父の時計


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リューズを巻くと秒針がチチチと動き始めた。父の時計の久しぶりの感触。「俺が持っているより兄貴の方がいいかもしれん」と法事の会食のときに、弟から渡された。

もう半世紀も前、この時計を初めて手にした父は、「腕時計は薄い方が、お洒落なんだ」とちょっと自慢げに話した。小学生には、そんなことが分かるわけもなく、そうなんだと聞き流した。

中学三年の修学旅行の前夜、これを持っていけと、この腕時計を差し出された。ありがとう、いいよと断ったが、いいから持っていけと強引に手渡された。

大切にして入る時計をもしも無くしたら、と思うと旅の初めは落ち着かなかった。二日目からは外して、そっと鞄の下に入れた。

時計を持っていない我が子を不憫に思ったのだろうか?チチチと刻む音から、そんなことを想像した。子ども四人を育てることで余裕なんてなかったはずだったが、とにかくお洒落な父だった。自慢だった時計をこれからの旅に連れ出してやろうかと、ふと思った。


コメント

時計は時が見える特別な物ですね。
思い出も一緒にある時計!沁々と素敵です。
旅にお供できる時計もまた、新しい主人にわくわくしていると思います。
これからどんな物語を、この時計は刻むのでしょうね。

A)
ガラスの中には汚れがあります。なんどかの修理もあったのでしょう。
時計には「Citizen Ace」と刻まれています。
CITIZENは、国産時計会社の第一号で、父が生まれた大正後期に
初めての懐中時計が発売しています。

当時の東京市長であった後藤新平が
永く広く市民に愛されるようにと「CITIZUEN」と命名したそうです。

じつは、我が家のそばに面白い時計屋さんが・・・
昭和10年代からこの地で営業をしているから
二代目なのかな。75歳の現役登山家のお店だそうです。
新しい一歩の前にここで診てもらおうかなと・・・

これも何かの縁。時計を持って遊びに行こうかなと〜♬

2015年3月19日 14:08 | かに

なんでもかんでもデジタル化の中、腕時計はアナログの電池ではないリューズ式がいいね!
毎日、時を決めてリューズを巻く・・・これで一日のリズムが生まれる・・・なんてネ!!!

A)
子供の頃、頼まれて、椅子に乗って柱時計のネジを巻いた。
たしか、左右を内側に巻く・・・

リューズを巻くで、ふと!
フィギアスケートの選手が本番前に、背中を叩くように押されてリンクに飛びだしていく。

あれって、ネジ巻き人形みたいで、面白い。
最後は、ネジが切れてゼイゼイ・・・

春だ!
ネジを巻き直して、一花咲かせよう!!

2015年3月19日 16:30 | 権之助

私も捨てられない時計を2個持っています。
1個は主人がずっと使用していたものです。
もう一つは娘が結婚記念にハワイで買ってきてくれた贈り物です。
現在使用しているのは息子が買ってくれたものです。

携帯を持ち歩いているとそれもバックの中にあることが多いです。
思い出のある物は中々捨てられない物です。
捨てることによって私から思いでも消えてしまいそうで・・・・。

A)
捨てられないモノの前で、思案しますよね。

僕なんか、捨ててしまえば、あったことさえ忘れる・・・よし捨てよう!
ところが、これをすると、記憶も想い出も捨てているような気がします。

たまさんには、どれも大切な時計・・・
ずっと手元に残してよろしいのではないでしょうか。


2015年3月24日 12:05 | tama

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