2023年10月

熊鈴


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明日は久しぶりの高尾山。メンバーの一人から、熊鈴を付けなくても大丈夫でしょうかとメールが入った。突然になんだ?と思っていたら、ニュースで町田市街に熊が現れたという記事が出ていた。

今年はドングリをはじめとした木の実が不作で、山から熊が下りてきているという話は聞いていたが、まさか東京の市街に熊が出没するとは思わなかった。

ではでは、熊鈴を大量に仕入れて、高尾山口駅前で販売しようかなと考えた。もしかしたら、土産物店でもう販売しているかもしれない。明日の山はうるさいだろうなあ。

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出たといえば、故郷札幌に大量の雪虫。ふんわり飛んでいると、そろそろ雪も近いかなと、思うのだが、前が見えないくらいの大発生らしい。これは、猛暑の影響だという。色んな生き物が出てくるなあ〜。

キミは誰?


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二日が一日のようにして過ぎてゆく。日常がアップテンポだ。私が遅いのか、時間が早いのかと思ってしまう。たぶん余裕がないのだろうな。

人と森のかかわり


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週末、山岳会の自然保護委員会で「人と森のかかわり」という基調講演を聞いた。講演者は、哲学者の内山節氏。久々に学生のような気分で、大切なことはメモったりしていると、哲学と云う観点からの自然の話は、穏やかに心に沁みた。

自然との関係が人間をつくり、人間との関係が自然をつくる。自然は人間の道具ではなく、人間の存在自体が自然との関係によってつくられているという思想。つまり自然や森の生命力が、人間の生命力をつくっているという。

そのなかで「気」という、自然の中の流れが、人間の「気力」をつくりだしているという話に惹かれた。私たちのカラダの中には、自然や森の生命力や気の流れが存在しているという。

山々や神社、仏閣に手を合わせて気を送り、暮らしの中で多くの気を受け取っているという自然信仰。純粋で清浄な関係こそが真理であるという思想。森は神仏の世界でもあり、その許しを得て利用させてもらっているという考え方。

聞き終わった後、先人たちの知恵や教えを私たちは、守っていないのではと思った。そして「祟り」と云う字は、「宗」の上に山とあることに気づく。山頂には祠や神社が多い。好き勝手をして自然への敬いを忘れ、荒らし続けていると、祟りが起きるのは当然なのかもしれない。

山火事、氷河・永久凍土の融解、海水温の上昇、メタンの流出、そして気温上昇と・・・

歳は


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歳は頭の上を通過していく数字だと、ずっと思っていたが、長いコロナによる自粛もあってか、この一年で、その数字を意識するようになった。体調に変化がはじまっている。

山登りにおいては、疲れやすくなった。たぶん血管が細くなって、酸素が上手く運ばれていないのではないかと思っている。そして荷物が重く感じるのは、足腰の筋肉の衰え。

大きなリュックをガッチリ担いでしまうとカラダの一部になっていたのが、重さを感じるようになった。この辺で意識改革をしなければ、大きな事故を起こすかもしれない。

しかし、失っていくものがあれば、得ていくものもきっとあるはず。それは何だろうと、考えている今日この頃。

太田和彦さん


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好きなものがある、というのは幸せなことだと思う。Facebookのトップ画面にも、そんな一行を入れている。「山と酒と歌と」。後半の人生は、まさにこの3つに集約されているかもしれない。

酒の心の師匠と崇めている太田和彦氏。彼の言葉を拾いながら、それをアテにして一人呑む時間は至極の時。作り手と酒を愛する人たちの関わりが温かく伝わってくる。

思えば、氏のお気に入りの居酒屋に、アチコチと足を延ばした。長崎の居酒屋では、太田氏が焼いたというぐい呑みを傾けて、女将から人柄を聞いた。東京下町の居酒屋でも彼の人柄は、同じ。酒を愛し、人を愛し、料理を誉める。あの温かい笑顔が浮かんでくる。

一昨日、この二冊を並べたくなるようなメールが、「海、はじまる」の著者、宇佐美さんから届いた。ご友人の太田和彦氏にこの歌集を贈ったところ、「素敵な装丁ですね・・・」の言葉をいただいたという。

もうこれは、呑まずにはいられない。縁とは不思議な力を持っているんだなあと、独り酔いしれた。

ラグビー


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寡黙なまでにスクラムを押す。ステップを刻みながら駆ける。それを食い止めるためにタックルする。防具を付けず生身のカラダとカラダが炸裂するこのスポーツに魅了されたら、もう戻れない。

ラグビーワールドカップの準々決勝の4試合を全て観た。どの試合も最後まで勝負の行方が分からない展開となり、トライ間近になると、深夜だというのについ大声を上げてしまった。ご近所の皆さん、すいません。

100キロもある大男たちによる肉弾戦が80分間、続く。熱く、けれど冷静に試合展開を読み、チームプレーに徹して、相手陣内へボールを運ぶ。

一つのボールに、勇気と献身と団結とを込めて、懸命に戦う。そしてノーサイドのホイッスルが鳴れば、お互いの健闘を称えあって、試合は終わる。その美しいこと。ラグビーは、つくづく紳士のスポーツだと思う。

セイタカアワダチソウ


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長いけれど、覚えやすい名前だ。みんな「背高泡立草」と覚えているはず。外来植物で繁殖力が強く、丈もグングン伸びる。まさに背高ノッポで秋に野原などで目立つ。

ススキなどの在来種をアレロパシーという成分を分泌して駆逐しいく厄介者。花言葉を調べると「唯我独尊」。そうなんだねえ、キミは〜と、見つめてしまう。

干し柿


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吟行歌会で訪ねたのは「江戸東京たてもの園」。古い日本家屋がいくつも並び、ちょっとした異次元の世界を体験できる。

一軒の古民家の軒先に、干し柿がぶら下がっていた。一本の紐にいくつもの小さな柿が、均等に吊るされている。実りの秋、好いなあと眺めていたら、急にお腹が鳴った。


秋日


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やや二日酔いながら、スッキリ目が覚めた。ヨシッと飛び起き、いつものアササンコースを歩いていると、ほのかな甘い匂いがした。なんかこの匂い、嗅いだことがあるなと思っていたら、足が止まった。

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目を上げると、キンモクセイの小さな蕾。まだ開花していないのに香りを発している。涼風、鱗雲、そして金木犀。秋は順番にやってくるんだ。嬉しいプレゼントをもらったようで、目が一気に覚めた。


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では以上ですと、二人の若い女性行員がニーサの話を終えようとした。
「ではこちらから」とおもむろにバッグから『海、はじまる』を出し、「詩歌には興味をお持ちでしょうか」と云いながら手渡した。

「きれいな表紙ですね」と見つめ、二人は顔を合わせるようにしてページを括りはじめた。「それ、僕が装丁したんです」「数字ばかり見つめていると疲れます。お茶の時間にこんな五行の詩を読んで、リラックスしてはいかがでしょう」
「アマゾンからも買えますよ・・・」

おじさんは、こんなセールスができるようになったんだ、と意気揚々と銀行を後にした。

笑い


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先週末、友人の落語会に行く前に立ち寄った北斎美術館。北斎は長命で作品数は、なんと34,000点余りと云われ、人物ばかりでなく森羅万象あらゆるものを描いている。

その数ある中から「笑い」をテーマにした作品が展示されていた。笑顔の描写やユーモアなど、その作品を見ていると、機智に富み、ユーモアのセンス抜群の絵師だったのではないかと思ってしまう。

例えば、富嶽三十六景にも本人そっくりの「おもろいおっさん」がたびたび登場するのだが、そん人物を捜すのがじつに楽しい。おすすめの見方です。

アイロン掛け


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今月の初めまでアロハシャツを着ていたのが、嘘のようなお天気の変貌ぶりだ。朝晩の気温はすでに晩秋を思わせる。高い山では、あちこちに雪が降ったようだし。

今シーズンはもう着ることがないだろうと、半袖のシャツ全てにアイロンを掛けた。家事は余り好きではないが、アイロン掛けだけは苦にならない。蒸気の音とともに皺が消え、仕上がっていく爽快さは、職人になったような気分にさせてくれる。さっと十枚が仕上がった。

銭湯


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ちょうど番台の裏、忘れ物が置かれている

小さい頃は、家に風呂がなかったので銭湯に通っていた。弟を連れて、木工細工の船やキューピー人形を持って、湯船で遊んだ。注意する大人もいなくて、銭湯は遊園地のように思えた。

真冬、濡れたタオルはすぐに凍るので、それでチャンバラなどしながら帰ったことを覚えている。寒さなんか感じなかったのだろう。

当時の料金はいくらだったのか調べてみると、子どもは12円。わずかなお金を握って、通っていたのだ。今は520円だから、毎日通うと一ヵ月15,600円にもなる。銭湯はなんと贅沢なアミューズメントだろう。

海、はじまる


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歌友よりデザインを頼まれていた五行歌集がようやく出来上がりました。「海、はじまる」全272ページ。手にした時の至福感は、長い海路を旅してきた時間でもありました。

ちょっと格好いいことを云うと、この歌集作りは、僕をどんな旅へ連れていってくれるのだろうと、期待してのスタートでした。

いろんな寄港地で213首を入れ替えたり、エッセイを積み込んだりして、船と荷はしっくり、しっかりとバランスを保ち、目指す島へ向いました。

朝焼けの浜に佇む、一本のボトルレター。波間に揺られてきた時間とこれからはじまるであろう時間。このボトルは、新たな手紙を携えて、もう一度旅をはじめるのだろう。

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