2019年9月

友人S


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知り合って50年。先月、友人のSが亡くなった。家族に、猫や犬に、そしてなにより弱者に優しい男だった。若い頃はやんちゃをしていたが、歳を重ねるごとにいい男なっていった。お洒落で、野暮が全くない。極めて繊細、そして豪快。こんな好い男はなかなかいない。
明日は彼の四十九日。手を合わせにはいけないけれど、ご家族への手紙をいま書き終えた。今ごろは、好きなISSと一緒にこの星を眺めているのだろうか。


案山子


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ぎょっとした。人を脅かしてどうするんだ。相手は鳥や獣たちだろう。作者はどう思って創ったのか知らないけれど、なかなかのリアル感。それにしても廻りの畠や山道は、イノシシに掘り返されて無惨な状態だ。太いミミズが大好物らしいので、それを狙っての狼藉らしい。太いミミズねえ・・・イノシシの生まれなくて良かったなあ。

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見つめられると怖い

ボンネットバス


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この匂いは・・・国鉄時代の電車、チョコレート色した車輌の床から発していた独特な木の香り。ボンネットバスの車内に入ると、そんな香りが鼻を突いた。けっして不快ではなく、なんか懐かしい匂い。

このバスは少し前まで八王子駅と陣馬山の間を走っていた。運よくこのバスに乗れると、タイムマシーンの中にいる気分だった。スプリングが利いているので、体が上下した。

戦後間もない頃、母は北海道の小さな町でバスガイド(車掌)をしていた。叔父は、バスガイドの母は地域の憧れの的だったんだぞと言っていた。古い写真集を開くと、小さなボンネットバスの前で、車掌姿の母が恥ずかしそうに写っている。「ヤギまで乗せたことがあったんだよ」。そんなことも言っていた。


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囲炉裡


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囲炉裡の火を見つめながら、K氏とたわいもない話をしていた。若い頃の馬鹿話から始まって、互いのルーツなど。出身地を明かしあうと、K氏が鹿児島出身であることが分かった。両親は奄美出身だから、島と鹿児島(薩摩)は昔から仲がよくなかったのだという。それは今でも変らない。薩摩(島津)は、奄美、琉球から搾取し続けたのだと、やんわりと・・・。
「じつは私、ルーツは会津なんです」。

週末、親子登山のロケハンで、八王子の恩方醍醐にあるエコロジー村を訪ねた。村長であるK氏から炭焼きの話を聞いているうちに、なんだか打ち解けてしまい、若い頃の放浪生活の話が出るとなんだか嬉しくなった。女の話、仕事の話、一人で過ごす自由さ・・・酒が欲しくなった。
囲炉裡は、人の心まで暖めていく。

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多事奏論


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「多事争論」ならぬ「多事奏論」。あるとき朝刊のコラムにこのタイトルをみて、おやっ!?と思った。読み終わって、納得。筑紫哲也さんの「多事争論」のDNAを受け継ごうというのだ。朝日新聞論説委員・高橋純子。可愛い名前とは裏腹に、筆の力で政権を一刀両断する。筑紫さん、岸井成格さんだってここまでは書けないだろう。まずはお読みあれ。


ラグビーワールドカップ


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チケットもパッケージも日本的なデザインだ


いよいよ明日からラグビーワールドカップ。まずはロシア戦で1勝を狙う。日本代表が、南アフリカ代表を34-32で破った試合がもう4年前と聞いて驚く。あれからもう4年。歳をとるはずだ。五郎丸の独特なルーティーンにドキドキし、世界の強豪国相手に予選で3勝もした。

いつからラグビーに夢中になったのか。戦術が決まっていた大学ラグビーに、個性的な選手が現れた頃からだ。さっと思いだすのは雪の早明戦。雪降るなかスクラムを組む男たちの体からもうもうと湯気が上がっていた。ルールさえ覚えれば、こんな面白いスポーツはない。真っ向からぶつかって敵陣に楕円のボールを運ぶ。ただそれだけのために肉体を酷使する。試合後には決まって大の男が号泣する。勝っても負けても。しばらくすると爽やかな顔になる。

きっと、ラグビーファンが増えるに違いない。


高水三山


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諸般の事情で先週末の山行が低山となり、いくつかの山地図を出してコースを検討する。以前登った山をまた登ってみようと、選んだのが高水三山。地図には赤いラインが入っているので、登ったことは確かなのだが、いま一つ記憶に乏しい。もう20年以上経つのかもしれない。よし、来年のORMACのロケハンを兼ねて登ってみよう。

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一日に三座(高水山、岩茸石山、惣岳山)。キツくても4時間半ならなんとか歩けると、軍畑(いくさばた)駅で下車。駅前の小さな雑貨店で買い物をしたら、ご主人から山の地図を貰った。これは見やすい。歩いていくと、うっすらと記憶が蘇ってきた。前回は時計回りで歩いたと分かる。

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山道に入ると、しっとりとした樹林帯。湿度が高いから、一気に汗が吹き出る。標識はしっかりしているし、ベンチが多い。トイレも主要なカ所にある。しかし二番目の岩茸石山の岩壁はキツい。転げ落ちると大けがをするだろう。自分のペースが掴めてから、気分がよくなる。下りはコースを変え、沢井駅に下りて澤乃井酒蔵を訪ねようか(´ε`)


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ホトトギスが咲いていた

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山萩(やまはぎ)


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万葉集の中で一番読まれている花が、萩らしい。夏の盛りからポツポツと開き始め、晩秋まで長い期間咲いている。この花、なんか好いなあと思いはじめたのは、いつ頃からだろう。マメ科の花らしく、カラスノエンドウなんかに似ている。枝がやや垂れ下がり、そこに花を点々とつけて風が吹くとゆったりとしなって、秋の風情を醸しだす。

もしかしたら風に揺れるモノが好きなのかもしれない。芽を吹きはじめた頃の柳、茎を長く伸ばした白いサギソウ、高山植物、そして風鈴や煙、もしかしたら洗濯物まで。

風は何かを動かしてメッセージを送ってくれる。


阿久悠


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阿久悠は「感動する話は長い、短いではない。3分の歌も2時間の映画も感動の密度は同じである 」という言葉を残している。そうそう、五行の詩だってある・・・立体錯視を見終わった後、同じフロアにある阿久悠記念館にいた。年譜には彼が作詞をした曲がズラッと並んでいる。作詞総数、5000曲余り。圧倒され、クラクラして、唸った。一度の人生で、これほどの数の作品を残せるものだろうか。

尾崎清彦の「また逢う日まで」のタイトルが年譜にあり、歌詞のフレーズが聴こえてきた。最後はこんな言葉で締められている。

ふたりでドアをしめて
ふたりで名前消して
その時心は何かを 話すだろう

20代、大失恋した後、ここのフレーズが響いた。いつか、心は、慰めてくれるのだろうかと、膝を抱えていた日・・・彼の残した詩の数々をゆっくり読んでみたくなった。


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映画パンフもあった


トマト


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札幌の弟からトマトが定期的にドンと送られてくる。趣味が野菜づくりと演劇。トマトは苗から育て、植え付け、支柱づくりなど、写真を見るとかなり本格的だ。トマト以外にもカボチャ、枝豆、トウモロコシ、茄子、花豆などを育てている。
畠はいつかやりたいと思っていたら、まさか弟がやるとは・・・やはり血は争えない。

大きなトマトは、ボリビアトマトだとか。齧るとフォルクローレの音楽が聴こえそうな原始な色合いをしている。豚肉と豆類といっしょに煮込むと、まずは失敗はしないはずなので、週末に挑戦してみようと思っている。


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兄貴も呑んでる?


畦地梅太郎


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畦地梅太郎の名前は、ずいぶん前に大先輩のコピーライターHさんから聞いた。なんでも結婚式の引き出物が梅太郎の版画作品だったらしく、ちょっと自慢されていた。父親と梅太郎の親交から引き出物のアイデアが生まれたと言っていた。

当時は、この朴訥とした作品には興味をもてなかったが、山に登るようになると山岳誌で目にすることが増え、燕岳の先代のオーナーがパトロンをしていたと聞いてからは、親しみを強く感じるようになった。おっとりとした山男は、山時間に寄り添うような愛嬌でいつもポツンと立っている。梅太郎がどれほど山を愛してたかが伝わってくる。

雷鳥もシンプルに描かれている。登場する山男のヒゲのようにストライプだけで描かれていえることが多い。山で雷鳥に出会うと梅太郎の作品をつい思いだす。

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*町田市立国際版画美術館で23日まで。

行列


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ここには並びました。豆大福が美味い和菓子店「出町ふたば」


昼時になると行列ができる店がある。四谷であればラーメン屋が二軒。たぶん美味いのだろう。昔、椎名誠が面白いことを言っていた。「俺は絶対並ばない。僕、ラーメン食うために並んでいるんですよって、顔を見せたくない」「空いている隣りのラーメン屋に行く」。そんなことを思いだして、並んでいる人間の顔を眺めてみる。う〜ん、やはり並びたくないなあと思うのである。


立体錯視


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明治大学博物館で「立体錯視」なるものを、視てきた(となるのかな)。ありえない空間が視覚化できる展示会。気になっていたテーマだったので、最終日に滑り込んだ。

エッシャーの絵にあるような、おかしな空間は、どのように立体化されているのか?鼻息を荒くして列に並び、凝視した。その結果、たった一点のポイントから、それは、ありえないカタチに見えることが分かった。視線を落とし、動かさずに視る、腹筋がピクピク。カメラに写すのも容易ではない。

一体、どちらが正しいのか、視ているとそのマジックに酔った。


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鏡に映るとどうしてこうなるわけ?

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波のカタチだって違う


お酒の話


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お酒を注文すると、カウンターの上にボトルを置いてくれることが多いので、眺めながら呑む。旨い酒もそうでない酒もなんと美味そうな書であることか。

この田酒の文字は、昔から変わっていない(と思う)。ドンとしていて力強く、筆の運びのようにキレがいい。30年以上呑み続けているだろうか。あれば必ず最初に頼む。「まずは呑むデンシュウ」などと言って。


富士山展


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新宿東口のカレー屋といえば中村屋。朝ドラでは、主人公のなつが一時期お世話になっていたカリー屋さん(番組では川村屋)として紹介されている。ここに美術館があるとは知らなかった。中村屋サロン美術館。「富士山展」が開かれているというので、呑む前にちょっと観ようと、おなじみのメンバーが集まった。会場に入るや否や、球子ちゃん(片岡球子)の絵はどこだと、Aさんは探しはじめた。人気あるなあ〜。

40点余りの著名な画家による富士山の絵が並ぶ。横山大観、林武、小倉遊亀、川合玉堂など、見覚えのある作品から初めてのものまで、圧巻のラインアップ。トリミングはほぼ二種類。樹々や海などを入れて見せる富士全景と五合目から上だけをフォーカスした作品だ。

面白くて、分かりやすい。その中でも片岡球子の絵は輝いていた。眺めているとなにかありがたく、元気がドーンと貰えるようだ。
気になる作品が一つあった。というか作者プロフィールがエリートコースとは一人だけ違う。「中学卒業後、ゴッホの絵に憧れ、日雇いをして画家になった」という絵は、キョーレツなインパクトだった。絵の具を叩き付けたような真っ黒な富士。尊敬の念など何もない。なんだこれはと思った。村上肥出夫という画家だった。

調べてみると、こんなサイトがあった。
好きであるというだけで、人生が、いや人生を変えた男がいた。


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展示されていた村上作品とは違いますが・・・


秋田美人


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この女性と初めて会ったのは、いつだっただろう。ずいぶん前の古い写真集の中だったか。絣の着物にすげ笠、やや伏し目がちな眼差し・・・秋田美人って本当なんだと、しばらく見惚れた。

それからずいぶん経って、駅のポスターになって現れた。あっ、あの人だと思った。人混みの中で恋人にふたたび逢ったような錯覚。これは縁のなのかもしれないと思って調べてみた。この写真は1952年、写真界の巨匠木村伊兵衛が撮ったものだった。

あるコンテストの写真を見た木村は、秋田に行って彼女を口説いて撮影した。1952年といえば、私が生まれた年ではないか。これも縁だと思うとこころ穏やかではない。その後、非売品の写真集の表紙にもなっていた。最初に見たのはその表紙だったのかもしれない。

お名前は柴田洋子さん。72歳で亡くなられていた。


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木村伊兵衛が見惚れたのがこの写真。柴田さんは高校生だった

流し


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三軒目は、小さな居酒屋の屋上(三階)。ここでチビチビ呑んでいたら、ギターを抱えたお兄ちゃんが上がってきた。「一曲いかがですか」という。これは珍しい、流しだ。手ぶらで帰すのも可哀想だと思い、二曲ほどリクエストする。「ツナミは出来る?」と聞けば、回りの若者たちから「いいねえ〜」の声が上がる。

夜空の下の小さな空間に、切ない夏が流れてゆく。ちょっと星野原に似たお兄ちゃん。北島三郎だって、流しからスタートしたのだ。お礼を渡して「また頼むよ」と言った後、この店は初めてであることに気づいた。まっ、いっか〜


ペタンク


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新しいスポーツが流行り初めている。ペタンク。カーリングとボーリングとを合わせたようなスポーツ。目標球(ビュット)に金属製のボールを投げ合って、相手のボールより近づけることで得点を競うというゲームで、高い技術と戦略が求められる。
一度体験して、直ぐにはまってしまったのは、幼い頃遊んだビー玉にも似ているからか。子どもからお年寄りまで幅広く楽しめる。

昨日の柏市での大会では、80代のチームと若者のチームが対戦する試合があった。談笑しながら歳を聞いた女性は「あら、私の孫と同い年でないの〜」と叫んだ。こんな組み合わせは、他のスポーツではありえない。試合結果は、若者チームが大差で勝った。試合後は、握手をしてお互いを讃えあう。なんとも不思議な光景〜


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多くは年配者だが、この女子は上手かった。10メートル離れている相手チームの球に次々に当てて、試合を優位にすすめ、チームを勝利に結びつけた。