二つの写真展


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暑いこの時期、出かけるなら涼しいところがいい。というわけで、夏の吟行歌会はここ数年、東京写真美術館に足を運んでいる。今開催されているのは、田沼武能の「人間讃歌」と本橋成一とロベール・ドアノーの「交差する物語」。

どちらの写真展も、戦前から昭和の後半まで、市井の人たちの日常を活写している作品が並ぶ。瞬間を永遠に替えてしまう写真を見ていると、簡単に加工してしまう今の時代は、なんとも怪しい。

この瞬間の写真を   渡辺加代子(一席)
撮るために
かけた時間を思う
今は指先ひとつで
修正可

鉱山、サーカス、演芸場、劇場、プロレス場、キャバレー、駅など、そこに生きたエネルギッシュな人たちとそんな時代に、懐かしさと温もりを感じた。

象の額に触る    かおる(一席)
サーカスの少女
人差し指から溢れる信頼
どちらの瞳にも
宿る慈愛

ロマ こびと ストリッパー  
食べていける
受け入れてくれる
時代が
そこにあった   山碧木星(二席)

子どもたちは、いつの時代もイキイキして逞しい。炭坑で、路地で、街角で、その笑顔は未来に向けられている。

この一枚は   宇佐美友見(一席)
私の物語
なくした蝋石を
ここで
見つけた


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ロベルト・ドアノーの「パリ市庁舎前のキス」の前で


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