描くひと 谷口ジロー展
友人のYさんが、ふらりと事務所にやって来て、「この作品展、なかなかいいよ」とチラシを見せてくれた。漫画家、谷口ジローの作品展。以前、Yさんが貸してくれた「神々の山稜」シリーズ、そして「孤独のグルメ」で、すっかり彼の絵のファンになっていたので「行きましょう」、と応えたのが、先月末。
土曜日、世田谷文学館で彼の作品をじっくり観た。結論は「人は生きている間にこんなにも多くの精密な絵を描けるものだろうか?」だった。まず、彼の作品世界の視線が素晴らしかった。
草むらの下から、雪の降る天空から、主人公の眼から、主人公の遠くから、まるで映画のシーンを観ているかのような世界が丹念に描かれていた。
作品の多くは小説をベースにしている。関口夏生の「事件屋家業」、夢枕獏「神々の山嶺」、川上弘美「センセイの鞄」などの作品世界が、絵で楽しめるのだ。
センセイの鞄のワンシーン
たとえば「センセイの鞄」。主人公のツキコが高校時代の恩師でもある古文の先生と、居酒屋のカウンターで出会うシーンがある。二人は一人の客を挟んで、お互いをなんとなく確認する。そこからの時間が好いのだ。
じつは。このシーンが好きで、このページを何度も開いたことがある。懐かしいような、恥ずかしいようなシーン。釘付けになって眺めた。そうか、谷口さんのセンセイは、こんな人か。ツキコさんは、なるほど・・・。こんな楽しみ方を各コーナで、時間を忘れて眺めていた。
セリフが、一つもない漫画もあった。言葉は読み手!?に託されていることが分かる。言葉の無い世界の瑞々しさ、静けさ、透明さに気づく。時間や自然、発見や出会い、谷口ジローが伝えたかったことは、一人ひとりにそれぞれの物語がある。命の尊さがある。
そんな彼のメッセージを受け取った。
夢枕獏作「神々の山嶺」
夏目の漱石の書斎を漫画で
「描くひと 谷口ジロー展」
〜2月27日まで、世田谷文学館で
2022年2月21日 15:44 | カテゴリー: 歩キ眼デス3
コメント
土曜日?私も行きましたよー12日の土曜日🎶ニアミス?一週間違い?
いつもいい時間が過ごせる場所だけど、よりそう感じた企画展でした。
A)
良かったですねえ〜
いい人は遠い人、そして時々亡くなっている人。
ジローさんの感性と世界感は、漫画のイメージを超えていました。
それにしても神出鬼没(これ使えたかな?)ですねえ、キコさんは。
最近どのくらいの企画展に行ったのでしょう。
2022年2月24日 04:49 | Quico
コメントの投稿