白いクレパス


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絵を観ていると思い出が蘇ったり、もしかしてと創造の羽が生えてくることがある。過去と未来が交差するそれは静かで幸せな時間だ。この夏「巨匠たちのクレパス画展」を観て、一つ発見があった。この展覧会はサクラクレパスがパトロン。展示された絵の全てはクレパス画ばかり。えっ、これが?クレパスだけで描かれている?と驚く。

クレパスといえば、子供、初めてのお絵かき、日記帳、そんなイメージしかなかったから、日本の著名な画家たちのクレパス画を観て唸った。どれも名画ばかり。色彩の豊かさ、華やかさは想像をはるかに超えていた。熊谷守一、小磯良平、三岸節子、梅原龍三郎、林武、加山又造ら多くの画家たち、もしかしたらクレパスに夢中になっていたのではないか、と静かに興奮した。

油絵と見紛うような絵の中にクレパスでなければ生まれないような色彩の美しさがあった。なぜこんなに色が豊かになるのか。目を凝らして観ているうちに、共通しているテクニックを発見した。それは白いクレパスの重ね塗りだった。原色部分に白いパステルが入ると淡い色調が生まれ、何とも穏やかな風合いを醸しだす。白いクレパスって、下書きだけではなく、こんな素晴らしい働きをするんだ。クレパス画を鑑賞する楽しみが広がった。

観終わって、クレパス画のことを思っていたら、こんな歌ができた。

白いクレパスって
聞き上手な人に似ている
重ね色をして
どんどん
魅力的に変えていく


そして、先日の「没後50年藤田嗣治」の絵画展からは・・・

嗣治の
乳白の少女の頬と
虚ろな瞳
あの日  ホームでサヨナラした
君とおんなじ

秋という触媒に反応させて、もっと私を引きだそう.


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