2023年8月

車窓にて


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チョロキューのような小さなミニカーを取りだして、両面テープで車窓に貼る。電車が加速すると、この小さなトラックが走り出す。

景色にあわせてカメラを上下させ、欄干に、道路に乗せ、あたかも走っているように映す。新幹線であればこのトラック、200キロ超えとなって疾走する。

スマホのビデオでも撮って、編集し、時おり笑いながら見ている。

晩夏


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暦では、今ごろの季節を晩夏とよぶ。がしかし酷暑、猛暑が続き、残暑どころでもない。
思えば風鈴の音が涼しく感じるような日は、一日もなかったな・・・

鳥海山


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Sから送られてきた鳥海山


この山に登ったのは、いつだっただろう。もう四半世紀前か。夜行バスで羽後本荘へ行き、早朝に由利鉃道に乗り換え、矢島という小さな駅で下りた。

初夏、水田の緑が美しく、鳥海山の半分は雪で覆われていた。矢島駅前バス停の表示を見ると、五合目までのバスは、まだ運行していなかった。

小さな駅でタクシーもなく、途方にくれていると、一台の車が止まった。「もしよければ、これから五合目の小屋まで行くので、乗ってください」という申し出。市の職員の方で、まさに天の助けだった。

鳥海山五合目の小屋の管理人、佐藤康さんが書いた本「ひとりぼっちの鳥海山」を読んでいた。佐藤さんに会えると思っていたら、すでに亡くなっていて、新しい管理人が迎えてくれた。

そこで生前の佐藤さんの話を聞き、管理人と犬と一緒に途中まで登った。六合目辺りに分岐があって、その日の宿へと続く山道があった。ところが数日前に、雪渓を踏み抜いたのか、一人行方不明になり、通行止めになっていた。今日中に辿り着けない・・・。

どうする。宿にキャンセルを入れて、五合目の小屋に泊めてもらおうか。

山頂への大雪原は、最高だった。一歩一歩、キックステップしながら登った。雲ひとつない快晴の鳥海山。山頂からは日本海と小さな島が見えた。

オニギリを食べていると、男性一人と女性二人のパーティが上がってきた。挨拶をして、世間話をして、故郷は札幌だと伝えると、その男性は山形大学病院の医者で「札幌医大時代、心臓移植手術をした和田医師の元にいた」という話になった。

「これも縁です。宿まで送りましょう」と云う。いくらなんでも車で片道、40分はかかるので、丁寧にお断りをしたが、「先生がこうおっしゃっているので甘えてください」と看護士の女性が笑いながらすすめた。

車は生まれて初めて乗るジャガーだった。宿に着いて、夕暮れの鳥海山を仰ぎ、奇跡のような一日を振り返った。そして翌朝、さあどう帰ろうかなと思っていたら、宿の方が、これから酒田まで行きますから、乗りませんかと云う。

それ以来、秋田県人には感謝の気持ちを抱いている。鳥海山をテレビで観るたびに、お世話になったその二日間を思うのである。

青春18切符


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秋田県の深浦

夫婦揃って旅好きな友人がいて、暇ができるとどこかに出かけている。昨日「これから夜行バスで青森へ行き、翌朝から青春18切符で下関へ向う」という。日本海側を南下し、下関までの五日間の旅。

う〜む、尻が痛くなるのではと心配するが、本人はいたって上機嫌。

昼すぎ、深浦の海と海鮮丼の写真が送られてきた。そして絶品だという稲庭うどんの写真も。羨ましすぎる〜こんなことしていられない!と立ち上がっても、座り直すしかない現実が悔しい。

かみさんは?と聞くと、谷川岳三泊と云って出かけたという。それぞれが別々の旅、これも羨むばかり。五日間、こちらは地図の旅を楽しもう。

オニヤンマ


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安達太良山に雨が降りはじめた。スッと追い抜いていったヤンマが、ハイマツの枝に止まったのを見た。ウエアを装着して、見上げるとオニヤンマがカラダを垂直にしている。

雨の流れをスムースに受け流す効率的なカタチなのだろう。しかしもろに水滴が目に当たり、そのショッックは大きいはずだ。痛みはないのだろうか。人であれば瞼が滲むし。

もしかしたら奥にもう一つ瞼があるのかもしれない。雨があがり、カラダが乾いて、また悠々と飛んでいったか。


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右側が鉄山の頂き、左の小ピークが安達太良山

週末、全国的に山は雷雨が発生したようだ。安達太良山の頂きまで後一時間くらいのところで、豪雨に遭った。雨具を装着するのも遅れるほど、一気に叩き付けるような雨となり、山道は川となった。

もう登る気力もなく、すごすごと撤退。この判断はよかった。この日、何度か晴れたのだが、断続的に雨雲が通過して、ときどき雷鳴が響く。

楽しむどころではない。生きて帰ろうと、滑らないよう麓まで戻る。もうグショグショ。久しぶりの雨で、まあこんな日もあるかと、さばさば。一昨年も安達太良山の下で雨のお天気となり、諦めたから、相性が悪いのかもしれない。

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が、翌朝のご来光は、素晴らしかった。思わず行くか迷ったが、雷予報が出ていたので、止めようと決めた。


38度


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朝ドラ「らんまん」で、キレンゲショウマが紹介されていた。昨日、レンゲショウマをアップしたばかりだったので、なんという奇遇。

科、属も違うし、レンゲショウマに似ていないのに、その名前を使っている不思議!?。調べると、紀伊半島、四国産地、九州産地にだけ自制し、絶滅危惧種になっていた。

絶滅危惧種といえば、花だけでなく、人ももうすぐ絶滅危惧種になるかもしれない。世界的な猛暑。アメリカフロリダ州の海水温が38度を記録した(らしい)。これは風呂の温度。生態系が脅かされていく深刻な危機だ。

「前例のない熱波」と表現するのは、控え目過ぎる、とある学者が言っている。

レンゲショウマ


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吐竜の滝から川沿いを上がっていくと、珍しい花につい足を止める。30人が一列になって歩くので止まってはいけないのだが、そうはいかない。先を譲って、花を鑑賞し、カメラに収める。

レンゲショウマが一輪咲いていた。御岳山でも、今ごろ咲き誇っているだろうか。ランプのような花のカタチについ見とれてしまう。

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可憐なヒメジャジン

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タマアジサイも咲きはじめていた


これは、シャジンでしょうか?と口にすると、「ヒメシャジンでしょう」の声が後ろから聞こえた。ツリガネニンジンを少しスリムにしたカタチは、どことなく涼しげだ。

急斜面の道もこんな花たちが咲いていると、苦にならない。登っているのではなく、探しているという感覚になっているからだ。

登り切ると、草原が広がり、ルドベキア、カノコユリ、デージーが咲いていた。夏だなあ〜。

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吐竜の滝


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お盆に台風直撃。キャンセルや中止が相次いで、行楽地、観光地は大きな打撃だったことだろう。山の日、子どもたちを連れてのハイキング企画もドキドキだったが、無事に終わった。

日本山岳会の山梨支部のイベント、「吐竜の滝」の家族登山に参加した。7家族、総勢約30名で、山梨県清里駅から草原、森を抜けて吐竜の滝、川筋を登って辿り着くのはソフトクリームで有名な「清泉寮」、そんなコースだ。

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吐竜の滝は見事だった。小高い山を抜けた水の流れは、幾筋もの滝となって川へ落ちていく。音と小さな水しぶきは気温を一気に下げる。汗が引いていく。しばしの休憩とランチタイム。子どもたちは、川へと入っていく。水が好きなのだ。

休憩後、川の上流を目指す。子どもたちは、ハシゴとロープの急斜面も何のその、むしろ喜んで登っていく。急に空が現れる。清泉寮に着いた。広い草原の風を浴びながら、山並を見つめて、ソフトクリームに癒される。

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突然、空が現れた

このコースいいなあ、いつかORMACで訪れよう。

シシウド


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このシシウドが、青空に向っているのを見ると「夏だ〜」と声を上げたくなる。高いものは、背丈2㍍を超える。山道に、草原に、尺玉の花火のように咲き、たくさんの虫たちを呼ぶ。
青い空に、白い花火、夏空に似合う花だ。

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オニヤンマ
山道で息絶えたオニヤンマを見つけた。オニヤンマは、子供の頃、畏敬の存在だった。羽をほとんど動かさず、目の前を颯爽と飛んでいく。捕虫網で捕ってはいけない王者の空気を纏っていた。飛んでいく姿を見つめていると時間が止まった。

立秋


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暑さに慣れたのか、暑さが少し引いたのか、風があるからか、少し楽になったなと思えば、今日は立秋。

週末に登った高尾山のお話を少し。

危険な暑さだと気象庁は云う。たしかに都会は猛暑だが、山の中は意外に涼しい。登りでは大汗をかくが、ときおり沢を上がってくる風は、最高のご馳走だ。気化熱効果もあって、全身がヒンヤリし、思わず歓喜の声が出る。

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待ちきれないハギが咲きはじめていた

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ミズヒキもチラホラと

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キンミズヒキ、好きな花だ

目的の日影沢小屋には、名物のかき氷がある。これを思い浮かべながら登ってきたのだろう。高さ約30センチのかき氷に、たっぷりのシロップをかけて、美味そうに食べている人たちがいた。

かき氷に心惹かれたが、いつものナメコ汁を選ぶ。汗をかいたカラダには、ナメコ汁が沁みるのだ。ここの茶屋のナメコは大きく量も多い。握り飯とはベストマッチだ。

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七味をかけすぎたナメコ汁

八王子方面に目を向けると、にわか雨が降っているのか、雨雲から白いスジが下りている。あの辺り、少し涼しくなっているのだろうと想像する。


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光が当たっているのに雨!?

自然の営みの中に私たちはいる。大きければ振り回され、小さければ感謝をし、風情を楽しむことができる。

立秋の
温かな風が
呟く
モーショっとの
我慢です

葉っぱの切り絵展


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週末、一度オリジナルを見てみたいと思っていたリトさんの「葉っぱの切り絵展」が八重洲「丸善」で開催されているというので、呑み会前に立ち寄った。

リトさんは、サラリーマン時代にADHDと診断され、退職をして、好きなアーティストの道を選んだ。葉っぱの切り絵が、あっという間に話題になり、作品集が出て、個展を次々に開催し、多くの人に知られるようになった。

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どの作品も、物語性があって、温かく癒される。そんなせいもあって会場は女性ばかり。童話なんかが好きな方たちかもしれない。

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作品のオリジナルと販売用のプレートが掲載されている。拡大鏡で見なければ、その精密さが分からないほど、丁寧にイキイキとキャラたちが輝いていた。


二季


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サルスベリの花が散りはじめた


朝、BSでイ・ムジチ合奏団が「四季」を演奏していた。弦楽器だけの美しい調べにしばらく聴き入っていた。気分よく家を出て、アササンコースを歩いていると、今度は蝉の合唱団だ。アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミが、競い合って啼いている。暑い熱いと嘆いているかのように。

そうだよねえ〜、どうなるんだろうねえと思いながら、家に戻ってスマホのニュースを見ると「異常気象が普通に、四季は二季に」の表示。夏が長くなって、春と秋が縮まり、冬が寒くなる。つまり夏と冬の二季か。

二季になってしまうと、「四季」の「春」と「秋」はどうなるのだ。一番好きなのが「春」なのにと、朝の演奏を思い出していた。

命名


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散歩コースに蔓延っているワルナスビ

「ワルナスビ」を調べると、やっぱり、牧野富太郎先生。なんかそうではないかと思った。

こんな命名のいきさつが残っていた。

 下総の印旛郡に三里塚というところがある。私は今からおよそ十数年ほど前に植物採集のために、知人達と一緒にそこへ行ったことがある。ここは広い牧場で外国から来たいろいろの草が生えていた。そのとき同地の畑や荒れ地にこのワルナスビが繁殖していた。
私は見逃さずこの草を珍らしいと思って、その生根を採って来て、現住所東京豊島郡大泉村(今は東京都板橋区東大泉町となっている)の我が圃中に植えた。

 さあ事だ。それは見かけによらず悪草で、それからというものは、年を逐うてその強力な地下茎が土中深く四方に蔓こり始末におえないので、その後はこの草に愛想を尽かして根絶させようとして、その地下茎を引き除いても引き除いても切れて残り、それからまた盛んに芽出って来て今日でもまだ取り切れなく、隣りの農家の畑へも侵入するという有様。イヤハヤ困ったもんである。それでも綺麗な花が咲くとか見事な実がなるとかすればともかくだが、花も実もなんら観るに足らないヤクザものだから仕方ない、こんな草を負い込んだら災難だ。

 茎は二尺内外に成長し頑丈でなく撓みやすく、それに葉とともに刺がある。互生せる葉は薄質で細毛があり、卵形あるいは楕円形で波状裂縁をなしている。花は白色微紫でジャガイモの花に似通っている一日花である。実は小さく穂になって着き、あまり冴えない柑黄色を呈してすこぶる下品に感ずる。
 この始末の悪い草、何にも利用のない害草に悪るナスビとは打ってつけた佳名であると思っている。そしてその名がすこぶる奇抜だから一度聞いたら忘れっこがない。

牧野先生は、その他にも「ハキダメギク」「ヘクソカズラ」と、ちょっと可哀相な名前をつけている。

そういえば、ビートたけしも、いろんな名前をつけていた・・・。

脳天暑い


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見上げれば、ノウゼンカズラ


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夕立


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午後、八丁堀の地下鉄出口を上がっていくと、多勢の人が立っていた。突然の土砂降りに、傘を持たない人が出るに出られない状態だった。

あの暑さはどこへやら、ヒンヤリとした空気が肌に心地良い。雨が地上の暑気払いをしている。こんな夕立が昔はよくあって、軒のあるところで雨宿りをしている人を見かけた。