奇跡の出会い


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封筒からこんなチラシが出てきた。その夜の話を思いだす。この日は家に真っすぐ帰らず、我が家から五分くらいの居酒屋の暖簾をくぐった。

「これ、懐かしい写真だね」。ふと見つけた古いチラシを手に取った。「昔は上野から急行に乗り、青森まで、13時間かかったもんだ」。カウンター越しに店主に話しかける。

「さっきまでそこに座っていたのが、その本橋さんだよ。じつはさあ・・・・」
店主の話が始まった。

本橋さんとは、本橋成一(もとはしせいいち)さん。写真家でありながら、チェルノブイリ原発事故の被災地で暮らす人々を撮影した『ナージャの村』の映画監督でもある。この居酒屋のすぐ近くにある映画館「ポレポレ座」のオーナー。

ある日、本橋さんが来て、写真展があるのでこのチラシを置かせてくれというから、いいよと応えたんだ。あれこれ話をして、ゆっくりこの写真を見ていて手が震えたんだ。
「これ、俺のおふくろだよ」。

たぶん俺の替わりに、福島から上京したおふくろを兄貴が迎えにいき、そこで待つように言ったんだろうな。心配気なおふくろの後ろ姿だ。首にかけているショールは間違いなくおふくろのもの。風呂敷からなにまで・・・。驚いたのは本橋さんもだ。いつも呑みにいく居酒屋のオヤジの母親だとは思わなかったから。話が盛り上がってねえ・・・

そんな話を聞きながら、こんな奇跡ってあるんだと、軽い興奮を覚えた。
「裏の写真もいいねえ」「観にいきたかったなあ」。

そのチラシあげるよ、まだあるから。

その夜の出来事を思いだしては、このチラシを捨てられないでいる。


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コメント

 奇跡な出會ひは作らふとして出來るものではない。突然、予期しない瞬間に訪れる。
 もう50年以上前になるが、會社の技術關係の顧問をして居たアメリカの有名な化學者が來日して、一日、時間の空いた日に僕が東京を案内する事になり、浅草の観音様へ行った時の事。賽銭箱の前で賽銭を入れて、拝み方を説明して拝んで居たら、隣に矢張り外國人が來て拝んで居た。不圖顔を見合はせて「オー」と聲を擧げた。
何とそれは博士の家の隣人だったのだ。その人はアメリカから團體旅行で初めて日本に來たと言ふ。示し合はせた樣に隣人同士が偶然地球をぐるっと半分廻った旅先で隣合はせに成るなんて、本當に吃驚した。

A)
面白い話ですね〜
手を合わせている時に、が、愉快です。
そんなことって、あるんですね・・・

空間と時間、この二つの次元のなかで ごく稀に結びあう場合があるんですね。

以前、磐梯山の山中で知り合った若い3人のグループと3年後・・・
山梨の鳳凰三山のキャンプ場で偶然再会しました。

喉が渇いて、キャンプ場に立ち寄り、水を飲んでいたら、一人が
「もしかして・・・」と声をかけてくれたのです。

山では、いつかどこかで、と別れるものですが、もう一度出会ってしまったのです。
奥から二人が出てきて、大笑いしました。

しばらく山の話をしてから、ニコニコして、またどこかでと別れました。


2019年11月19日 16:56 | 雅蘭洞英齋居士

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