつかなかった。
いまも都内のライブハウスなどで定期的に演奏されている。時間を見て聴きにいこう〜♬


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若き日、サッチモことルイ・アームストロングさんと

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駐留軍クラブでJAZZを演奏していた頃

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ビリヤードは駐留軍の頃から凄腕!?

白い花


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クワガタソウ(鍬形草)
上の花びらにスジが入って、なんかスミレみたいだ。

山も春の花が咲きはじめた。お馴染みの花もあれば、見逃していた花もあった。初めてみる花は、いつだってときめく。黄色い花が終わると、しばらく白い花が続く。

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ナツドウダイ(夏燈台)
幾何学模様がスッと目に入る。春に咲くのに夏の字が入るのは、なぜ?と思ったら蕊が伸びて、果実を付けるからか?葉は秋に美しく紅葉する。

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コゴメウツギ(小米卯木)
名の通り、わずか二ミリくらいの蕾から、こんな花を咲かせるなんて、不思議だ。

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ホウチャクソウ(宝鐸草)
チゴユリが咲く頃、近くにこの花が咲いていることが多い。アマドコロ、ナルコユリに似ている。

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チゴユリ(稚児百合)

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イカリソウ(錨草)
神宮外苑のときに紹介すればよかった。
淡いピンクの花で目につきやすい。錨の形に似ていることから命名された。

キンラン


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なんだあの花は?? 目が光る〜キンランと。
こんな山奥に、場違いのもしかしたらキンラン?

誰かが植えたのだろうか。いや、違う種類かもしれない。目にすることが少ないので下山後に調べてみると、やはりキンランだった。

なぜあんなところに、二カ所で見つけた。もし牧野博士と一緒だったら、きっと盛り上がっただろう。盗掘されないだろうかと、心配になった。

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歩いたその先に


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連休の後半、山に分け入って、とにかく歩こう

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それも人の来ないような山道をと

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杉林のなかを抜けて行くと

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山桜の巨樹が次々に現れてくる

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縦横無尽に枝を伸ばして、そこに光がそそがれている。しばし立ち止まる。

そして、その先に驚く花を見つけてしまった!

感じること


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そんなことしなくても未来の100年を迎えている

野村監督が残した言葉に、「感じることができなければ、考えることもできない。考える力がないということは、感じる力、すなわち感性が欠如しているということである」。
痛い鋭い言葉だ。

神宮の樹々を伐採して、巨大なビルを建てるという人たちに、この言葉を送りたい。自然の持つ大いなる力と、先人らが育ててきたこの資産をどう感じているのか。

感じるのは、お金のニオイ、そんな嗅覚だけなのだろう。考える力は、再開発からの利益をはじくというそろばん力。

事業者は、明治神宮と三井不動産。森を守るのも神宮の仕事の一つではないのか。東京がみっともない街になっていいのか。

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善行を施していくような極めていかがわしいコピーの連続

この広告コピーにマヤカシを感じるのである。よくも白々しくと思う。こんな文案がまかり通って、自然が壊され、街が変えられていっていいのだろうか。

感じる力で見抜き、発言していかなければいけないと思っている。

手紙(2)


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GW、イチョウの下で森のありがたみを実感する

いまもなお都心には、ビルが次々に建てられている。まるでビルの森を造ろうとしているかのように。そのなかにあって、神宮外苑だけは聖域だと思っていた。所有者が明治神宮だからだ(った)。

ところが、そこに目をつけた輩がいた。どんな画策を施したのかのか知る由もないが、明治神宮はいつの間に再開発という名のプロジェクトに加わり、疑問だらけの愚行が動き始めた。

話は戻る。
坂本龍一の手紙に、小池都知事は記者会見の質問に「ぜひ事業者である明治神宮にもお手紙を送ったほうが良いのではないでしょうか。街づくりの意義を坂本さんをはじめ皆さんに伝わるように情報発信するよう伝える」と答えた。

要約すると、私に言われても困る、だろうか。
病に伏せていた坂本は、その10日後に亡くなった。いま都と都知事には、反対派から攻撃的なメールが多数寄せられているという。

二人の識者、『人新世の「資本論」』の著者、斎藤幸平氏と市民運動を展開するロッシェル・カップ氏が、疑問だらけの再開発を語り合っている。
長い対談ですが、ぜひ読んでいただければと思います。


手紙


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ある男が、女性に手紙を送った。十日後、男は病の果てに亡くなった。
男の名は坂本龍一、女性の名は小池百合子。

坂本さんから小池知事への手紙全文

 東京都都知事 小池百合子様

 突然のお手紙、失礼します。私は音楽家の坂本龍一です。神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。どうかご一読ください。

 率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。

 私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。

 いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。

 東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。そして、神宮外苑を未来永劫守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。

 あなたのリーダーシップに期待します。

 2023年2月24日 坂本龍一


ほぼ40年間、通勤途中、そして事務所から神宮外苑を眺めている。大都市のまん中にも四季の移ろいがあって、癒されてきた。多くの人たちも憩いの場としてきた。

80年前、雨の外苑陸上競技場で「出陣学徒壮行会」が行われた。その後、大きな競技場が二度造られて、こんどは低木も含め約3000本の樹木をを伐採し、複数の高層ビル(190m)を造るという。

少子化、人口減少のニュースが届くなか、事業者はどんな未来を描いているのだろう。ごくわずかな人間にしか利益を生まない計画が進んでいこうとしている。

一度伐った、樹は、森は元には戻らない。分かっているのだろうか。(つづく)