吟行「吉原界隈」
吟行歌会が20回を迎えた。年に四回の開催だから、丸五年経ったわけで、四季折々、一期一会で生まれた歌は、どれも愛おしい。
今回歩いたのは、三ノ輪、吉原界隈。江戸の歴史に詳しい友人Yさんに案内をお願いして、吉原遊郭に想いを馳せ、若旦那や花魁になって往時を偲んで一首を捻る。そんな寸法だった。
吉原の跡は、今はソープランド街。それを囲むように古い神社や仏閣が点在している。最初に訪ねたのが、投げ込み寺と言われた「浄閑寺」。遊女が亡くなると、荒菰(あらごも)に包まれ、幾ばくかの金を添えられて、門前に置かれていたという。その哀れな一生を想うと、心が痛んだ。
投げ込み寺の
新吉原総霊塔
脇から覗けば数多の白い骨壺
ごめんね
冷やかし客のようで
Iさん
吉原の敷地は約二万坪。そこで働いていた遊女は約三千人。その一画を囲むようにしていたのが「お歯黒どぶ」。真っ黒で汚かったので、お歯黒どぶと呼ばれた。名前の由来は、遊女が化粧をする際、お歯黒を流したためとも、また溝の水がお歯黒のように黒く濁っていたからだともいう。
秋日和に歩く道も
一皮むけば
お歯黒ドブ
時代に埋め込まれ行く
自分の上はどんなだろうか
Sさん
日陰の路地に
落ちた種でも
花は咲く
「あちきの居場所は
ここでありんす」
Iさん
吉原大門の前には、いま六代目の柳の木がぽつんとある。遊び帰りの客が、うしろ髪を引かれる思いでこの辺から振り返ったらしく、その名を「見返り柳」。もしかしたら亡くなった遊女たちも見送ったのかもしれない。
男も女も見送って
肩の荷がおりました
見返り柳
ぽつんと
たそがれており
山碧木
歩いて、想って、捻って一首。さあ100回に向けて、また一歩・・・。
2016年11月14日 15:28 | カテゴリー: 歩キ眼デス2
コメント
吉原界隈で吟行とは中々風流ですね。
遊郭に纏わるお話は映画やテレビドラマでよく見ました。
悲喜こもごものの歌が詠まれることでしょう。
花魁道中なんか目に焼き付いています。
A)
楽しい企画になりました。
案内をしてくれる友人がおもしろ可笑しく、皆さんを盛り上げてくれるので
歌をつくる意識が消えてしまいます。
花魁道中は、たまに浅草辺りで演じられるそうですよ。
2016年11月21日 15:04 | tama
コメントの投稿