日本哺乳類図譜


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しばしキタキツネの写真と対峙する。凛々しいその眼差しに見入られて、動けなくなった。動物写真家の久保敬親(くぼけいしん)氏の作品である。

動物写真家は、対象が現れるまでひたすら原野で待つ。待ち続ける。待っている間に、動物たちの生き方や暮らしを学んでいくのだろう。だから出逢ったときには、その思いを抱きながらシャッターを押すのだ。

このキタキツネは、そんな思いを感じているのだろうか。眼差しには、対峙している両者の思いが通じ合っているように映る。交歓の一瞬。

動物写真には、ときとして撮影者の息づかいを感じる。待つと云う時間を感じる。

そんな原野での動物たちの世界を会間見ることができる写真集が出来上がった。


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久保敬親著「日本哺乳類図譜」。持ち上げると約二キロにもなる重量級の写真集。大きさはA4変形版。この写真集の特長は、デジタルカメラのデータではなくポジフイルムを使って印刷していることだ。その自然な色合いの美しさに魅了される。私たちはその昔、こんな素晴らしい印刷物を眺めていたのだと、改めて気づく。

エゾシカやキタキツネの凛々しさ、ヒグマの迫力、シマリスの愛らしさ、野生の臭いさえたちこめてくるような写真集。こんな距離感でカメラマンは、野生動物を追いかけ、ジッと見つめていたのだと、ズシリとしたメッセージが伝わってくる。
ぜひご覧いただきたい一冊です。


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