山形の人
雲海の彼方に月山が見えた
蔵王山縦走から帰ってきました。いま筋肉痛です。紅葉はもう少し先のようでしたが、今回の旅は、想い出深いものになりました。
その一つは、弟から譲り受けた文庫本「ふるさとへ廻る六部は」(藤沢周平)が旅の共になってくれたから。車中、そして宿の夜に沁みるような時間が生まれた。藤沢は、鶴岡出身の作家で、山形ばかりでなく東北全域を愛し、賛美し紹介している。
そのエッセイに出てくるような方たち、大きなリュックを背負っていると、話しかけてくる。
①早朝、仙台駅のバス停で「これから蔵王ですか。いいですねえ、私は65歳から百名山を登ってるのですが、85才を迎えていよいよキツくなりました」。小さなリュックを背負って、今日は日帰りをすると云う。「山はいいよなあ、山はいいよ」。本当ですねえ・・。85歳には見えない方だった。
②蔵王温泉下の湯共同浴場から外に出ると「蔵王を下りて来たの?」。縦走しました。「スゴいなあ、いくつ」「えっ、俺と同じじゃない」「若いなあ」「全然見えない」「90まで登れるんじゃない」と話が始まり、斎藤茂吉、藤沢周平の話になって、庄内藩、政治の話になって、右寄りの首相候補ばかりで危ないと危惧されて・・・実に多岐に渡って見識が広い方だった。
③山形駅のベンチで藤沢を読んで時間をつぶしていたら、ヨチヨチと杖をついて近づいてくる男性。慌ててリュックをずらして椅子を勧める。大丈夫ですかと聞けば「肋骨が四本、折れていますが大丈夫です、腰の骨もやられてしまって、上手く動けません」「顔の絆創膏ですか?これは一昨日バスから降りるときに転びました」。薄いサングラスの顔は、ずっと笑ったまんまだ。
「私は、仙台で通訳のボランティアをしていました。英語と北京語、広東語です」。故郷が山形なので、最近戻ってきました。「ご存知ですかな。私は秘密警察に所属していました」。えっ、そんなの本当にあるのですか?ここから長い話が始まった。ときどき、この方は大丈夫だろうか?と思うような話もあったが、大人しく聞いていた。やがて新幹線の時間が来たので「今日はいいお話を伺えて、ありがとうございました」と礼を言った。すると、英語と中国語で「あなたの健康をお祈りしています」と話されたことを日本語で教えてくれた。
以前の山形山行でもたくさんの方にお世話になった。今回もいい出会いをいただいた。山形は人の国でもあった。
蕾のままに終わったリンドウ
2024年10月 7日 18:12 | カテゴリー: 歩キ眼デス4
コメント
異次元を想わせる雲海お写真からスタートして、次々と巡ってきた方々の出逢いに、こちらもどきどき、嬉しさ倍増です。
健康と本が幸運に導いてくれているのかと思ってしまうほど、
「山はいいよなぁ、山はいいよ」…気に入ってしまいました(^^)
蕾のまま終わったリンドウも印象的です。
A)
上の写真は、かなりの望遠で撮っています。
何度か登った月山が、ひょっこり雲の上に突き出ていました。
もう一人の方とのおしゃべりは、これから。
どなたも軽い山形弁のイントネーションがあって、
ついつい聞き上手にさせられてしまいます。
秋のリンドウは、ほぼ蕾のままのようです。
2024年10月 8日 13:37 | ゆみゆみ
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