手紙


ー神宮外苑1.jpeg

ある男が、女性に手紙を送った。十日後、男は病の果てに亡くなった。
男の名は坂本龍一、女性の名は小池百合子。

坂本さんから小池知事への手紙全文

 東京都都知事 小池百合子様

 突然のお手紙、失礼します。私は音楽家の坂本龍一です。神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。どうかご一読ください。

 率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。

 私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。

 いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。

 東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。そして、神宮外苑を未来永劫守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。

 あなたのリーダーシップに期待します。

 2023年2月24日 坂本龍一


ほぼ40年間、通勤途中、そして事務所から神宮外苑を眺めている。大都市のまん中にも四季の移ろいがあって、癒されてきた。多くの人たちも憩いの場としてきた。

80年前、雨の外苑陸上競技場で「出陣学徒壮行会」が行われた。その後、大きな競技場が二度造られて、こんどは低木も含め約3000本の樹木をを伐採し、複数の高層ビル(190m)を造るという。

少子化、人口減少のニュースが届くなか、事業者はどんな未来を描いているのだろう。ごくわずかな人間にしか利益を生まない計画が進んでいこうとしている。

一度伐った、樹は、森は元には戻らない。分かっているのだろうか。(つづく)

コメント

そうでしたか。。。お手紙のこと、初めて知ることができました。
つづきをお待ちしております。

2023年5月 8日 00:40 | ゆみゆみ

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